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知能入れ替わりルーレット
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地味で目立たないが、東大理学部に通う**佐伯 結花(さえき ゆか)**は、毎日を勉学に捧げていた。研究室と図書館を往復するだけの生活。華やかなキャンパスライフとは無縁だったが、それなりに満足していた。
一方、同じ大学に通う別学部のギャル、星野 美咲(ほしの みさき)。派手なネイル、まつエク、金髪ロング。講義にはほとんど出ず、SNSと合コンとコスメの研究ばかりの毎日。だが彼女は「映え力」と愛嬌だけで、講義もギリギリパスしてきた。
ある日、キャンパスに謎の“ルーレット占い”が設置される。
「あなたの運命、少しだけ変えてみませんか?」
軽い気持ちで美咲が挑戦すると、偶然そこにいた結花も巻き込まれ――
カチッ、カチッ…ルーレットが止まる。
表示されたのは「知能 交換」――。
次の瞬間、二人の中で“知能”がごっそりと入れ替わった。
星野美咲(中身:結花)
「えっ、えっ、なにこれ……? 数式が……見える……?」
化粧ポーチを開く手が止まり、代わりに数学の公式が脳内で浮かぶ。
SNSのハッシュタグよりも、微分積分が自然と理解できる。
「このリップの反射率……まさか、スペクトル分析でこうなるってこと?」
その夜、彼女はメイク道具を前に、成分の分子構造をノートに書き出していた。
勉強にハマり、急激に成績が上昇。だが周囲は違和感を覚える。
「え、美咲ちゃんって、そんなに頭良かったっけ……?」
彼女は笑顔で答える。
「うん、ちょっと脳の回路、アップデートされちゃって♪」
佐伯結花(中身:美咲)
一方の結花は――白衣姿で研究室に立ち尽くしていた。
「え、えっと……グラフってどう読むんだっけ? この線、可愛い……」
ホワイトボードの数式を前に涙ぐむ。ペンは正しく持てるのに、内容が頭に入らない。代わりに気になるのは、他人の視線、自分のメイク、服装、そして“映え”。
ある日、鏡の前で自分に語りかけた。
「……こんなに可愛かったんだ、私って」
周囲の男子の視線が心地いい。
結花はしだいに、学問よりも「美しさ」の価値に惹かれていく。
数週間後――ふたりは再びルーレットの前に立つ。
結花(中身:美咲)はルーレットを前に言った。
「戻したい気持ちもあるけど……これも、アリかなって」
美咲(中身:結花)も頷く。
「私、やっと自分の頭を活かせてる気がするの」
もう一度回すか――それとも、このまま歩み続けるか。
二人は、今の自分に微笑んだまま、ルーレットを見送った。
「星野美咲って……あのギャルでしょ? なんで物理学概論のレポートが東大賞なんか獲ってんの?」
周囲はざわついた。
タイトなニットにミニスカート、ネイルはキラキラ、スマホにはデコレーション。
教室の誰もが、彼女を“見た目だけの派手なギャル”だと決めつけていた。
しかし、今の彼女の中身は、かつて東大理学部で最も地味で努力家だった佐伯結花。
知能のルーレットで美咲の身体に宿って以来、彼女は見た目のギャップを逆手にとるようになる。
「顔立ちは整ってる。だけど“配置”がもったいないのよね……」
美咲の身体を鏡で見つめ、彼女は言った。
科学的な分析力をもって、美のバランスを徹底的に研究し始める。
黄金比、肌のトーン、姿勢、笑顔の角度。
見た目の魅力さえも、物理や統計学の“計算”で最適化していった。
「美は、設計できる」
ギャルメイクを進化させ、彼女は“学問に裏打ちされた美人”として周囲の目を奪っていく。
カフェの片隅、派手な服装の彼女がMacBookを開くと、誰もが「インスタ更新か?」と覗き込んだ。
だが画面には、量子ドットの発光特性に関する英語論文が表示されている。
講義で教授が質問する。
「この理論、誰か解説できる人いるか?」
美咲(中身:結花)が手を上げる。誰もがざわつく。
「光子の波長干渉を説明するには、まずエネルギー準位を…」
教室が静まり返る。
その口から出るのは完璧な論理と、わずかな微笑み。
学会発表では、ミニスーツにハイヒール。
見た目だけなら雑誌のモデルのような美しさ。
しかしその口から語られるのは、最先端の量子通信技術。
取材陣も、論文審査員も、ただただ圧倒される。
「見た目が派手でも、頭脳は宇宙のように深い。それが彼女だ」と。
第五章:あの子、誰?
学内ポスターに、**美咲(中身:結花)**の写真が載る。
「東大最年少女性准教授就任」
「新時代の知性、美と理論を両立する異才」
「彼女は東大のイメージを変えた」
キャンパスを歩く彼女を、昔の自分を知る学生が遠くから見てつぶやく。
「あれ……あの子、星野美咲? なんか……すごく綺麗で、でも、怖いくらい賢そう……」
鏡の前で、彼女は整った自分の顔に口紅を引きながら、こうつぶやく。
「これが“美咲”という身体の限界だと思ってた? まだよ。私が引き上げてあげる」
知能の交換がもたらしたのは、ギャルから天才への“逆転”ではない。
知と美が融合し、新しい自分を創り出す革命だったのだ。
「星野美咲……? あのギャルが、統計物理の応用で満点?」
教授陣は首を傾げたが、内容には一切の不備がなかった。
緻密、論理的、かつ“見せ方”まで完璧なそのレポートは、むしろ“魅せるための科学”だった。
美咲(中身:結花)は微笑みながら、教授に言った。
「先生、こんなレポートを出す私が単位を落とすこと、ありませんよね?」
次の瞬間――教授は頷いていた。
美咲の容姿は、見る者の目を釘付けにする。
ふわりと香る香水、タイトなワンピース、軽く首をかしげて微笑むだけで、男子学生はもちろん、助教さえも言いなりになっていく。
だが本当の怖さは、その裏にある知性の罠だった。
「この論文、もしバレたらあなたのキャリア終わりですよね?」
「……ええ、でも、私が守ってあげますよ。協力してくれたら」
彼女は情報を操り、弱みを握り、対立する者を“論理”と“魅了”で完全に封じ込めていった。
ある日、学内でハッキング事件が起きる。
警察が学内調査に入るが――不思議なことに、捜査は途中で打ち切られる。
「彼女にだけは手を出すな」
そう上層部から圧がかかったのだ。
刑事に接触した美咲は、あくまで無邪気にこう言った。
「このスマホの中、見たいですか? でも、見たら人生終わるかも……♡」
その意味を悟った刑事は、深くうなずき、足早に立ち去った。
東大の講堂で開かれたシンポジウム。
壇上に立った彼女は、ただの学生ではなかった。
学内では誰もが逆らえない“非公式の女帝”
教授会では発言一つで人事を動かす
警察さえも距離を置く存在
彼女は“知”と“美”を使いこなすことで、あらゆる組織を**「自分の駒」**に変えていった。
キャンパス内の誰もがこう口をそろえる。
「星野美咲に関わるな。すべて読まれている」
その日も、ミニスカートの彼女が図書館で論文を綴っていた。
ページには難解な数式と、明晰な戦略、そして――
「次のターゲット:文部科学省」
彼女はスマホを片手に、小さく笑った。
「さて、今日は誰を操ろうかしら?」
誰にも悟られず、彼女は社会の仕組みそのものを支配していく。
政界のパーティー。
総理大臣・大河内達也(おおこうち・たつや)は、彼女と目が合った瞬間、思考を奪われた。
「……あの娘は、誰だ?」
若き女研究者、星野美咲(中身:佐伯結花)。
美しさ、気品、そして言葉の隅に垣間見える深い知性――
彼女はあくまで控えめに接しつつ、彼の“弱さ”を的確に見抜いていく。
「総理、ご自身が決断できないこと、私が代わりに考えましょうか?」
それは甘い誘惑ではなく、知略による“囲い込み”だった。
数ヶ月後、大河内総理は極秘裏に彼女と結婚。
周囲は驚いたが、誰も逆らえなかった。
彼女の意見は「提案」から「方針」になり、やがて「決定」へ。
内閣、官僚、警察、メディア――すべてが彼女に従うようになっていった。
「日本の外交は、私がやります」
そう言って彼女はG7首脳会談の場に立つ。
各国の首脳陣は最初、彼女をただの“総理夫人”と侮っていた。
だが彼女は、完璧な英語と数ヶ国語で各国首脳の心理を見抜き、言葉巧みに誘導していく。
「あなたの支持率が不安定なのは、この構造問題が原因ですよね?」
「私の提案を飲めば、あなたの政権は安定します。すべて計算済みですから」
各国首脳が微笑み返す頃には、彼女は既に手綱を握っていた。
彼女はまず通貨政策に着手した。
各国の中央銀行を「提携研究機関」として包み込み、AIによる金融予測システムを配布。
「これは、世界を救うテクノロジーです」と彼女は語ったが――
その裏には、自分が開発した“経済制御アルゴリズム”が組み込まれていた。
気づいたときには、各国の経済は彼女の手のひらの上だった。
ある日、SNSで世界中の人々が同時に投稿する。
#MISAの時代へ
アメリカ大統領は言う。
「我々の国家戦略は彼女の提案に従うことにした」
EU首脳は言う。
「むしろ、こちらから頼んでいるのだ。彼女は希望だ」
だがその裏には、彼女に弱みを握られた者たちの静かな沈黙があった。
東京の超高層ビル。
世界各国の要人から贈られた宝石や機密文書が収められた部屋で、彼女は窓の外を眺めていた。
「征服なんて、目的じゃないの。
みんなが“私の考え”で動けば、無駄がないでしょ?」
口元には、柔らかな笑み。
だがその瞳の奥には、冷ややかな知性が光っていた。
東京、超高層ビルの一室――
全世界を手中に収めた**美咲(中身:結花)**は、飾り気のないルーレットを見つめていた。
「懐かしいわね……あの時、知能を手に入れて、私は世界を変えた」
だがその瞬間、何者かが現れ、ルーレットを無理やり回す。
カチッ、カチッ、カチッ……『知能:再交換』
白い光が部屋を包み、気づいた時――
中身:ギャル美咲の知能が、再び身体:ギャル美咲に戻っていた。
周囲は騒然とした。
「えっ? あれ……あたし、なんでこんな高層ビルにいるの? 総理の席ってなに!? てか、これサインしていいやつ!?」
だが既に政府、国連、金融、SNS、AIシステムまですべてが“美咲の意思”で動く構造になっていた。
「やっば、マジであたし世界のお姫様じゃん♡」
混乱した閣僚たちに、美咲はこう言い放つ。
「これからの世界は、かわいさが正義ッス! 名付けて――世界かわいい計画♡」
各国に通達される新たな法案。
全成人女性に週1回のギャルメイク講習義務
政府職員はネイル検査と日焼け色チェック
軍服もピンク基調のデザインへリニューアル
教科書には「マジ卍」「それな」の用語解説を追加
抗議の声はあがる……が、誰も逆らえない。
なぜなら、美咲の影響下にある**AIシステム「MISA-CORE」**が全情報を握っており、どの国の首脳も黙るしかないのだ。
見た目は滅茶苦茶。
世界中でギャルメイク、プリクラ制度、カラコン規制の自由化。
だが、争いは消えていた。
見た目に気を使うことで、互いを褒め合う文化が広がる
ギャル語での対話が感情的な衝突をやわらげる
世界会議もプリ帳片手に行われるようになり、「戦争よりカワイイが勝つ」のが常識となる
かつて武力で語った国が、今は盛れた写真の撮り方を議論している。
高層ビルのバルコニーで、風に髪をなびかせながら、美咲はつぶやく。
「征服とかムズくてマジ無理だったけど、
みんながギャルってだけで、なんか世界明るくね?」
彼女の後ろには、世界各国の首脳たち――
ピンクのスーツ、カラコン、ハイライトメイクで敬礼する。
「せーの、マジ卍!」
世界は狂っていた。
だが、美咲の世界は――史上最も平和だった。
知能交換ルーレットの後、美咲の中身となった佐伯結花は――
世界征服を成し遂げた“元・自分の知能”により、ギャル化政策を受け入れざるを得なかった。
「爪、キラキラにしないと処分対象っスよ?」
「今日のプリクラ、まだですけど?」
――周囲の視線、カラコンの違和感、厚化粧の重さ。
本来の自分とは程遠い“外見だけの女”として笑顔を作るたびに、結花の胸には静かな怒りが溜まっていった。
だが、彼女は泣かない。
むしろその“ギャルの仮面”を利用し、美咲の中枢に近づいていく。
MISA-COREのAI制御網に密かにバックドアを仕込む
各国の“かわいい大臣”と呼ばれる首脳夫人たちと秘密裏に接触
ギャル語を使いこなしながら、その裏で心理操作と政治誘導を行う
そして、美咲の側近として最も信頼を受けるポジションに昇り詰める。
「結花って、マジでギャルレベル高いっしょ♡」
(――それはあなたの知能で作った言語、当然よ)
世界かわいい会議。
美咲が全世界に向けて演説を行うその日。
舞台裏で、佐伯結花は“最後のトリガー”を押す。
「MISA-CORE、制御権限切替開始」
「全通信衛星、ルーティング再構築」
スクリーンに映る美咲の笑顔が、突如として停止する。
そして代わりに映し出されるのは、ギャルメイクのまま冷笑を浮かべる佐伯結花。
「皆さん、こんにちは。“真の支配者”からお知らせです」
「“かわいい”は廃止します。これからは“賢さ”が価値です」
ギャル化された外見のまま、世界の支配権を掌握した佐伯結花。
だが、彼女はメイクもネイルもやめようとしなかった。
「“かわいい”は、利用できる」
「“馬鹿に見える仮面”は、賢い者が被れば最強の武器になる」
世界は驚き、混乱する。
だが皮肉にも、美咲が築いた仕組みは、彼女自身に最適化されていたのだ。
「征服とは、美も知も使いこなすこと。私はその両方よ」
バルコニーに立つ結花は、かつてのように風に髪をなびかせながら微笑む。
「美咲、あなたのおかげで学べたわ。
外見と中身、どちらも武器にできたら――世界は誰にも止められない」
そして、世界各国の指導者たちは今、ネイルを整えながら、結花の名を讃える。
一方、同じ大学に通う別学部のギャル、星野 美咲(ほしの みさき)。派手なネイル、まつエク、金髪ロング。講義にはほとんど出ず、SNSと合コンとコスメの研究ばかりの毎日。だが彼女は「映え力」と愛嬌だけで、講義もギリギリパスしてきた。
ある日、キャンパスに謎の“ルーレット占い”が設置される。
「あなたの運命、少しだけ変えてみませんか?」
軽い気持ちで美咲が挑戦すると、偶然そこにいた結花も巻き込まれ――
カチッ、カチッ…ルーレットが止まる。
表示されたのは「知能 交換」――。
次の瞬間、二人の中で“知能”がごっそりと入れ替わった。
星野美咲(中身:結花)
「えっ、えっ、なにこれ……? 数式が……見える……?」
化粧ポーチを開く手が止まり、代わりに数学の公式が脳内で浮かぶ。
SNSのハッシュタグよりも、微分積分が自然と理解できる。
「このリップの反射率……まさか、スペクトル分析でこうなるってこと?」
その夜、彼女はメイク道具を前に、成分の分子構造をノートに書き出していた。
勉強にハマり、急激に成績が上昇。だが周囲は違和感を覚える。
「え、美咲ちゃんって、そんなに頭良かったっけ……?」
彼女は笑顔で答える。
「うん、ちょっと脳の回路、アップデートされちゃって♪」
佐伯結花(中身:美咲)
一方の結花は――白衣姿で研究室に立ち尽くしていた。
「え、えっと……グラフってどう読むんだっけ? この線、可愛い……」
ホワイトボードの数式を前に涙ぐむ。ペンは正しく持てるのに、内容が頭に入らない。代わりに気になるのは、他人の視線、自分のメイク、服装、そして“映え”。
ある日、鏡の前で自分に語りかけた。
「……こんなに可愛かったんだ、私って」
周囲の男子の視線が心地いい。
結花はしだいに、学問よりも「美しさ」の価値に惹かれていく。
数週間後――ふたりは再びルーレットの前に立つ。
結花(中身:美咲)はルーレットを前に言った。
「戻したい気持ちもあるけど……これも、アリかなって」
美咲(中身:結花)も頷く。
「私、やっと自分の頭を活かせてる気がするの」
もう一度回すか――それとも、このまま歩み続けるか。
二人は、今の自分に微笑んだまま、ルーレットを見送った。
「星野美咲って……あのギャルでしょ? なんで物理学概論のレポートが東大賞なんか獲ってんの?」
周囲はざわついた。
タイトなニットにミニスカート、ネイルはキラキラ、スマホにはデコレーション。
教室の誰もが、彼女を“見た目だけの派手なギャル”だと決めつけていた。
しかし、今の彼女の中身は、かつて東大理学部で最も地味で努力家だった佐伯結花。
知能のルーレットで美咲の身体に宿って以来、彼女は見た目のギャップを逆手にとるようになる。
「顔立ちは整ってる。だけど“配置”がもったいないのよね……」
美咲の身体を鏡で見つめ、彼女は言った。
科学的な分析力をもって、美のバランスを徹底的に研究し始める。
黄金比、肌のトーン、姿勢、笑顔の角度。
見た目の魅力さえも、物理や統計学の“計算”で最適化していった。
「美は、設計できる」
ギャルメイクを進化させ、彼女は“学問に裏打ちされた美人”として周囲の目を奪っていく。
カフェの片隅、派手な服装の彼女がMacBookを開くと、誰もが「インスタ更新か?」と覗き込んだ。
だが画面には、量子ドットの発光特性に関する英語論文が表示されている。
講義で教授が質問する。
「この理論、誰か解説できる人いるか?」
美咲(中身:結花)が手を上げる。誰もがざわつく。
「光子の波長干渉を説明するには、まずエネルギー準位を…」
教室が静まり返る。
その口から出るのは完璧な論理と、わずかな微笑み。
学会発表では、ミニスーツにハイヒール。
見た目だけなら雑誌のモデルのような美しさ。
しかしその口から語られるのは、最先端の量子通信技術。
取材陣も、論文審査員も、ただただ圧倒される。
「見た目が派手でも、頭脳は宇宙のように深い。それが彼女だ」と。
第五章:あの子、誰?
学内ポスターに、**美咲(中身:結花)**の写真が載る。
「東大最年少女性准教授就任」
「新時代の知性、美と理論を両立する異才」
「彼女は東大のイメージを変えた」
キャンパスを歩く彼女を、昔の自分を知る学生が遠くから見てつぶやく。
「あれ……あの子、星野美咲? なんか……すごく綺麗で、でも、怖いくらい賢そう……」
鏡の前で、彼女は整った自分の顔に口紅を引きながら、こうつぶやく。
「これが“美咲”という身体の限界だと思ってた? まだよ。私が引き上げてあげる」
知能の交換がもたらしたのは、ギャルから天才への“逆転”ではない。
知と美が融合し、新しい自分を創り出す革命だったのだ。
「星野美咲……? あのギャルが、統計物理の応用で満点?」
教授陣は首を傾げたが、内容には一切の不備がなかった。
緻密、論理的、かつ“見せ方”まで完璧なそのレポートは、むしろ“魅せるための科学”だった。
美咲(中身:結花)は微笑みながら、教授に言った。
「先生、こんなレポートを出す私が単位を落とすこと、ありませんよね?」
次の瞬間――教授は頷いていた。
美咲の容姿は、見る者の目を釘付けにする。
ふわりと香る香水、タイトなワンピース、軽く首をかしげて微笑むだけで、男子学生はもちろん、助教さえも言いなりになっていく。
だが本当の怖さは、その裏にある知性の罠だった。
「この論文、もしバレたらあなたのキャリア終わりですよね?」
「……ええ、でも、私が守ってあげますよ。協力してくれたら」
彼女は情報を操り、弱みを握り、対立する者を“論理”と“魅了”で完全に封じ込めていった。
ある日、学内でハッキング事件が起きる。
警察が学内調査に入るが――不思議なことに、捜査は途中で打ち切られる。
「彼女にだけは手を出すな」
そう上層部から圧がかかったのだ。
刑事に接触した美咲は、あくまで無邪気にこう言った。
「このスマホの中、見たいですか? でも、見たら人生終わるかも……♡」
その意味を悟った刑事は、深くうなずき、足早に立ち去った。
東大の講堂で開かれたシンポジウム。
壇上に立った彼女は、ただの学生ではなかった。
学内では誰もが逆らえない“非公式の女帝”
教授会では発言一つで人事を動かす
警察さえも距離を置く存在
彼女は“知”と“美”を使いこなすことで、あらゆる組織を**「自分の駒」**に変えていった。
キャンパス内の誰もがこう口をそろえる。
「星野美咲に関わるな。すべて読まれている」
その日も、ミニスカートの彼女が図書館で論文を綴っていた。
ページには難解な数式と、明晰な戦略、そして――
「次のターゲット:文部科学省」
彼女はスマホを片手に、小さく笑った。
「さて、今日は誰を操ろうかしら?」
誰にも悟られず、彼女は社会の仕組みそのものを支配していく。
政界のパーティー。
総理大臣・大河内達也(おおこうち・たつや)は、彼女と目が合った瞬間、思考を奪われた。
「……あの娘は、誰だ?」
若き女研究者、星野美咲(中身:佐伯結花)。
美しさ、気品、そして言葉の隅に垣間見える深い知性――
彼女はあくまで控えめに接しつつ、彼の“弱さ”を的確に見抜いていく。
「総理、ご自身が決断できないこと、私が代わりに考えましょうか?」
それは甘い誘惑ではなく、知略による“囲い込み”だった。
数ヶ月後、大河内総理は極秘裏に彼女と結婚。
周囲は驚いたが、誰も逆らえなかった。
彼女の意見は「提案」から「方針」になり、やがて「決定」へ。
内閣、官僚、警察、メディア――すべてが彼女に従うようになっていった。
「日本の外交は、私がやります」
そう言って彼女はG7首脳会談の場に立つ。
各国の首脳陣は最初、彼女をただの“総理夫人”と侮っていた。
だが彼女は、完璧な英語と数ヶ国語で各国首脳の心理を見抜き、言葉巧みに誘導していく。
「あなたの支持率が不安定なのは、この構造問題が原因ですよね?」
「私の提案を飲めば、あなたの政権は安定します。すべて計算済みですから」
各国首脳が微笑み返す頃には、彼女は既に手綱を握っていた。
彼女はまず通貨政策に着手した。
各国の中央銀行を「提携研究機関」として包み込み、AIによる金融予測システムを配布。
「これは、世界を救うテクノロジーです」と彼女は語ったが――
その裏には、自分が開発した“経済制御アルゴリズム”が組み込まれていた。
気づいたときには、各国の経済は彼女の手のひらの上だった。
ある日、SNSで世界中の人々が同時に投稿する。
#MISAの時代へ
アメリカ大統領は言う。
「我々の国家戦略は彼女の提案に従うことにした」
EU首脳は言う。
「むしろ、こちらから頼んでいるのだ。彼女は希望だ」
だがその裏には、彼女に弱みを握られた者たちの静かな沈黙があった。
東京の超高層ビル。
世界各国の要人から贈られた宝石や機密文書が収められた部屋で、彼女は窓の外を眺めていた。
「征服なんて、目的じゃないの。
みんなが“私の考え”で動けば、無駄がないでしょ?」
口元には、柔らかな笑み。
だがその瞳の奥には、冷ややかな知性が光っていた。
東京、超高層ビルの一室――
全世界を手中に収めた**美咲(中身:結花)**は、飾り気のないルーレットを見つめていた。
「懐かしいわね……あの時、知能を手に入れて、私は世界を変えた」
だがその瞬間、何者かが現れ、ルーレットを無理やり回す。
カチッ、カチッ、カチッ……『知能:再交換』
白い光が部屋を包み、気づいた時――
中身:ギャル美咲の知能が、再び身体:ギャル美咲に戻っていた。
周囲は騒然とした。
「えっ? あれ……あたし、なんでこんな高層ビルにいるの? 総理の席ってなに!? てか、これサインしていいやつ!?」
だが既に政府、国連、金融、SNS、AIシステムまですべてが“美咲の意思”で動く構造になっていた。
「やっば、マジであたし世界のお姫様じゃん♡」
混乱した閣僚たちに、美咲はこう言い放つ。
「これからの世界は、かわいさが正義ッス! 名付けて――世界かわいい計画♡」
各国に通達される新たな法案。
全成人女性に週1回のギャルメイク講習義務
政府職員はネイル検査と日焼け色チェック
軍服もピンク基調のデザインへリニューアル
教科書には「マジ卍」「それな」の用語解説を追加
抗議の声はあがる……が、誰も逆らえない。
なぜなら、美咲の影響下にある**AIシステム「MISA-CORE」**が全情報を握っており、どの国の首脳も黙るしかないのだ。
見た目は滅茶苦茶。
世界中でギャルメイク、プリクラ制度、カラコン規制の自由化。
だが、争いは消えていた。
見た目に気を使うことで、互いを褒め合う文化が広がる
ギャル語での対話が感情的な衝突をやわらげる
世界会議もプリ帳片手に行われるようになり、「戦争よりカワイイが勝つ」のが常識となる
かつて武力で語った国が、今は盛れた写真の撮り方を議論している。
高層ビルのバルコニーで、風に髪をなびかせながら、美咲はつぶやく。
「征服とかムズくてマジ無理だったけど、
みんながギャルってだけで、なんか世界明るくね?」
彼女の後ろには、世界各国の首脳たち――
ピンクのスーツ、カラコン、ハイライトメイクで敬礼する。
「せーの、マジ卍!」
世界は狂っていた。
だが、美咲の世界は――史上最も平和だった。
知能交換ルーレットの後、美咲の中身となった佐伯結花は――
世界征服を成し遂げた“元・自分の知能”により、ギャル化政策を受け入れざるを得なかった。
「爪、キラキラにしないと処分対象っスよ?」
「今日のプリクラ、まだですけど?」
――周囲の視線、カラコンの違和感、厚化粧の重さ。
本来の自分とは程遠い“外見だけの女”として笑顔を作るたびに、結花の胸には静かな怒りが溜まっていった。
だが、彼女は泣かない。
むしろその“ギャルの仮面”を利用し、美咲の中枢に近づいていく。
MISA-COREのAI制御網に密かにバックドアを仕込む
各国の“かわいい大臣”と呼ばれる首脳夫人たちと秘密裏に接触
ギャル語を使いこなしながら、その裏で心理操作と政治誘導を行う
そして、美咲の側近として最も信頼を受けるポジションに昇り詰める。
「結花って、マジでギャルレベル高いっしょ♡」
(――それはあなたの知能で作った言語、当然よ)
世界かわいい会議。
美咲が全世界に向けて演説を行うその日。
舞台裏で、佐伯結花は“最後のトリガー”を押す。
「MISA-CORE、制御権限切替開始」
「全通信衛星、ルーティング再構築」
スクリーンに映る美咲の笑顔が、突如として停止する。
そして代わりに映し出されるのは、ギャルメイクのまま冷笑を浮かべる佐伯結花。
「皆さん、こんにちは。“真の支配者”からお知らせです」
「“かわいい”は廃止します。これからは“賢さ”が価値です」
ギャル化された外見のまま、世界の支配権を掌握した佐伯結花。
だが、彼女はメイクもネイルもやめようとしなかった。
「“かわいい”は、利用できる」
「“馬鹿に見える仮面”は、賢い者が被れば最強の武器になる」
世界は驚き、混乱する。
だが皮肉にも、美咲が築いた仕組みは、彼女自身に最適化されていたのだ。
「征服とは、美も知も使いこなすこと。私はその両方よ」
バルコニーに立つ結花は、かつてのように風に髪をなびかせながら微笑む。
「美咲、あなたのおかげで学べたわ。
外見と中身、どちらも武器にできたら――世界は誰にも止められない」
そして、世界各国の指導者たちは今、ネイルを整えながら、結花の名を讃える。
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