昭和官能小説ショートショートショート

露木阿乱

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「実話 性接待」

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 四十年ほど昔、とあるPR会社で企業広報誌の編集者をしていたことがあった。

 そんなある日、クライアントの企業の媒体の取材で、飛騨地方の工場に取材に出かけ、そこで知り合った女性と、一夜を共にしたことがあった。

 その女性は、工場のリーダーの一人で、以前、東京に住んでいたと言う。

 宿泊していた温泉旅館の女将が顔馴染みらしく、二人で酒を飲み、抱き合っているところを見られても、とがめられることはなかった。それから、一度だけ、上京した彼女が、私のアパートに泊まったことがあった。

 それから、三年、同じ媒体の仕事で、彼女の働く工場を訪問することになった。

 できれば彼女と再び、と考えたが、今回は上司のお供だった。以前のような一夜を期待できるはずがなかった。

 工場で出会った彼女もどことなくよそよそしかった。上司が、工場長との打ち合わせがあるというので、寂しく一人で待っていると、零時を過ぎる頃、ようやく上司は帰ってきた。

「遅かったですね」と聞くと、一呼吸おいて、上司は興奮気味に話し始めた。

「この村の風習らしいんだよ」

「何がですか?」

「打ち合わせが終わって、工場長が、ある場所に案内してくれたんだ。そこには、キミも知っている工場のリーダーの彼女がいて……」

 つまるところ、工場長に命じられて、彼女が上司の性接待をしたということだった。

 私と彼女の関係を知るはずのない上司は、彼女の体の抱き心地の良さを、繰り返し語った。

 後になって、知ったことだが、その頃はまだ、遠来からの客を体でもてなす因習が、特定の地域には残っていたらしい。

 数年後、工場を訪れる機会があったが、工場長も代わり、彼女もいなかった。
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