Destiny×Memories

創音

文字の大きさ
9 / 68

Past.07 ~どこまでも深く~

しおりを挟む
 ふわふわ、ゆらゆら。

(どこだ、ここ……?)

 上下左右がわからないような場所に、オレはいた。
 まるで水の中みたいだ。ふわふわして、すごく……あたたかい。だけどほんの少し、さみしい。そんな、場所。


 ――きみは、だれ?――


 不意に知らない声が聞こえた。

(……オレ、は……夕良緋灯ゆうらヒア

 答えると、空間が笑ったようにゆらりと動いた。

(……おまえは?)

 今度はオレが問いかける。微睡むような意識の中、それはほとんど無意識だったのだけれど。


 ――××の名前は……――


 上手く聞き取れず聞き返そうとした瞬間、ぐにゃりと空間が歪む。最後に視たのは、深い海のような……――

 +++

「――……ヒアっ!!」
 

 名前を呼ばれて目が覚める。泣きそうなソカルの顔が、そこにあった。

「ソカ、ル?」

 少し傾いた太陽に、オレは気を失っていたことを知る。
 何か、誰かに会う夢を見た気がするのだが……よく思い出せない。

「何で、オレ……」

「ヒア、いいんだよ思い出さなくても」

 オレの呟きに、ソカルが優しい……だけどどこか悲しげな声で答えてくれた。

「アーくん目覚めたですか?」

 恐る恐る声をかけてきたのはフィリだった。こいつも泣きそうな顔をしている。

「ああ。えーっと……心配かけてごめんな?」

「ヒアさんっ!! ご無事で、ご無事で何よりですーっ!!」

 安心させようと笑うと、今度はマジ泣きしてるリブラに抱きつかれる。あの、ちょっと苦しいです。

「もう……心配したわよ、ヒア」

 ナヅキにまでそう言われてしまい、オレは再度ごめん、と苦笑した。
 寝かされてた身体を起こすと軽く目眩がしたが、まあ大丈夫だろう、と自己判断をする。立ち上がろうとすると、隣にいたソカルが手を貸してくれた。

「大丈夫? ヒア」

「ああ、なんとかな」

 心配そうなソカルに、笑って答える。
 さて、早く次の街に行かなきゃ今日はここで野宿かなー、などと考えながら歩き出そうとした……その瞬間だった。


「よぉ! “双騎士ナイト”ども!!」


 紅い髪の男が、ひどく唐突にオレたちの前に姿を現したのは。

「だ、誰だお前っ!?」

 咄嗟に武器を構えて問えば、男はニヤリと笑った。

「オレの名前はアイレス。いわゆる【神】ってやつだ」

 その言葉に、リブラが反応する。

「アイレス……まさか……【戦神いくさがみ】……!?」

「おっ! お嬢さんオレんこと知ってんの!? 光栄だなあ」

 本当に嬉しそうに笑う男……アイレスに、オレたちは脱力する。だが一人だけまだ警戒しているソカルが、アイレスに再度問いかけた。

「その神サマの一人がここに何の用だ?」

「そんな怖い顔すんなよ! 何、簡単なことだ」

 気さくな笑顔を浮かべたまま、アイレスはその両手に剣を現出させた。
 ……えっ!? 一体どこから……!?

「お前ら“双騎士”のチカラを、ちょっと試させてもらおうかなーってな!」

 そう言うやいなや、アイレスはオレに襲い掛かってきた。

「ヒアッ!!」

 ソカルの叫び声に、オレはとっさに持ってた剣でその攻撃を受け止める。

「へえー! 反射神経はそれなりによし、と!」

「っなんなんだよお前!!」

 余裕そうな顔のアイレスに腹が立ってそう言いながら剣を弾き返す。

「何って、だからさっきも言っただろ! 【神】だってな!!」

 弾き返されたことを気にもせず、アイレスはオレから距離を取る。

「――“蒼炎よ,我が魂を燃やし……”」

「させない!! ――“『オーバーダーク』”!!」

 アイレスが魔法を唱えようとすると、ソカルが鎌を振って魔法を放った。

「くっ!!」

「今度はアタシだよ!! ――“『光蹴撃』”!!」

 アイレスがひるんだ隙に、ナヅキが彼に蹴りを入れる。

「――“……此の地に潜む風の歌,今解き放たん! 『フロウウィンド』”!!」

 今度はフィリが魔法を放つ。先ほどからずっと呪文を唱えていたようで、よくわからないが強力な魔法のようだった。

「すっげー……」

 思わず呆然とその暴風を起こした魔法を見つめる。アイレスは相当なダメージを食らっただろう、と思っていた……のだが。

「ふふふ……あっはっはっは!!」

 風が止んで姿を現したアイレスは、無傷だった。

「いやー、威勢がいいなぁ!! 実に良い!!」

「なん……で……!?」

 驚くオレたちに、リブラが呟く。

「神様は、神様でないと倒せない……」

「ええっ!? 何それ……!?」

 ナヅキの驚愕したような声に、アイレスが笑う。

「はっはっは! いやあお嬢さんは博識だなー!
 そのお嬢さんの言うとおり、オレたち【神】は同じ【神】と呼ばれる存在しか倒せないのさ!!」

 な……なんだよそれ……!!
 オレは思わずソカルを見る。彼はキッとアイレスを睨んだ。

「だけど……【神殺しディーサイド】なら君たち【神】を倒せる!」

 そんなソカルの言葉をもアイレスは笑って一蹴した。

「あいつは今べこべこのボコボコに傷ついてるって! お前らを助けになんか来るわけねーよ!!」

「ッ!!」

 ぐっと押し黙ったソカルに、オレはぐるぐると思考が巡る。

 ――……だって、神様を倒せって……それが、オレの、この世界ですべきことだって。

 そんなオレの思考を遮るように、アイレスが呪文を唱え始めた。

「これで終わりだ!! ――“永遠の業火に抱かれろ!! 『ディモス』”!!」

 炎が、オレたちを襲う。……すべて、燃えてしまう?
 身体が固まって、逃げる事の出来ないオレの手を、ソカルがぎゅっと握る。
 フィリが水属性の魔法を唱えようとするけど……多分、間に合わない。
 そっと、目を瞑った、その時だった。


 ――だいじょうぶ、だよ――


 先ほどの夢の声が、聴こえたのは……――


 それは、深い海のような。


(きみへ。まもるよ、かならず)



 Past.07 Fin.
 Next⇒
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

雷王、大いに懊悩す~ラスボス魔王、使命を果たして元の世界に戻りたくない異世界転移チート勇者によって全力で延命させられるの巻~

朽縄咲良
ファンタジー
 ――「要するに、アンタには死なれちゃ困るんだよ。俺が、この異世界で幸せな一生を送って、天寿を全うするまで、な」  魔族を統べる魔王イラ・ギャレマスは、自身の城へと攻め込んできた“伝説の四勇士”の三人、ジェレミィア・ファミィ・エラルティスを、その圧倒的な力を以て圧倒する。  残るは、黒髪黒目の冴えない男――シュータ・ナカムラのみ。  だが……シュータは、魔法陣で三人の仲間を魔王城の遥か彼方へと吹っ飛ばし、ただひとりで魔王と対峙する。  ――そして、二十分後。  不様に大理石の床に這いつくばっていたのは、魔王ギャレマスの方だった。  シュータの繰り出す圧倒的なチート攻撃の前に為す術もないギャレマスは、自身の敗北と迫りくる死を覚悟するが、そんな彼に対し、シュータは不敵な笑みを浮かべながら、意外な提案を持ちかけるのだった――。 「なぁ、魔王。ここはひとつ、手を組もうぜ……!」  『地上最強の生物』だが、めっぽうお人好しで、バカが付くくらいに娘の事を溺愛している中年オヤj……ナイスミドル(忖度)の魔王が、反則級のチートマシマシ異世界転移勇者をはじめとした周囲の者たちに翻弄されまくるコメディファンタジー、ここに開幕!  哀れな魔王の、明日はどっちだ……? (表紙イラストは、ペケさんから戴きました) *小説家になろう・ノベルアッププラスにも、同作品を掲載しております。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

処理中です...