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君の好きな曲
しおりを挟むこんなに綺麗に星が見えたのは、初めてだと思った。
名前も知らない、彼の漕ぐ自転車の後ろに乗って、夜空を見上げていた。
彼と初めて出会った日、私は彼とキスをした。
私は彼の名前を知らない。彼も私の名前を知らない。
私達は友達でもないし、恋人でもない。
冬の冷たい風が顔にあたる。(彼は何を考えて、この自転車を漕いでいるのだろうか。)
そんなことを考えていると「ちょっと、そこの自転車止まって」と、後ろから声が聞こえた。
白いバイクに乗った警察官だった。
一人ずつ警察官に、色々と質問されていく。私達はこの時、初めてお互いの名前を知った。
警察官は「駅まで行くの?歩いた方が長く一緒に居られるよ」そう言った。
その言葉に彼はニコッと笑って、「そうですよね。」と答えた。
警察官は「もう二人乗りはやめてね」と優しく言って、白いバイクを止めていた場所に戻っていった。
歩いて駅まで向かう。彼は「ごめんね」と言った。それに私も「こっちこそ、ごめんね」と答えた。
駅に近づくと、少し寂しい気持ちなっていく。沈黙が続く。
(何か話さないと)そう思った私は、「好きなアーティストは?」と彼に聞いてみた。
彼は少し悩んだ後に、私の好きなアーティストと同じ名前を言った。
「いいよね、あの曲は~」と語り始める。
好きなアーティストが同じってだけで、とても嬉しくなる。今日、名前を知った彼のことを、私はもう好きになっていたのかもしれない。そう思った。
駅に着いて、私は彼に「今日はありがとう」そう言って、手を振った。
ちょうどよく電車が来たので乗ると、いつもより人が少ない。幸せな気持ちのまま、空いていた座席に座り、ミュージックプレイヤーにイヤホンを指した。
私は迷わず、彼が好きだと言った曲を聴き始めた。イヤホンからはいつも聴いている声で「星が綺麗に見えて~」なんて、今日のようなことを歌っていた。
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