電車の座席に座る女性とその前に立つモデルの入れ替わり

ジャンタマオ

文字の大きさ
1 / 1

座席の女と立ち尽くすモデル

しおりを挟む
序章:交差する視線
都心を走る電車の車内。夕暮れの柔らかな光が窓から差し込み、座席に座る一人の女性の肌を照らしていた。

ベージュのワンピースに身を包んだその女性は、ゆったりとした呼吸をしながら、目の前に立つ若い女性をじっと見上げていた。彼女の名は橘 麗香(たちばな・れいか)。都会的な顔立ち、豊かな胸元が印象的な、どこか達観した雰囲気のある女性だった。

そして彼女の前に立っているのは、売り出し中のファッションモデル、成宮 彩音(なるみや・あやね)。170cm近い長身で、切れ長の目元に整った輪郭、全身のシルエットは雑誌を飾るには十分な美しさ。しかし彼女には、ずっと気にしていることがあった——自分の「胸の小ささ」だ。

麗香の前に立ち、無意識に視線が彼女の胸元に吸い寄せられていく彩音。自分には決して手に入らない、成熟した“女の体”。胸元が自然に盛り上がっているその姿は、どこか生々しく、挑発的ですらあった。

「……そんなに見ないでよ。代わってあげようか?」

麗香の声が、低く笑うように響いた。

第一章:目覚め
——目が覚めたのは、電車が次の駅に着いた瞬間だった。

「え……?」

視線を落とすと、そこには見慣れない谷間。華奢だった胸元には、はっきりと重さと存在感があった。見下ろす自分の膝、太もも——どれも、彩音のものではなかった。

そして座席に座っている自分の姿を見て、全身に寒気が走った。

「わ、私……が、座ってる?」

立ち尽くしていた彩音の“中身”は、麗香になっていた。そして、座っていた麗香の身体には、自分の意識がある——完全な入れ替わりだった。

「ありがとう。しばらく、その身体、借りるわね。」

微笑む“彩音(中身は麗香)”は、自信たっぷりに立ち去っていく。駅で降り、長い脚をリズム良く動かしながら、まるで前からそうだったかのように振る舞っていた。

第二章:新しい日常
数週間後。

麗香の身体に入った彩音は、自分の変化に次第に馴染んでいた。最初は羞恥と混乱でいっぱいだったが、胸の重さ、腰のくびれ、柔らかく波打つ肌の感触は、いつしか“彩音”を安心させるものに変わっていった。

服を選ぶ基準も変わった。以前はボリュームのない上半身を隠すような服ばかりだったが、今では思い切り胸元を開いたドレスや、身体のラインを強調するスカートを選ぶ。

——この身体なら、どんな視線も、すべて受け入れられる。

一方、“彩音”として生きることになった麗香は、その肉体的ハンデを逆に武器にしていた。

「私の中身はね、この小さな身体じゃ収まりきらないの。」

媚びるような笑顔を捨て、堂々とランウェイを歩く“彩音(中身は麗香)”は、一躍話題のカリスマモデルとなった。無駄な色気ではなく、視線を制圧する“威厳”を放っていた。

最終章:もとには戻らない
入れ替わりの謎が解けることはなかった。

でも、二人はどちらも“今”に満足していた。

かつて胸の小ささに悩み続けた彩音は、成熟した女の身体を手に入れて、ようやく“女”としての自信を得た。そして、年齢や体型に左右されず、ただ自分の“内側”だけで勝負した麗香は、若く華奢な身体を使いこなして世間を魅了し始めていた。

最後に再び、あの電車でふたりはすれ違う。

“麗香(中身は彩音)”は静かに座り、“彩音(中身は麗香)”は立ったまま、ふと視線を落とした。

そして、前とは逆に——彼女の豊かな胸元を、どこか誇らしげに見つめていた。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

入れ替わり夫婦

廣瀬純七
ファンタジー
モニターで送られてきた性別交換クリームで入れ替わった新婚夫婦の話

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

リアルフェイスマスク

廣瀬純七
ファンタジー
リアルなフェイスマスクで女性に変身する男の話

令和の俺と昭和の私

廣瀬純七
ファンタジー
令和の男子と昭和の女子の体が入れ替わる話

OLサラリーマン

廣瀬純七
ファンタジー
女性社員と体が入れ替わるサラリーマンの話

性転のへきれき

廣瀬純七
ファンタジー
高校生の男女の入れ替わり

リボーン&リライフ

廣瀬純七
SF
性別を変えて過去に戻って人生をやり直す男の話

恋愛リベンジャーズ

廣瀬純七
SF
過去に戻って恋愛をやり直そうとした男が恋愛する相手の女性になってしまった物語

処理中です...