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どうしようもない話

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 俺は死んでいるが、一応学校に通うのが日課となっている。面白い級友がいるため、見てるだけでも楽しいのだ。
 死んでも学校に通っている生徒は一定数いるらしく、彼らはふらふらと学校内を漂っている。そういうのが学校の七不思議になるんだろうな。

 今日も学校に行く予定であったが、通学路の途中の魔神像に足止めを喰らっていた。

「そろそろ助けてくださいよぅ」
 と、V字開脚。やめてくれ。

「お断りします」
「いっつもそれーっ! お断りしなーいでー! 助けて~!」
 背中にピシピシと当たる言葉たち。そんなに非難されても、俺はどうしようもないので立ち去ることしか出来ないのだ。

 それよりも、自力で出られないものなのだろうか、あれ。
 コンタクトレンズを爆発物にしてしまうようなテクノロジーを持つ宇宙人なら、何か便利な道具だってあるような気がするのだが。

 さて、今日も遅刻だ。まぁ出席が取られるわけでもないけれども。
 ちょっくらコンビニにでも寄ってみるか。

***

「シャッセー」
 俺が自動ドアをすり抜けると、パコチーがやる気のない挨拶をしてきた。レジで頬杖ついてやがる。
 っていうか、ナチュラルに俺のこと見えてんのか。幽霊って普通は見えないものだよな……?

「オ客サァン、今日ハ何カ買ッテクレルデショ?」
 うん、普通に話しかけてきたな。

「それよりも、あっちのT字路で地面にぶっ刺さってる人いるんですけど、助けてもらえませんか?」
 何日も刺さりっぱなしはさすがに気の毒だろう。未だにニュースにすらなっていないし、誰も待ち合わせ場所にしてなかったし。
 正直邪魔だし。

「ハァ? 生身ノ人間ガ地面ニブッ刺サルワケネーダロ。頭沸いてんのか?」
「……」
 至極真っ当なツッコミを受けてしまい、返す言葉が見つからなかった。
 頭が沸いている発言であることは重々承知の上だが、実際に刺さっているので仕方ない。

「冷ヤカシナラ、サッサト帰リナ。ソンデ還リナ」
「努力します」
 自分でも、何故この世に留まっているのかわからない。強いて言えば、死因が非常に納得できないから、だろうか。
 あんなのギャグパートじゃ死なない法則が働いて、頭がアフロになる程度で済むだろ。木端微塵ってどういうことだ。

 俺はこの世界の理不尽さを呪い、とりあえず漫画雑誌を読むことにした。

「ダァカラ何か買えっつーの!」
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