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【48】魔道具研究部
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うわ……。すっごい汚い……。
まず目に飛び込んできたのは、部室内に所狭しと置かれている魔道具の数々だった。
「えーと、名前は……」
「あ、シェイド・シュヴァイスです」
「僕はユーレンス・ベントナーです。よろしくお願いしますね」
ユーレンス先輩が手を差し出してきたため握り返した。
「それじゃあ、シュヴァイス君。少し散らかってますけど、適当なところに座ってもらえますか」
「は、はぁ……」
座るといってもどこに座れば……。
机の上のみならず、床の上や椅子の上にも数々の魔道具の部品と思われる物が置いてある。どこに座ろうかと頭を悩ませていると、
「あー、汚いですよね。申し訳ないです」
ユーレンス先輩が椅子の上に置いてある物をどかしてくれて椅子を用意してくれた。
「ありがとうございます」
椅子に座り、改めて部室内を眺める。この部室でどうやって活動ができているのか不思議に思うほど散らかっている。ただ、散らかってはいるものの、部品自体は傷もついていなければ、汚れてすらいない。一応は大切に扱っているようだ。
「ここで活動しているんですか?」
「そうですねぇ。一応はここで活動していることになっていますけど、基本は自分の部屋に簡単な設備を置いて活動している感じですかねぇ」
「え、自分の部屋で魔道具って作れるものなんですか?」
「うーん、流石に1から100まで全部自分の部屋では作れませんが、組み立てとか簡単な作業はできるので。それに、わざわざ部室まで行くの面倒くさいですし。部室に来るときは部屋に置けない機械を使うとき……、例えばあれとか」
ユーレンス先輩が指さした方を見ると、大きな機械が見える。
「あれは、魔力を溜めておくことができる魔溜石の形を整えるために使う機械なんですけど、流石にあれを部屋に置いておくにはでかすぎますし、怒られますからね」
なるほど、確かに食堂の机ほどの大きさのあの機械を部屋に置くとなると、まともに生活できなさそうだな。
「それじゃあ、部員で集まるといったことはないんですか?」
「いや、月に2回活動方針や成果の発表とかで集まりますけど、それ以外だと集まらないですかねぇ」
「そうなんですね」
こうやって話してみて分かったことだが、ユーレンス先輩は意外といい人なのかもしれない。説明会の時に発表を面倒くさそうにしていたため、部活見学も面倒くさがられるかと思っていたが、ちゃんと丁寧に説明してくれる。
「魔道具ってどんなのがあるんですか?」
そう尋ねた瞬間、ユーレンス先輩の目つきが変わった。
「お、魔道具ですか。そうですねぇ……。これとか分かりやすいと思いますよ」
ウキウキした様子で1つの魔道具を持ってきた。
「これは……?」
その魔道具は手のひらサイズに形を整えられたで石のようで、真ん中にはボタンがあって何やら文字が刻まれている。ただ、なんて書いてあるかは分からなかった。
「まぁまぁ、とりあえずこのボタンを押してみてください」
先程までとは打って変わってにこやかにそう言うユーレンス先輩を怪しく思いつつも、恐る恐るボタンを押してみた。
「……?」
特に何も起きない。
「……あのー」
ユーレンス先輩の方を見てみると、手で制止された。恐らく待てということなのだろう。
しばらく待っていると、
「よし、良い感じですね」
そう言って魔道具を差し出してきたため、受け取る。
「これは……」
暖かい。ユーレンス先輩が握っていたから人肌に暖かいというレベルではなかった。まるで熱してしばらくした後の鍋ぐらい暖かかった。かといって熱すぎるわけではない、ちょうどいい温度で保たれている。
多分火炎魔法が使われていると思うんだけど、どうしてこんなにちょうどいい温度なんだろう……。素材が関係しているのか?
そんなことを考えていると、
「これはですね、火と氷の魔法を応用して作られているんですよ」
こちらの考えていることが分かったのか、ユーレンス先輩がそう言いながら顔を覗き込んできた。
「火と氷の魔法ですか?」
「うん。簡単に説明するとね」
そう言ってユーレンス先輩は部室にあったボードに何やら書いている。
「物を温めるには火の魔法がいいのは分かりますよね?」
「はい」
「でも、火の魔法だけだと握っていられないほど熱くなってしまう。だから、氷魔法を使うんです。熱くなり過ぎないように氷魔法で温度の調整をします」
なるほど……。だから、熱くなかったのか。
「まぁ、色々複雑な構造で魔道具が作られているんですけど、それはまた入部してくれた時に説明ってことで」
「……分かりました」
もっと詳しく知りたかったら、入部してねってことか……。中々憎いことするなぁ……。
その後もいくつかの魔道具を見せてもらった。最初に見せてくれた魔道具のように実生活でも役に立ちそうなものであったり、どういった場面で使うんだろうと思うような不思議なものであったりと様々な種類の魔道具があった。
「――――とまぁ、簡単な説明でしたけど、どうです? 魔道具に興味持ってくれましたか?」
「はい!! でも、やっぱりどういった構造なのか知りたいですねぇ……」
チラッと横目でユーレンス先輩の方を見る。
「それは、入部してからのお楽しみということしておいてください」
にこやかにそう答えるユーレンス先輩を見て、これ以上聞いても教えてくれないだろうなと悟った。
「申し訳ないのですが、この後予定があるので、部活見学はここまでということで」
「分かりました。今日はありがとうございました」
「いえいえ、入部待ってますね」
ユーレンス先輩と別れの挨拶をして、魔道具研究部の部室を後にした。
「部活かぁ……」
部屋に戻りながら今までの部活見学の内容を思い返す。俺自身魔法や剣で戦うことが好きということもあり、魔法で戦う魔闘部、剣で戦う剣術部ももちろん興味深いものがあった。ただ、魔法を道具に組み込むという魔道具に何処か心惹かれる部分がある。
「うーん。どうしたもんかなぁ……」
どの部活に入ろうか……。出来ることなら魔闘部や剣術部、魔道具研究部にも入りたいなというのが本心だけど、無理だもんなぁ……。
頭を悩ませながら歩いているうちに部屋にたどり着いてしまった。その後も色々比べながら考えてみたものの、結局結論が出なかったため、その日は考えるのを止めて入部する部活については一旦保留にすることにした。
まず目に飛び込んできたのは、部室内に所狭しと置かれている魔道具の数々だった。
「えーと、名前は……」
「あ、シェイド・シュヴァイスです」
「僕はユーレンス・ベントナーです。よろしくお願いしますね」
ユーレンス先輩が手を差し出してきたため握り返した。
「それじゃあ、シュヴァイス君。少し散らかってますけど、適当なところに座ってもらえますか」
「は、はぁ……」
座るといってもどこに座れば……。
机の上のみならず、床の上や椅子の上にも数々の魔道具の部品と思われる物が置いてある。どこに座ろうかと頭を悩ませていると、
「あー、汚いですよね。申し訳ないです」
ユーレンス先輩が椅子の上に置いてある物をどかしてくれて椅子を用意してくれた。
「ありがとうございます」
椅子に座り、改めて部室内を眺める。この部室でどうやって活動ができているのか不思議に思うほど散らかっている。ただ、散らかってはいるものの、部品自体は傷もついていなければ、汚れてすらいない。一応は大切に扱っているようだ。
「ここで活動しているんですか?」
「そうですねぇ。一応はここで活動していることになっていますけど、基本は自分の部屋に簡単な設備を置いて活動している感じですかねぇ」
「え、自分の部屋で魔道具って作れるものなんですか?」
「うーん、流石に1から100まで全部自分の部屋では作れませんが、組み立てとか簡単な作業はできるので。それに、わざわざ部室まで行くの面倒くさいですし。部室に来るときは部屋に置けない機械を使うとき……、例えばあれとか」
ユーレンス先輩が指さした方を見ると、大きな機械が見える。
「あれは、魔力を溜めておくことができる魔溜石の形を整えるために使う機械なんですけど、流石にあれを部屋に置いておくにはでかすぎますし、怒られますからね」
なるほど、確かに食堂の机ほどの大きさのあの機械を部屋に置くとなると、まともに生活できなさそうだな。
「それじゃあ、部員で集まるといったことはないんですか?」
「いや、月に2回活動方針や成果の発表とかで集まりますけど、それ以外だと集まらないですかねぇ」
「そうなんですね」
こうやって話してみて分かったことだが、ユーレンス先輩は意外といい人なのかもしれない。説明会の時に発表を面倒くさそうにしていたため、部活見学も面倒くさがられるかと思っていたが、ちゃんと丁寧に説明してくれる。
「魔道具ってどんなのがあるんですか?」
そう尋ねた瞬間、ユーレンス先輩の目つきが変わった。
「お、魔道具ですか。そうですねぇ……。これとか分かりやすいと思いますよ」
ウキウキした様子で1つの魔道具を持ってきた。
「これは……?」
その魔道具は手のひらサイズに形を整えられたで石のようで、真ん中にはボタンがあって何やら文字が刻まれている。ただ、なんて書いてあるかは分からなかった。
「まぁまぁ、とりあえずこのボタンを押してみてください」
先程までとは打って変わってにこやかにそう言うユーレンス先輩を怪しく思いつつも、恐る恐るボタンを押してみた。
「……?」
特に何も起きない。
「……あのー」
ユーレンス先輩の方を見てみると、手で制止された。恐らく待てということなのだろう。
しばらく待っていると、
「よし、良い感じですね」
そう言って魔道具を差し出してきたため、受け取る。
「これは……」
暖かい。ユーレンス先輩が握っていたから人肌に暖かいというレベルではなかった。まるで熱してしばらくした後の鍋ぐらい暖かかった。かといって熱すぎるわけではない、ちょうどいい温度で保たれている。
多分火炎魔法が使われていると思うんだけど、どうしてこんなにちょうどいい温度なんだろう……。素材が関係しているのか?
そんなことを考えていると、
「これはですね、火と氷の魔法を応用して作られているんですよ」
こちらの考えていることが分かったのか、ユーレンス先輩がそう言いながら顔を覗き込んできた。
「火と氷の魔法ですか?」
「うん。簡単に説明するとね」
そう言ってユーレンス先輩は部室にあったボードに何やら書いている。
「物を温めるには火の魔法がいいのは分かりますよね?」
「はい」
「でも、火の魔法だけだと握っていられないほど熱くなってしまう。だから、氷魔法を使うんです。熱くなり過ぎないように氷魔法で温度の調整をします」
なるほど……。だから、熱くなかったのか。
「まぁ、色々複雑な構造で魔道具が作られているんですけど、それはまた入部してくれた時に説明ってことで」
「……分かりました」
もっと詳しく知りたかったら、入部してねってことか……。中々憎いことするなぁ……。
その後もいくつかの魔道具を見せてもらった。最初に見せてくれた魔道具のように実生活でも役に立ちそうなものであったり、どういった場面で使うんだろうと思うような不思議なものであったりと様々な種類の魔道具があった。
「――――とまぁ、簡単な説明でしたけど、どうです? 魔道具に興味持ってくれましたか?」
「はい!! でも、やっぱりどういった構造なのか知りたいですねぇ……」
チラッと横目でユーレンス先輩の方を見る。
「それは、入部してからのお楽しみということしておいてください」
にこやかにそう答えるユーレンス先輩を見て、これ以上聞いても教えてくれないだろうなと悟った。
「申し訳ないのですが、この後予定があるので、部活見学はここまでということで」
「分かりました。今日はありがとうございました」
「いえいえ、入部待ってますね」
ユーレンス先輩と別れの挨拶をして、魔道具研究部の部室を後にした。
「部活かぁ……」
部屋に戻りながら今までの部活見学の内容を思い返す。俺自身魔法や剣で戦うことが好きということもあり、魔法で戦う魔闘部、剣で戦う剣術部ももちろん興味深いものがあった。ただ、魔法を道具に組み込むという魔道具に何処か心惹かれる部分がある。
「うーん。どうしたもんかなぁ……」
どの部活に入ろうか……。出来ることなら魔闘部や剣術部、魔道具研究部にも入りたいなというのが本心だけど、無理だもんなぁ……。
頭を悩ませながら歩いているうちに部屋にたどり着いてしまった。その後も色々比べながら考えてみたものの、結局結論が出なかったため、その日は考えるのを止めて入部する部活については一旦保留にすることにした。
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