[完]私達の結婚に愛はない。愛した夫は私を恨み憎んでいました。

あいみ

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24【オリビア】

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 テミスの塔の、更に奥深く地下。私はそこに連れて行かれた。

 一切の光が漏れることのない闇。

 左右の部屋にはそれぞれ、アレクサンダーとローラが収監されている。

 壁が分厚いのか叫んでも声は届かない。

 足がギリギリ伸ばせない狭い個室。

 何日ここに閉じ込められているのか。

 私の美しい美貌は失われた。肌はボロボロ。爪は欠け、髪には艶もない。

 運ばれてくる食事は味のないスープと半分に切られたパン。

 扉の下にトレーが通る穴があり、そこから渡される。外から鍵がかけられるから、そこから何かをしようとしても無駄。

 食べ終わったら必ず、トレーは手の届く位置に置いておかなくてはならない。

 ルールを破れば鞭打ちの刑。

 人と顔を会わせない毎日に気が狂ってしまいそう。

 こちから声をかけても看守は返事を返そうもしない。

 なぜこの私が!!こんな目に遭わされているのか。




 お父さんはいつもお金で女を買っていた。相手の女も喜んで買われた。

 気性が荒い人ではあったけど、私に暴力を振るったことは一度もない。

 いつも優しく笑顔で、理想の父親。

 私のことをいつも可愛いと褒めてくれるお父さんが大好きだった。

 可愛い私は欲しい物を手に入れる権利がある。

 そう教えらたとき、私はこの世界で一番、きっと神にも近い存在なのだと悟った。

 女を買うのは犯罪だと諭そうとするお母さんはいつも叩かれる。

 夫に相手にされなくなった哀れな女。私の目にはそう映るようになった。

 お父さんにとってお母さんはもう用済み。離婚は体裁が悪くなるからしないだけ。

 自分が欲しい物は相手を傷つけてでも手に入れたらいい。私は両親からそう学んだ。

 アレクサンダー・リフォルド。

 私が目を付けた男。容姿端麗、頭脳明晰。

 情報屋から買った情報によれば寄ってくる女にうんざりしているとか。

 地位や名声、容姿にしか興味のない女ばかり。

 それさえ聞けば、私が彼の前で取るべき行動は一つ。

 興味を示さなければいい。

 いつ来てもいいように毎日、酒場に通った。

 一目でわかる、高貴なオーラ。入店してすぐ女に囲まれる彼はつまらなそうだった。

 私はそれを遠くから横目に見ているだけ。あくまでもお酒を飲みに来たていを装う。

 「一人か?」
 「ええ。初めまして。私はオリビア・ゲーデル」

 こんなにも簡単に釣れるなんてチョロい男。

 「私はアレクサンダー・リフォルドだ」

 家名を出せば女は落ちると思い込んでいるバカ。

 女にうんざりしていながらも、その女にチヤホヤされたい願望に取り憑かれている。

 期待を裏切ってあげると、慌てた様子で腕を掴まれた。

 ありがとう。私が作り出した運命に引っかかってくれて。

 そんな感謝を込めて微笑めば、彼は……アレクサンダーは私に落ちた。

 何度もデートに誘われ、その度に私への好意が膨らんでいく。

 短い交際期間を経て、念願のプロポーズ。当然のことながら受け入れた。

 誰もが羨む派手な結婚式を挙げたかったけど、私とアレクでは式に呼べる人数が違いすぎる。

 新郎新婦で差がありすぎるのは良くないので、二人だけの結婚式で愛を誓った。

 念願の公爵夫人になれた矢先、我がゲーデル家は没落。

 考えられる原因なんて一つだけ。

 私がアレクの心を虜にしているときに、お父さんが女を買いすぎた。

 気付けば多額の借金までして。

 領民の税を上げて得たお金を返済に当てるでもなく、現実から逃げるようにまた女を買う。

 後悔したのは身分を手放した瞬間。

 屋敷を売り払い、身分を返上することで国が借金を肩代わりしてくれるシステムを使った。

 そんなことをしなくても!!アレクがお金を出してくれたのに!!

 有り余る財を持つアレクからしたらはした金。愛する私のためにならいくらでも用意してくれる。

 お父さんを責め立てた。余計なことをしてくれたと。

 平民に落ちるということは公爵夫人ではいられない。

 私の輝かしい未来を奪った!色狂いのバカな親が!!

 「私が女を買っていたとバレて困るのはお前達も同じだ!!」

 開き直ったかのように怒鳴り散らす。

 確かに。私達にも非難の目が向けられるだろう。

 一家の大黒柱が法を犯しているのに、止めることなく見て見ぬふりをしていたのだから。

 アレクに肩代わりに頼めば、お金の使い道がバレて愛想をつかされる。

 悔しいけど、お父さんの言う通りだ。

 使用人もいないボロ家で暮らすこととなった。

 これまでとは違う。質素な生活。耐えられない!!!!

 宝石やドレス、アクセサリーも全て売却してしまったため、私を美しく着飾らせる物は手元にない。

 こんな様でアレクに会えなかった。

 とにかく裕福そうな男を騙して、援助させなくては。

 条件に合う男を探していると、一際、美しい顔の男が現れた。

 アレクが霞むほど。

 風が群青色の髪をなびかせる。チラッと見えた深紅の瞳。

 ───あんな男がいるなんて……。

 人生で初めて私は人を好きになった。

 優しく微笑み、甘い声で私への愛を囁く。
 その現実となる未来に胸が踊る。

 噂に聞く情報屋に足を運び、あるだけのお金をつぎ込み情報を買った。

 額が少ないため名前や家までは教えられなかったけど、不定期でとある建物に出入りしていると。

 元々はカフェだった場所であり、そこで読書をするのが趣味。

 ふふ。私のことを待ってくれているのね。

 すぐさま運命の出会いとして、会いに行ってあげた。

 「は……?」

 男しかいない場所になぜか女がいる。

 私のいるべき場所に別の女が!!

 私は知っている。その瞳に込められた熱の意味を。
 アレクが私を見る熱と同じ。

 この私がいるのに、他の女を好きになるなんて許せない。

 「そうだ。良いことを思いついた」

 幸せだと言わんばかりの笑顔が鼻につく。

 すぐさまアレクに手紙を出した。私に夢中になったアレクは仕事を放り出して会いに来てくれる。

 ただ会うだけでは意味がない。

 私はこれから哀れな被害者になるの。

 どんなことも引き受けてくれる何でも屋に依頼した。

 本当の理由を伏せて、彼が本気で私を愛してくれているか確かめたいから襲うふりをして欲しいと。

 信用第一にかかげているだけあって、お金は後払い。満足のいく結果でなければ支払わなくていいのだ。

 タイミングを見計らって、男達に乱暴される風を装った。

 肌を見られることに抵抗はなく、胸元を割き馬乗りになっている場面に出くわしたアレクは頭に血が上り男を殴る。

 慌てて逃げる二人を追いかけようとする背中に抱きついて、か弱い女を演じた。

 アレクには、ちょっぴり嘘を交えた真実を話すと怒りの矛先はあの女へと向かう。

 「俺のオリビアに何てことを……!!」

 そう。それでいいの。

 貴方はただ私のために、私の思い通りに動いていれば。

 あの女の情報を買って、アレクに気があるとわかれば、私のするべきことは決まった。

 大好きな人と結婚させてあげるなんて、私ってばなんて優しいのかしら。
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