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2話 どこに行っても
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いつもの廊下なのになんだか短く感じられる。緊張しているのだろうか。時間は短く感じるのに、足は重い。そんな私の不安を感じ取ってくださったのだろうか。お父様がふと振り返って私を暖かく包み込んで。
「お前はどこに行っても、私の娘だからね」
会場に出て仕舞えばもうお父様と触れ合う機会はないだろう。だから、これが最後の。
「……はい、お父様。どこにいても私はお父様の娘でございます」
温もりが離れると、私はつきものが落ちたように少しだけ足が軽くなった。
「今回のパーティーには魔王も来てくださった。失礼のないようにな」
魔王様。人々は彼を恐れるが私はなんだか彼が好きだ。一度、隣の国の建国祝いのパーティーでしかお姿を拝見したことはないが彼の姿を見た瞬間、なんだか私は安心したように心が温かくなったのだ。
「はい、お父様」
いっそのこと、彼が私をもらってくれたらよかったのに。なーんて、彼は不老不死らしいけれど、お嫁さんをもらったなんて一度も聞いたことがないわ。きっと1人がお好きなのね。それにしても、珍しい。彼は私達人間の催すパーティーに出ることはほとんどないのに。どうして私のお別れパーティーなんかに。
気がつけば私達は会場の扉の目の前まで来ていた。煌びやかな衣装を身にまとった貴族達が私たちを出迎える。
「おや、婚約者殿はここで待っていると言っていたのだが……」
ひょっこり顔を出して中を見渡すと、私の兄と妹のそばにルーク様を見つけた。おそらく挨拶をしてくれていたのだろう。ふと彼を目が合う。笑顔を作って手を振るが、彼はまた2人の方に視線を戻してしまった。え、なに、今の。無視されたの、私。
「挨拶中のようだな。仕方がない。私と入ろう」
会場に入る際にはてっきりルーク様がエスコートしてくれるものだとばかり思っていた私は少し驚いたが、すぐに平静を取り戻しお父様の横に並んだ。
大きなラッパの音とともに名前ば呼ばれる。視線が一斉にこっちに集まった。ルーク様もそれでやっと私の方を見た。が、こちらに来てくれるものかと思えばまた2人の方に顔を向けてしまった。というよりも、私の妹、オリビアに話しかけているのだ。お父様の顔をチラッと横目で見てみると流石にお父様も顔を顰めていた。自分の婚約者が入場したのに、話しかけに気もしないとは何事か。
「お父様、私、ルーク様のもとに行って参りますわ」
私は整った笑顔を作ると頭の上にクエスチョンマークを浮かべながらルーク様の元に歩き出した。
「お前はどこに行っても、私の娘だからね」
会場に出て仕舞えばもうお父様と触れ合う機会はないだろう。だから、これが最後の。
「……はい、お父様。どこにいても私はお父様の娘でございます」
温もりが離れると、私はつきものが落ちたように少しだけ足が軽くなった。
「今回のパーティーには魔王も来てくださった。失礼のないようにな」
魔王様。人々は彼を恐れるが私はなんだか彼が好きだ。一度、隣の国の建国祝いのパーティーでしかお姿を拝見したことはないが彼の姿を見た瞬間、なんだか私は安心したように心が温かくなったのだ。
「はい、お父様」
いっそのこと、彼が私をもらってくれたらよかったのに。なーんて、彼は不老不死らしいけれど、お嫁さんをもらったなんて一度も聞いたことがないわ。きっと1人がお好きなのね。それにしても、珍しい。彼は私達人間の催すパーティーに出ることはほとんどないのに。どうして私のお別れパーティーなんかに。
気がつけば私達は会場の扉の目の前まで来ていた。煌びやかな衣装を身にまとった貴族達が私たちを出迎える。
「おや、婚約者殿はここで待っていると言っていたのだが……」
ひょっこり顔を出して中を見渡すと、私の兄と妹のそばにルーク様を見つけた。おそらく挨拶をしてくれていたのだろう。ふと彼を目が合う。笑顔を作って手を振るが、彼はまた2人の方に視線を戻してしまった。え、なに、今の。無視されたの、私。
「挨拶中のようだな。仕方がない。私と入ろう」
会場に入る際にはてっきりルーク様がエスコートしてくれるものだとばかり思っていた私は少し驚いたが、すぐに平静を取り戻しお父様の横に並んだ。
大きなラッパの音とともに名前ば呼ばれる。視線が一斉にこっちに集まった。ルーク様もそれでやっと私の方を見た。が、こちらに来てくれるものかと思えばまた2人の方に顔を向けてしまった。というよりも、私の妹、オリビアに話しかけているのだ。お父様の顔をチラッと横目で見てみると流石にお父様も顔を顰めていた。自分の婚約者が入場したのに、話しかけに気もしないとは何事か。
「お父様、私、ルーク様のもとに行って参りますわ」
私は整った笑顔を作ると頭の上にクエスチョンマークを浮かべながらルーク様の元に歩き出した。
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