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Thank you for your body.
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高校3年生の里奈(りな)は、受験まで残りわずかというプレッシャーのなか、英単語帳を手に飛行機へ乗り込んだ。彼女は暗く地味な見た目で、眼鏡の奥の目は不安に揺れていた。今回のフライトは、志望大学の下見のための一人旅だった。
機内では、美しい客室乗務員の美沙(みさ)が乗客に笑顔で対応していた。濃紺の制服に身を包み、長く整った脚を組んで座るその姿は、まさに“華”。英語のアナウンスも発音が完璧で、外国人客とも流暢に会話していた。
里奈はその姿を憧れ混じりに見つめながら、「いいなぁ……あんな風に英語が話せたら……」と、心の中で呟いた。
その瞬間、機体が軽く揺れた。
ふ、と意識が遠のく感覚――
気がつくと、里奈は機内のジャンプシートに座っていた。制服の袖、結ばれたスカーフ、脚に感じる引き締まった感覚。そして、目の前に映った鏡に――美沙の顔。
「えっ……うそ……これ、私……?」
反対に、エコノミー席では地味な制服姿に眼鏡をかけた“美沙”が、動揺しているように座っていた。どう見ても、ふたりの中身が――入れ替わっていた。
最初はパニックになったが、仕事中の美沙(中身:里奈)は、自然と英語が口から出ることに驚いた。外国人乗客に話しかけられても、まるでずっと話していたかのように流れる英語。頭も冴え、機内アナウンスすらすら読み上げる自分に、恍惚のような感覚すら覚えた。
(これが……あの人の“身体の力”……)
一方、客席の里奈(中身:美沙)は、英語の単語帳を開いても頭に入ってこず、言葉を発しようとしても口がまわらなかった。いら立ち、もやもや、汗が止まらない。
フライトが終わり、乗客が降りたあとの静かな機内。ふたりは再び顔を合わせた。
制服姿の“美沙”(中身:里奈)は、一歩前に出て、満面の笑顔で言った。
「Thank you for your body.」
“里奈”(中身:美沙)は唖然とした。発音も、リズムも、完璧だった。
そしてその言葉を残し、“美沙”は機内の通路を美しく歩き去っていった――自分の脚で、堂々と。
それが、元には戻らないという無言の宣告だと、誰よりも“里奈”が理解していた。
機内では、美しい客室乗務員の美沙(みさ)が乗客に笑顔で対応していた。濃紺の制服に身を包み、長く整った脚を組んで座るその姿は、まさに“華”。英語のアナウンスも発音が完璧で、外国人客とも流暢に会話していた。
里奈はその姿を憧れ混じりに見つめながら、「いいなぁ……あんな風に英語が話せたら……」と、心の中で呟いた。
その瞬間、機体が軽く揺れた。
ふ、と意識が遠のく感覚――
気がつくと、里奈は機内のジャンプシートに座っていた。制服の袖、結ばれたスカーフ、脚に感じる引き締まった感覚。そして、目の前に映った鏡に――美沙の顔。
「えっ……うそ……これ、私……?」
反対に、エコノミー席では地味な制服姿に眼鏡をかけた“美沙”が、動揺しているように座っていた。どう見ても、ふたりの中身が――入れ替わっていた。
最初はパニックになったが、仕事中の美沙(中身:里奈)は、自然と英語が口から出ることに驚いた。外国人乗客に話しかけられても、まるでずっと話していたかのように流れる英語。頭も冴え、機内アナウンスすらすら読み上げる自分に、恍惚のような感覚すら覚えた。
(これが……あの人の“身体の力”……)
一方、客席の里奈(中身:美沙)は、英語の単語帳を開いても頭に入ってこず、言葉を発しようとしても口がまわらなかった。いら立ち、もやもや、汗が止まらない。
フライトが終わり、乗客が降りたあとの静かな機内。ふたりは再び顔を合わせた。
制服姿の“美沙”(中身:里奈)は、一歩前に出て、満面の笑顔で言った。
「Thank you for your body.」
“里奈”(中身:美沙)は唖然とした。発音も、リズムも、完璧だった。
そしてその言葉を残し、“美沙”は機内の通路を美しく歩き去っていった――自分の脚で、堂々と。
それが、元には戻らないという無言の宣告だと、誰よりも“里奈”が理解していた。
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