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コンビニ強盗を眺めている話
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俺はコンビニで漫画雑誌を読んでいた。堂々と読むのも気が引けるため、目立たないようひっそりと背景に徹している。
店員は今のところ一人しかいない。その店員はレジでポツンと佇んでおり、明後日の方向をボーッと見ている。
よく見ると目玉が若干左右に揺れている。え、きもちわるい。
とにもかくにも、とてもゆるくて平和的なコンビニだ。
こんなに隙があると、強盗なんか簡単に出来てしまうだろう。
「命が惜しけりゃ金を出せ!!」
彼のように。
黒い覆面マスクを付けた男は、黒塗りの拳銃をコンビニ店員に突き付けていた。指は引き金の上に乗せられており、いつでも撃てる状態だ。
アレがオモチャの銃でただの悪戯だったら笑い話で済むだろうが、そういう雰囲気でもなさそうだ。
俺は生唾を飲み、男の動向を眺めていた。
銃を向けられた店員は、のほほんとした顔で首をかしげる。
「ぬ? 何デスカー? パコチー日本語ワカンナイネー」
……ウーン、この似非外国人臭。めちゃくちゃ日本人顔のくせに。
「シャチョサン、ソレアブナイヨー」
パコチーと名乗ったコンビニ店員は、カタコトで強盗の拳銃を指さした。
「てめぇ自分の状況わかってんのか!?」
「パコチー、ジャパニーズ理解デキナイネー」
「カタコトでも話せるってこたぁ少しは理解できんだろ!!」
「いやぁ、日本語ワカンナイネーって言ってれば大丈夫だってシャチョサンが言ってたんだわ」
日本語ペラッペラですね。
「じゃあわかるんじゃねーか!!」
「あい、どんと、あんだぁすたんど、じゃぱねーず」
ジャパニーズな発音の英語で何か言っている。国籍はどこの設定なのだろうか。
強盗は店員の態度にイライラし始めている。いつ発砲してもおかしくない。店員は店員で、あんなにマイペースだなんて肝が据わっている。
「てめぇ、なめんのも大概にしやがれ!!」
「ナメてはナイネー。人間のカスだとは思ってるけどネ」
「何だと!?」
「オ客サン、カルシウム足りてナイネー。牛乳やるから落ち着きな」
そう言ってパコチーは懐から牛乳を出し、ダンッ!! と音を立ててレジに置いた。主君の為に草履を温めた人みたいだが、俺は衛生面の問題でご遠慮したい。
「今日はパコチーのオゴリヨ、たーんと飲みナ!」
牛乳を奢られて喜ぶ強盗犯は果たして存在するのだろうか。
「遠慮しとく」
「エー」
普通に断られていた。それにしても、強盗が店員のペースに飲まれている。
「茶番はここまでだ」
強盗はクールにパコチーの額に拳銃を突き付けた。ここからは顔が見えないが、多分キメ顔になっているだろう。そう思えるほど、キリっとした声だった。
「え? パコチー日本語ワカンナイネー」
振り出しに戻った。
店員は今のところ一人しかいない。その店員はレジでポツンと佇んでおり、明後日の方向をボーッと見ている。
よく見ると目玉が若干左右に揺れている。え、きもちわるい。
とにもかくにも、とてもゆるくて平和的なコンビニだ。
こんなに隙があると、強盗なんか簡単に出来てしまうだろう。
「命が惜しけりゃ金を出せ!!」
彼のように。
黒い覆面マスクを付けた男は、黒塗りの拳銃をコンビニ店員に突き付けていた。指は引き金の上に乗せられており、いつでも撃てる状態だ。
アレがオモチャの銃でただの悪戯だったら笑い話で済むだろうが、そういう雰囲気でもなさそうだ。
俺は生唾を飲み、男の動向を眺めていた。
銃を向けられた店員は、のほほんとした顔で首をかしげる。
「ぬ? 何デスカー? パコチー日本語ワカンナイネー」
……ウーン、この似非外国人臭。めちゃくちゃ日本人顔のくせに。
「シャチョサン、ソレアブナイヨー」
パコチーと名乗ったコンビニ店員は、カタコトで強盗の拳銃を指さした。
「てめぇ自分の状況わかってんのか!?」
「パコチー、ジャパニーズ理解デキナイネー」
「カタコトでも話せるってこたぁ少しは理解できんだろ!!」
「いやぁ、日本語ワカンナイネーって言ってれば大丈夫だってシャチョサンが言ってたんだわ」
日本語ペラッペラですね。
「じゃあわかるんじゃねーか!!」
「あい、どんと、あんだぁすたんど、じゃぱねーず」
ジャパニーズな発音の英語で何か言っている。国籍はどこの設定なのだろうか。
強盗は店員の態度にイライラし始めている。いつ発砲してもおかしくない。店員は店員で、あんなにマイペースだなんて肝が据わっている。
「てめぇ、なめんのも大概にしやがれ!!」
「ナメてはナイネー。人間のカスだとは思ってるけどネ」
「何だと!?」
「オ客サン、カルシウム足りてナイネー。牛乳やるから落ち着きな」
そう言ってパコチーは懐から牛乳を出し、ダンッ!! と音を立ててレジに置いた。主君の為に草履を温めた人みたいだが、俺は衛生面の問題でご遠慮したい。
「今日はパコチーのオゴリヨ、たーんと飲みナ!」
牛乳を奢られて喜ぶ強盗犯は果たして存在するのだろうか。
「遠慮しとく」
「エー」
普通に断られていた。それにしても、強盗が店員のペースに飲まれている。
「茶番はここまでだ」
強盗はクールにパコチーの額に拳銃を突き付けた。ここからは顔が見えないが、多分キメ顔になっているだろう。そう思えるほど、キリっとした声だった。
「え? パコチー日本語ワカンナイネー」
振り出しに戻った。
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