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Past.20 ~仲間のために~
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――きみはヒアを壊したいの?――
深層心理の海の中。蒼の少年が、紅の少年に問いかけた。
『まさか、その逆だよ。
“私”はヒアを壊したくないし、ソカルも壊したくない』
――なら、どうして……――
『先ほどは、仕方がなかった。
……友を責められ黙っていられるほど、“私”は人間が出来ていないからね』
紅の少年は、真っ直ぐに蒼の少年を見つめる。
『そういう君の方はどうなんだ?』
――どう、って?――
『君の言動は、一見するとヒアを守るように感じる。しかし……本当にそうだろうか?』
紅の少年の言葉に、蒼の少年は息を飲む。
――オレ、は、本当にヒアを、――
『×××、君は、本当は……――』
+++
リウさんたちと別れたオレたちは、次の街を目指して草原を歩いていた。
何かを必死に耐えるような表情のソカルと、それによって何とも言い難い空気に包まれているオレたち現“双騎士”組をそのままに。
「この道を抜けたら次の街だからなー」
「あ、はい……」
イビアさんの空気を読んでいるのかいないのかわからない間延びした声に、オレたちは戸惑いながらも頷いた。
「この先に……神がいるんですかね……?」
多分オレたち現“双騎士”組全員が考えていることを、フィリが呟く。
リウさんは『この先、また【神】と相見える』、と言っていた。
すぐ後、とは言っていなかったが……まあどちらにしろ、【神】たちと戦う運命にあるらしいのだから遭遇する事には変わりはない。
だが、オレたちが持つ唯一の対抗手段をソカルが拒んでいるから、どうすべきかと……勝てるのかと、困惑しているのだ。
「まあ……遭遇したらしたで、その時はその時だろー」
気楽に言い放ったイビアさんに、黒翼も同意するように頷いた。
「その時はその時って……」
呆れたような顔を浮かべるオレたちを見やってから、イビアさんはニヤリと笑った。
「なぁ、そうは思わないか? ……【戦神】アイレス」
「っ!?」
瞬間、オレたちの周りを炎がぐるりと囲んだ。過去二回のパターンから、これは、もしかしなくても。
「いやー、さすが先代“双騎士”。勘がよろしいことで」
「お褒めに預かり光栄、ってね……。――“『ライジングシュニット』”!!」
案の定炎の中から【戦神】アイレスが現れ、すぐさまイビアさんが呪符を投げる。
それを避ける【戦神】を見ながら、オレたちも慌てて武器を構えた。
「相変わらず威勢がいいなぁ! ま、それでもお前らじゃあオレは倒せねえけどな!!」
からからと笑う【戦神】に、ソカルがぎゅっと手を握りしめている。
……ソカルはソカルで、色々葛藤しているのだろう。ひとまず彼はそっとしておくことにして、オレは【戦神】に剣を向ける。
オレがソカルに気を取られている内に、黒翼とナヅキが【戦神】と交戦していて、そのサポートをイビアさんとフィリが行っていた。
「オレも戦います!」
仲間たちに声をかけてから、オレは剣を【戦神】へ振り下ろした。案の定、さらりと避けれてしまったが。
「無駄だ、新米“双騎士”如きがこのオレを傷付けることすら出来るわけねぇよ!
――“焔海に解き放つ,炎を纏いし狼……『フェンリル』”!!」
「……ッ!!」
狼の姿を象った炎の魔法が、オレ目掛けて走ってくる。逃げなければ、逃げなければ……!
(緋灯)
「……ッ!!」
しかし、焼け死んだ両親の顔が脳裏をよぎって……動けない。崩れ落ちそうな足を、必死で踏ん張る。
炎の狼とオレの距離が、ほとんど無くなった……その時だった。
琥珀色が、オレの目の前に現れて……代わりに狼の攻撃を、受けた。
炎を纏った刃と化した狼が、彼の体を貫くのを、オレはスローモーションで見ていた。
「……え……」
炎とは違う赤に包まれる、そいつを見つめて。
(なんで、なんで、オレを)
「っ黒翼ーーーッ!!」
イビアさんの叫びが、戦場に木霊する。
……赤。
オレを庇って倒れた黒翼から流れ出す、命の赤。
「っあ……」
なんでオレなんか庇ったんだ。なんで……。
「……チッ、倒し損ねたか! だが、次こそはッ!!」
【戦神】がそう言って、オレを倒そうと再度詠唱の始める。逃げなくては。
だけど、動けない。
赤が、オレを動けなくする。また、『オレ』は、庇われて……。
(何度同じことを、繰り返せば)
「これで終わりだ、“双騎士”ッ!! “『ジャッジメント・フレイム』”!!」
【戦神】の魔法が、オレたちを襲う。
「ヒアっ!!」
『ヒア……っ!』
ソカルと《彼》の声が、同時に聞こえた……瞬間だった。
――ガウンッ!
一発の銃声が、【戦神】に向けられて放たれた。
「ッ!!」
彼が避けたのと同時に、この場に似合わない明るい声が戦場に響き渡る。
「あー、外したかぁ。残念だ」
「まあまあ。それより……大丈夫ですか? 現“双騎士”の皆さん」
その声の方へ視線を向けると、明るい金髪と白髪の二人組が離れた場所に立っていた。
「ソレイユ……深雪……?」
イビアさんがぽつりと呟く。
二人組はそれに柔らかく笑って、イビアさんと黒翼の傍に駆け寄った。
「大丈夫ですか、イビアさん」
「なんで……お前ら……」
呆然としている彼の頭をぽんと叩いて、ソレイユと呼ばれた金髪の青年は説明した。
「“予言”の下に、な」
「“予言”……」
呟いたイビアさんを一瞥してから、ミユキと呼ばれた白髪が指示を出す。
「回復魔法を使える方は、黒翼さんの手当てをお願いします! それ以外は引き続き【戦神】と交戦を!
……イビアさん、貴方はどうか、黒翼さんのお傍に」
その言葉にみんなが戸惑いながらも頷いて、回復魔法を使えるリブラとフィリが黒翼の傷を治し始める。
黒翼は意識を失ったのか、ぴくりとも動かない。
「……なんで……っなんで、オレなんかを庇ったんだよ……馬鹿やろう……っ!!」
その血の気を失った白い手をぎゅっと握り締めると、金髪の青年が優しく笑った。
「それがコイツとイビアの“契約条件”だからな。
まあそれ故に、この姫さんは随分無茶をするんだけど……その辺は姫さんの性格も関係してんだろうな」
コイツ、仲間思いで優しい奴だから、と青年は続けた。大切な仲間を、自慢するように。
「……仲間……」
呟いてから、オレは目の前で戦う仲間たちを見やる。
やはり【神】相手に苦戦しているようだ。……オレたちが、やらなきゃ。
「……ソカル」
青ざめた顔で鎌を握り締めたままだったパートナーの名前を呼ぶ。
彼は驚いたような……それでいてどこか怯えたような表情で、オレを見た。
「ヒア……?」
「【神】を倒すぞ、ソカル。……オレたちが、やらなきゃダメなんだ」
今戦って、傷ついていく仲間たちのために。
今ここで、オレを庇って倒れた黒翼のために。
……なによりも、自分たちのために。
「やだ……嫌だ、ヒア……僕は……!」
そう言って首を振るソカルの肩を掴んで、オレは静かに……だけどはっきりと、言った。
「ソカル、これは……『命令』、だ」
「……っ」
息を飲んだ彼が、しばらく何かを耐えるように俯いて……それから泣きそうな瞳で、頷いた。
「……“再生”される記憶は、僕にも選べない……。辛いものから、っていうこともあるかもしれない。
だけど、ヒア、これらは全て過去のことだから。……それだけは、忘れないで」
涙声で言い切ったその言葉に黙って頷くと、彼は静かに詠唱を始めた。
「――“我がチカラと共に封じし彼の者のキオクよ,其の意志に,遺志に,呼応し再生せよ……『レゲネラツィオーン』”!」
その詠唱と共に浮かんだ魔法陣に包まれて、オレの意識は閉ざされていく。過去に忘れた、記憶を求めて。
――結局きみは、痛いだけのキオクを求めるんだね――
蒼い髪の少年が、悲しげに……それでいてどこか昏い微笑みを浮かべて、呟いた。
――オレと同じ深さまで堕ちるの? それとも……――
少年の声を聞き終える前に、オレの意識は再度浮上した。
……紅い世界の中で。
――それは、痛みを伴う記憶の始まり。
Past.20 Fin.
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深層心理の海の中。蒼の少年が、紅の少年に問いかけた。
『まさか、その逆だよ。
“私”はヒアを壊したくないし、ソカルも壊したくない』
――なら、どうして……――
『先ほどは、仕方がなかった。
……友を責められ黙っていられるほど、“私”は人間が出来ていないからね』
紅の少年は、真っ直ぐに蒼の少年を見つめる。
『そういう君の方はどうなんだ?』
――どう、って?――
『君の言動は、一見するとヒアを守るように感じる。しかし……本当にそうだろうか?』
紅の少年の言葉に、蒼の少年は息を飲む。
――オレ、は、本当にヒアを、――
『×××、君は、本当は……――』
+++
リウさんたちと別れたオレたちは、次の街を目指して草原を歩いていた。
何かを必死に耐えるような表情のソカルと、それによって何とも言い難い空気に包まれているオレたち現“双騎士”組をそのままに。
「この道を抜けたら次の街だからなー」
「あ、はい……」
イビアさんの空気を読んでいるのかいないのかわからない間延びした声に、オレたちは戸惑いながらも頷いた。
「この先に……神がいるんですかね……?」
多分オレたち現“双騎士”組全員が考えていることを、フィリが呟く。
リウさんは『この先、また【神】と相見える』、と言っていた。
すぐ後、とは言っていなかったが……まあどちらにしろ、【神】たちと戦う運命にあるらしいのだから遭遇する事には変わりはない。
だが、オレたちが持つ唯一の対抗手段をソカルが拒んでいるから、どうすべきかと……勝てるのかと、困惑しているのだ。
「まあ……遭遇したらしたで、その時はその時だろー」
気楽に言い放ったイビアさんに、黒翼も同意するように頷いた。
「その時はその時って……」
呆れたような顔を浮かべるオレたちを見やってから、イビアさんはニヤリと笑った。
「なぁ、そうは思わないか? ……【戦神】アイレス」
「っ!?」
瞬間、オレたちの周りを炎がぐるりと囲んだ。過去二回のパターンから、これは、もしかしなくても。
「いやー、さすが先代“双騎士”。勘がよろしいことで」
「お褒めに預かり光栄、ってね……。――“『ライジングシュニット』”!!」
案の定炎の中から【戦神】アイレスが現れ、すぐさまイビアさんが呪符を投げる。
それを避ける【戦神】を見ながら、オレたちも慌てて武器を構えた。
「相変わらず威勢がいいなぁ! ま、それでもお前らじゃあオレは倒せねえけどな!!」
からからと笑う【戦神】に、ソカルがぎゅっと手を握りしめている。
……ソカルはソカルで、色々葛藤しているのだろう。ひとまず彼はそっとしておくことにして、オレは【戦神】に剣を向ける。
オレがソカルに気を取られている内に、黒翼とナヅキが【戦神】と交戦していて、そのサポートをイビアさんとフィリが行っていた。
「オレも戦います!」
仲間たちに声をかけてから、オレは剣を【戦神】へ振り下ろした。案の定、さらりと避けれてしまったが。
「無駄だ、新米“双騎士”如きがこのオレを傷付けることすら出来るわけねぇよ!
――“焔海に解き放つ,炎を纏いし狼……『フェンリル』”!!」
「……ッ!!」
狼の姿を象った炎の魔法が、オレ目掛けて走ってくる。逃げなければ、逃げなければ……!
(緋灯)
「……ッ!!」
しかし、焼け死んだ両親の顔が脳裏をよぎって……動けない。崩れ落ちそうな足を、必死で踏ん張る。
炎の狼とオレの距離が、ほとんど無くなった……その時だった。
琥珀色が、オレの目の前に現れて……代わりに狼の攻撃を、受けた。
炎を纏った刃と化した狼が、彼の体を貫くのを、オレはスローモーションで見ていた。
「……え……」
炎とは違う赤に包まれる、そいつを見つめて。
(なんで、なんで、オレを)
「っ黒翼ーーーッ!!」
イビアさんの叫びが、戦場に木霊する。
……赤。
オレを庇って倒れた黒翼から流れ出す、命の赤。
「っあ……」
なんでオレなんか庇ったんだ。なんで……。
「……チッ、倒し損ねたか! だが、次こそはッ!!」
【戦神】がそう言って、オレを倒そうと再度詠唱の始める。逃げなくては。
だけど、動けない。
赤が、オレを動けなくする。また、『オレ』は、庇われて……。
(何度同じことを、繰り返せば)
「これで終わりだ、“双騎士”ッ!! “『ジャッジメント・フレイム』”!!」
【戦神】の魔法が、オレたちを襲う。
「ヒアっ!!」
『ヒア……っ!』
ソカルと《彼》の声が、同時に聞こえた……瞬間だった。
――ガウンッ!
一発の銃声が、【戦神】に向けられて放たれた。
「ッ!!」
彼が避けたのと同時に、この場に似合わない明るい声が戦場に響き渡る。
「あー、外したかぁ。残念だ」
「まあまあ。それより……大丈夫ですか? 現“双騎士”の皆さん」
その声の方へ視線を向けると、明るい金髪と白髪の二人組が離れた場所に立っていた。
「ソレイユ……深雪……?」
イビアさんがぽつりと呟く。
二人組はそれに柔らかく笑って、イビアさんと黒翼の傍に駆け寄った。
「大丈夫ですか、イビアさん」
「なんで……お前ら……」
呆然としている彼の頭をぽんと叩いて、ソレイユと呼ばれた金髪の青年は説明した。
「“予言”の下に、な」
「“予言”……」
呟いたイビアさんを一瞥してから、ミユキと呼ばれた白髪が指示を出す。
「回復魔法を使える方は、黒翼さんの手当てをお願いします! それ以外は引き続き【戦神】と交戦を!
……イビアさん、貴方はどうか、黒翼さんのお傍に」
その言葉にみんなが戸惑いながらも頷いて、回復魔法を使えるリブラとフィリが黒翼の傷を治し始める。
黒翼は意識を失ったのか、ぴくりとも動かない。
「……なんで……っなんで、オレなんかを庇ったんだよ……馬鹿やろう……っ!!」
その血の気を失った白い手をぎゅっと握り締めると、金髪の青年が優しく笑った。
「それがコイツとイビアの“契約条件”だからな。
まあそれ故に、この姫さんは随分無茶をするんだけど……その辺は姫さんの性格も関係してんだろうな」
コイツ、仲間思いで優しい奴だから、と青年は続けた。大切な仲間を、自慢するように。
「……仲間……」
呟いてから、オレは目の前で戦う仲間たちを見やる。
やはり【神】相手に苦戦しているようだ。……オレたちが、やらなきゃ。
「……ソカル」
青ざめた顔で鎌を握り締めたままだったパートナーの名前を呼ぶ。
彼は驚いたような……それでいてどこか怯えたような表情で、オレを見た。
「ヒア……?」
「【神】を倒すぞ、ソカル。……オレたちが、やらなきゃダメなんだ」
今戦って、傷ついていく仲間たちのために。
今ここで、オレを庇って倒れた黒翼のために。
……なによりも、自分たちのために。
「やだ……嫌だ、ヒア……僕は……!」
そう言って首を振るソカルの肩を掴んで、オレは静かに……だけどはっきりと、言った。
「ソカル、これは……『命令』、だ」
「……っ」
息を飲んだ彼が、しばらく何かを耐えるように俯いて……それから泣きそうな瞳で、頷いた。
「……“再生”される記憶は、僕にも選べない……。辛いものから、っていうこともあるかもしれない。
だけど、ヒア、これらは全て過去のことだから。……それだけは、忘れないで」
涙声で言い切ったその言葉に黙って頷くと、彼は静かに詠唱を始めた。
「――“我がチカラと共に封じし彼の者のキオクよ,其の意志に,遺志に,呼応し再生せよ……『レゲネラツィオーン』”!」
その詠唱と共に浮かんだ魔法陣に包まれて、オレの意識は閉ざされていく。過去に忘れた、記憶を求めて。
――結局きみは、痛いだけのキオクを求めるんだね――
蒼い髪の少年が、悲しげに……それでいてどこか昏い微笑みを浮かべて、呟いた。
――オレと同じ深さまで堕ちるの? それとも……――
少年の声を聞き終える前に、オレの意識は再度浮上した。
……紅い世界の中で。
――それは、痛みを伴う記憶の始まり。
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