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第6話 Bパート(ヒロインがゴリラ)
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1
ピピピピピピ!ピピピピピピ!ピピピピピ!ピピピピピピ!
朝を告げる目覚ましの音が響く。しかし、部屋の主は微動だにしない。ベッドに横たわったままである。まるで死人のように反応がない。
ピピピピピピ!ピピピピピピ!ピピピピピ!ピピピピピピ!
朝を告げる目覚ましの音はまだ鳴りやまない。ベッドに横たわる優は聞こえていないかのように寝返りすらうたない。
昨日はアストラルの本部で初日の訓練を受け、帰宅早々に優は泥のように眠りについた。柳さんが車で家まで送ってくれなければ、帰ってこれなかったのではないかと思うほど消耗しきっていた。
ピピピピピピ!ピピピピピピ!ピピピピピ!ピピピピピピ!
目覚ましは鳴り続けている。夢の世界から現実の世界へ引き戻す。それが使命である。
ピピピピピピ!ピピピピピピ!ピピピピピ!ピピピピピピ!
しかし、幾度となく夢の世界から引き上げる作業を試みるも、固く閉ざされて金庫のようにベッドの主は瞼を開かない。
そして、目覚まし時計は使命を果たすことができないまま、その役目を終え、次の使命の時まで時間を刻む作業に戻る。
外は通勤や通学のために歩き出した人々の声が聞こえ出す。車の音も響いている。鳥がさえずり、ゴミを出しに来た主婦が挨拶を交わしている。一日が動き出した。
一時的な朝の喧騒が過ぎると、再び静かな時間が流れ出す。外から響く音は、たまに通る車の音くらいである。
そして、優は目を覚ました。体のあちこちが痛い。どこが痛いと言われれば全部が痛い。起き上がる動作で筋肉が悲鳴を上げる。昨日、家に帰ってきてからのことはほとんど覚えていない。自室のベッドまでは来たのだということは覚えている。そこから記憶がない。
「・・・学校に行かないと。」
節々が痛む体を起こして時計を見る。時計の針が示す現実を突きつけられて優の意識は逆バンジージャンプのように深い闇の底から飛び跳ねてきた。
「まじかよッ!?」
すでに時刻は昼前である。目覚まし時計が鳴っていたという記憶はない。ずっと眠り続けていた。今日が休みだったらどれだけ嬉しいか。しかし、現実は月曜日。祝日でもない。平日である。学生の本分を全うするために体に鞭打つしかない。体の痛みなどどうでもいい、優は飛び起きると慌てて学校の準備を始めた。
2
今日ほど登校することが辛いと思った日はない。走って何とか学校にたどり着くが、今日は学業どろこではない。昼前まで寝ていたが疲労が回復しきっていない。
「優、重役出勤とは偉くなったもんだな。」
綾人が皮肉を言ってくる。結局、学校に着いたのは昼休みの時間であった。綾人は男子空手部で朝から練習があったはずだ。今はこいつの体力が羨ましいと思う。
「昨日はハードな一日だったんだよ・・・。」
「またバイトか?相変わらずの苦学生だねえ。」
バイトならどれだけ良かったか。そもそもバイトでここまでの消耗はしない。ほとんど無理矢理にアストラルに入れられた。これからどうなるのだろう。2年生になる前の日常が懐かしく思える。
そんなナイーブになっている優に昨日の悪夢が近づいてきた。雪宮朔夜がへたり込んでいる優に声をかけてきたのである。女子プロレスラーのような見た目のこの女子に昨日はコテンパンにやられた。
「香上君。大丈夫?昨日はかなりきつかったけど。」
朔夜に悪気はない。単に昨日はやり過ぎたと思って反省したからこそ声をかけてきた。優が現実から逃避したい気持ちなど知る由もない。
「まじで勘弁してくれぇ。きつすぎる・・・。」
優から出てきたのは魂の抜けたような弱気な声である。今日一日はずっとこの調子だろう。
「そう、まあ、今日は休んだ方がいいでしょうね。」
朔夜は一言だけ言うと、自分の席に戻っていった。
「あれ、優。昨日は雪宮さんと一緒にいたのか?」
綾人が何気なく質問をしてくる。特別な意味はない。恋愛の話になどなるとは微塵も思っていない。そして、事実そうだった。
「ああ・・・。ちょっとな。雪宮さんて家で道場やってるっていう話を聞いたから、体験入門させてもらったんだ。そしたらこのざまだ。」
咄嗟についた嘘であるが、我ながらよくできていると思う。
「なんだよ。格闘技がやりたいならうちに入ればいいだろう。」
綾人は男子空手部のエースである。優の言葉に対しては当然の反応と言える。
「あ、いや、なんというか。ほら、総合格闘技みたいなことやってるらしいし、空手部は続けるかどうかわからないのに入部するわけにもいかないし。」
優は少し苦しい言い訳になっていることを自覚した。綾人の言う通り、昔からの相棒がいるならそっちの方に行けばいい。
「ああ、なるほどな。確かに総合格闘技だとうちとは違うな。」
よく分からないが、綾人は今の説明で納得したようだ。
そんな話をしているうちに昼休みの終わりを告げるベルが鳴り響いた。
3
放課後になり、朔夜は女子に囲まれて下校していった。クラスの女子からはかっこいいと評判である。一緒に帰ると守ってもらえる。変な奴が寄ってこない。そんな安心感がある。朔夜も周りの女子を邪険にせずに休み時間には簡単な護身術を教えている。
「それじゃあな、優。俺は部活に行ってくるわ。」
「おう、またな。」
綾人が優に挨拶をして部活へと向かっていく。綾人はすでに一年の女子からも人気が出始めているとのことで、何とも羨ましい限りである。どうやらこの学校の女子は強い者に惹かれる傾向があるようだ。
「俺も強くなろうかな・・・。」
優から出た独り言は今、置かれている状況と合うような気もするが、強さの目的地が違い過ぎる。あくまで人間レベルの強さでいいのだ。
「香上君、今日はどうしたの?調子でも悪い?」
そんな優に声をかけてくる女子がいた。2年生になってから、話をするようになった村上 涼香である。先週、佐伯に誘われてカラオケに行った時に村上も一緒に来ていた。その時に話が合い、仲良くなったのである。そこそこ可愛いとも思う。
「ああ、大したことないよ。目覚ましが鳴っていることに気が付かなくて、そのまま寝過ごしちゃったんだよ。」
優は半分笑いながら返事をした。事実としては間違っていない。
「そういうのあるよね。私も一度目覚まし時計が鳴ってることに気が付かなくて、起きた時に慌てちゃったことあるよ。」
涼香も笑顔で応えてきてくれている。
「あれ、びっくりするよな。寝ぼけてた頭が一気に飛び上がる感覚が焦るよな。」
「ふふふ、そうそう。あれは焦るよね。」
他愛のない会話が楽しい。アビスやらテスタメントやらのことを考えなくていいのは心が安らぐ。
「ところで、香上君。今日は何か予定ある?」
涼香は表情の和らいだ優に話を続けきた。今日の予定。只管体を休ませる。何もしない。これに尽きる。
「何もないよ。」
「よかった。付き合ってほしいところがあるんだけどいい?」
今日は傷ついた体を休ませる。疲労に打ちひしがれた手足を回復させる。そのためには何もせずに休養する。そんなこと知ったことか!俺の体のことなどどうでもいい!
「いいよ。昼前まで寝てたせいで体力が有り余ってるんだ。どこでも付き合うよ。」
「わぁ、ありがとう。そう言ってくれると助かるわ。」
涼香の笑顔が可愛いと思った。春が来たかもしれない。そんな浮ついた気持ちと足取りで優は涼香とともに学校を後にしたのであった。
4
涼香に連れられて優が来たところは一軒のカフェでだった。雑誌にも乗っている有名店である。この店で有名な物はたしか・・・。
「この店って、パンケーキが有名な店だよね?」
優が涼香に話しかけた。この店はいつも行列ができている。特に休みの日などは長蛇の列ができるほどである。
「そうなの、休みの日は一杯で入れないでしょ。この時間がねらい目なんだけど、一緒に行けく友達が都合合わなくなって、どうしても食べたいから香上君にお願いしたの。」
一人で入ればいいじゃないか。とは言えるわけもない。女子のこういうところは理解できないところである。飲食店に一人で入れない。理解はできないが、この好機は逃すわけにはいかない。
「そうか、俺もこの店は気になってたから、一度は来てみたかったんだよ。」
パンケーキなどに興味の無い優が涼香に話を合わせる。美味いラーメンなら並んでも食べたいが、パンケーキに並ぶ気にはなれない。
「そっかぁ、良かった。香上君とは結構趣味が合うよね。」
「そうだね。」
まんざらでもない表情の優は涼香とともにパンケーキで有名なカフェに入っていった。筋肉痛で体全体が痛む。今となっては本当にどうでもいいことである。
(明日はちゃんと体を休ませよう。)
優はそんなことを思いながら、結構値段が高いなと思うパンケーキを堪能したのであった。
次の日も涼香と学校で会う。昨日のパンケーキの話をすると、涼香の友達も会話に入ってくる。「いいなぁ」「私も食べたいなぁ」という声が漏れている。男同士の会話だと、まず味の評価から入るが、女子はそうではないらしい。単に会話のネタがあればいいのである。結局この日、涼香は放課後を友達と過ごすため、優はまっすぐ家に帰って、今度こそ体を休めることにした。
次の日もまたその次の日も優は日常の学校生活を送っていた。涼香とはパンケーキを食べて以来、仲が深まったと思う。毎日話すようにもなっている。どうしても意識をしてしまう。相手はどう思っているのだろうかと。
そして、金曜日。そんな、青春の悩みを抱えた少年に体格の良い女子が話しかけてきた。雪宮朔夜である。
「香上君。体の方はもう大丈夫みたいね。今日から訓練を再開するわよ。いつまでも休んでなんていられないからね。本当は毎日でもやらないといけないのよ。」
「まじかよ・・・。あれをまたやるのか・・・。」
朔夜の言葉に意気消沈した優は恨めしそうな声を上げる。
「あなたは自覚が足りなさすぎるのよ。もう現実からは逃げられないわよ。命が大切なら私に付いてきなさい。」
朔夜がビシッと言い切った。確かにその通りでだった。青春を謳歌したいが、非情な現実が優を襲ってきたことは事実であり、今も自分の中には化け物が宿っている。「アジ・ダハーカ」と名乗った化け物が。
「ああ・・・。分かった。行くよ・・・。」
覚悟を決めるしかなかった。青春を謳歌して死んでしまっては意味がない。生き残ることが最優先である。そのうえで青春を謳歌する。
「それに、今日やるのは基礎訓練じゃないわよ。」
「えっ!?そうなの!?」
あの訓練ではない。優はそれを聞いただけで心が軽くなった。
「ええ、とりあえず、私の家の道場に来てくれる?」
嫌な予感がした。基礎訓練じゃなければ実戦訓練か。心が軽くなったのは一瞬だけであった。あからさまに嫌そうな顔をした優を朔夜は無理矢理引っ張って学校を後にした。
5
朔夜の道場は電車を乗り継いで1時間ほどかかった。古いが大きな道場。丁寧に手入れが行き届いており、清潔感がある。畳が敷き詰められたその道場の中は古さを感じさせない威厳のようなものが感じられた。道着に着替えた優は入っただけで身が引き締まる思いであった。
「おじいちゃん、連れてきたわよ。」
道場には一人に老人が立っていた。どれくらいの年齢だろうか。白髪が目立ち、額には深い皺が刻みこまれている。年期を感じさせる風貌と同時に、背筋はまっすぐであり、細い体ながらも巨木を思わせるような安定した姿である。老人は優と同じ道着を着ている。
「よう来なさった。待っておったよ。わしは朔夜の祖父、道重という。あんたが、香上優か。なかなか男前やのう。」
「あ、初めまして。香上優です。よろしくお願いします。」
優は丁寧に挨拶をする。おそらくこの老人が今日、稽古をつけてくれる人なのだろう。雪宮の巨体と戦わなくて済みそうですこしホッとした。
「今日は、おじいちゃんが香上君の訓練のパートナーよ。訓練の目的は香上君の力を引き出すこと。実戦さながらの訓練から能力を使えるようにするわ。」
朔夜が今日の訓練の趣旨を説明する。それに対して優が反論を示した。
「ちょっと待ってくれ。俺の力を引き出すのはいいが、道重さんが危ないんじゃないのか!?」
「大丈夫よ、おじいちゃんは元テスタメント。全盛期には最強のテスタメントと呼ばれたこともあるわ。むしろ、あたなが殺されないことを考えた方がいいわよ。」
「おいおいおい!冗談だよな?」
優はビビりながら質問をする。冗談ではないことくらい承知のうえで質問をする。
「ははは、そう怯えんでもいい。要は香上君が力を使えるようになればそれだけで死なずに済む。」
道重は冗談か本気か分からないようなことを言っている。
「時間が惜しいわ。さっそく始めて。」
問答無用で朔夜が訓練を開始する。優が抗議の声を上げようと雪宮を見るが、聞いてくれそうにない。とりあえず身構える。と、目の前にいるはずの老人の姿がなかった。
「油断大敵と言ってな。」
いつの間にか優の死角に回り込んでいた道重に腕を取られる。抵抗しようとしたが、その時には景色が回転していた。
ビタンッ!何が起こったか分からないまま、優は畳の上に叩きつけられていた。その衝撃に息が止まる。
「よそ見をしているとこういうことになる。」
道重が静かに話を続けた。優が理解できたことは、投げられたということだけ。目を離したのは一瞬だけだった。それを捕らえられた。
起き上がった優は、後方に飛んで距離を取る。近づけさせたら駄目だ。今は逃げないといけない。そんな考えからの行動であった。
「かかってこんのなら、またこっちから行くぞ。」
道重は老人とは思えないような素早い動きで距離を詰めてくる。優は腕を掴まれないように注意をしながら、後ろに下がる。しかし、前身する方が早い。腕を取られまいとすると、胴ががら空きになる。そこに道重の拳がめり込んだ。優は鉄球が飛んできたのかと思った。細い老人の腕からは想像がつかないような重い一撃。その一発で優は膝を折った。
「ほれ、立ちなさい。まだ始まったばかりだぞ。」
道重は苦悶に喘いでいる優に容赦なく声をかける。
「い、いや、ちょっと待ってください・・・。」
「アビスは待ってくれんがの。」
道重はそう言うと、動けないでいる優にさらに攻撃を加えてきた。優はそれを見て、咄嗟に横へ転がる。
「ははは、動けるではないか。」
優は痛む腹を押さえながら、何とか立ち上がる。ギブアップは受け付けてくれそうにない。倒れたら、倒れたところを攻撃されるだろう。
「力を使えんといつまで経っても終わらんぞ。」
道重は言葉を続ける。優は力を使えるようになればいいと言われたが、どうやったらいいか分からない。
「出て来い!アジ・ダハーカ!」
優が叫び声を上げる。だが、何も起こらない。道場に優の声が響いただけである。そして、道重の拳が優の体に打ち込まれる。大きな金槌で殴られているのではないかと錯覚するほどの攻撃が襲い掛かってくる。
「そんなことでは、力は使えんぞ。」
道重は拳を打ち込みながら教示する。ならばと、優は右手を突き出し、目を閉じて強く念じる。
「分かっとらんのう。命令や念じるのではない。それはお前自身だろうが。」
道重に蹴飛ばされながら、優は言葉を聞いていた。命令するでもなく、念じるでもなく、どうやってこの力を使えばいいのか。分からないが、分からなければ本当にこのまま命を奪われるのではないかとさえ思ってきた。
「もう一度、言うぞ。お前自身だ。別物ではない!」
優は道重の言葉を反芻する。
(俺自身・・・。俺自身の力を使う。俺の中のものを使う。それは俺を使うということか・・・!?)
膝を付いた状態の優に道重は腰の入った重い拳を突き出した。優は右手の腕をかざしてそれを受け止める。さっきまでなら簡単に吹き飛ばされていた一撃を片手で受け止める。
「ああ、そういうことか。自分の手足を動かすのに命令したり念じたりすることはしないよな。そんなことでは動かねえわな。」
優は何か確信を得た声を出してきた。そして言葉を続ける。
「お前は、もう俺だ!俺はお前だ!お前自身が俺自身だ!」
優は右手を横凪ぎに払う。道重は素早い動きで後方に退避した。優が払った軌跡をたどるように一瞬だけ空間が黒く染まり、すぐに元に戻った。まるで虚無の空間が発生したように何もない黒が現れたように見えた。
ピピピピピピ!ピピピピピピ!ピピピピピ!ピピピピピピ!
朝を告げる目覚ましの音が響く。しかし、部屋の主は微動だにしない。ベッドに横たわったままである。まるで死人のように反応がない。
ピピピピピピ!ピピピピピピ!ピピピピピ!ピピピピピピ!
朝を告げる目覚ましの音はまだ鳴りやまない。ベッドに横たわる優は聞こえていないかのように寝返りすらうたない。
昨日はアストラルの本部で初日の訓練を受け、帰宅早々に優は泥のように眠りについた。柳さんが車で家まで送ってくれなければ、帰ってこれなかったのではないかと思うほど消耗しきっていた。
ピピピピピピ!ピピピピピピ!ピピピピピ!ピピピピピピ!
目覚ましは鳴り続けている。夢の世界から現実の世界へ引き戻す。それが使命である。
ピピピピピピ!ピピピピピピ!ピピピピピ!ピピピピピピ!
しかし、幾度となく夢の世界から引き上げる作業を試みるも、固く閉ざされて金庫のようにベッドの主は瞼を開かない。
そして、目覚まし時計は使命を果たすことができないまま、その役目を終え、次の使命の時まで時間を刻む作業に戻る。
外は通勤や通学のために歩き出した人々の声が聞こえ出す。車の音も響いている。鳥がさえずり、ゴミを出しに来た主婦が挨拶を交わしている。一日が動き出した。
一時的な朝の喧騒が過ぎると、再び静かな時間が流れ出す。外から響く音は、たまに通る車の音くらいである。
そして、優は目を覚ました。体のあちこちが痛い。どこが痛いと言われれば全部が痛い。起き上がる動作で筋肉が悲鳴を上げる。昨日、家に帰ってきてからのことはほとんど覚えていない。自室のベッドまでは来たのだということは覚えている。そこから記憶がない。
「・・・学校に行かないと。」
節々が痛む体を起こして時計を見る。時計の針が示す現実を突きつけられて優の意識は逆バンジージャンプのように深い闇の底から飛び跳ねてきた。
「まじかよッ!?」
すでに時刻は昼前である。目覚まし時計が鳴っていたという記憶はない。ずっと眠り続けていた。今日が休みだったらどれだけ嬉しいか。しかし、現実は月曜日。祝日でもない。平日である。学生の本分を全うするために体に鞭打つしかない。体の痛みなどどうでもいい、優は飛び起きると慌てて学校の準備を始めた。
2
今日ほど登校することが辛いと思った日はない。走って何とか学校にたどり着くが、今日は学業どろこではない。昼前まで寝ていたが疲労が回復しきっていない。
「優、重役出勤とは偉くなったもんだな。」
綾人が皮肉を言ってくる。結局、学校に着いたのは昼休みの時間であった。綾人は男子空手部で朝から練習があったはずだ。今はこいつの体力が羨ましいと思う。
「昨日はハードな一日だったんだよ・・・。」
「またバイトか?相変わらずの苦学生だねえ。」
バイトならどれだけ良かったか。そもそもバイトでここまでの消耗はしない。ほとんど無理矢理にアストラルに入れられた。これからどうなるのだろう。2年生になる前の日常が懐かしく思える。
そんなナイーブになっている優に昨日の悪夢が近づいてきた。雪宮朔夜がへたり込んでいる優に声をかけてきたのである。女子プロレスラーのような見た目のこの女子に昨日はコテンパンにやられた。
「香上君。大丈夫?昨日はかなりきつかったけど。」
朔夜に悪気はない。単に昨日はやり過ぎたと思って反省したからこそ声をかけてきた。優が現実から逃避したい気持ちなど知る由もない。
「まじで勘弁してくれぇ。きつすぎる・・・。」
優から出てきたのは魂の抜けたような弱気な声である。今日一日はずっとこの調子だろう。
「そう、まあ、今日は休んだ方がいいでしょうね。」
朔夜は一言だけ言うと、自分の席に戻っていった。
「あれ、優。昨日は雪宮さんと一緒にいたのか?」
綾人が何気なく質問をしてくる。特別な意味はない。恋愛の話になどなるとは微塵も思っていない。そして、事実そうだった。
「ああ・・・。ちょっとな。雪宮さんて家で道場やってるっていう話を聞いたから、体験入門させてもらったんだ。そしたらこのざまだ。」
咄嗟についた嘘であるが、我ながらよくできていると思う。
「なんだよ。格闘技がやりたいならうちに入ればいいだろう。」
綾人は男子空手部のエースである。優の言葉に対しては当然の反応と言える。
「あ、いや、なんというか。ほら、総合格闘技みたいなことやってるらしいし、空手部は続けるかどうかわからないのに入部するわけにもいかないし。」
優は少し苦しい言い訳になっていることを自覚した。綾人の言う通り、昔からの相棒がいるならそっちの方に行けばいい。
「ああ、なるほどな。確かに総合格闘技だとうちとは違うな。」
よく分からないが、綾人は今の説明で納得したようだ。
そんな話をしているうちに昼休みの終わりを告げるベルが鳴り響いた。
3
放課後になり、朔夜は女子に囲まれて下校していった。クラスの女子からはかっこいいと評判である。一緒に帰ると守ってもらえる。変な奴が寄ってこない。そんな安心感がある。朔夜も周りの女子を邪険にせずに休み時間には簡単な護身術を教えている。
「それじゃあな、優。俺は部活に行ってくるわ。」
「おう、またな。」
綾人が優に挨拶をして部活へと向かっていく。綾人はすでに一年の女子からも人気が出始めているとのことで、何とも羨ましい限りである。どうやらこの学校の女子は強い者に惹かれる傾向があるようだ。
「俺も強くなろうかな・・・。」
優から出た独り言は今、置かれている状況と合うような気もするが、強さの目的地が違い過ぎる。あくまで人間レベルの強さでいいのだ。
「香上君、今日はどうしたの?調子でも悪い?」
そんな優に声をかけてくる女子がいた。2年生になってから、話をするようになった村上 涼香である。先週、佐伯に誘われてカラオケに行った時に村上も一緒に来ていた。その時に話が合い、仲良くなったのである。そこそこ可愛いとも思う。
「ああ、大したことないよ。目覚ましが鳴っていることに気が付かなくて、そのまま寝過ごしちゃったんだよ。」
優は半分笑いながら返事をした。事実としては間違っていない。
「そういうのあるよね。私も一度目覚まし時計が鳴ってることに気が付かなくて、起きた時に慌てちゃったことあるよ。」
涼香も笑顔で応えてきてくれている。
「あれ、びっくりするよな。寝ぼけてた頭が一気に飛び上がる感覚が焦るよな。」
「ふふふ、そうそう。あれは焦るよね。」
他愛のない会話が楽しい。アビスやらテスタメントやらのことを考えなくていいのは心が安らぐ。
「ところで、香上君。今日は何か予定ある?」
涼香は表情の和らいだ優に話を続けきた。今日の予定。只管体を休ませる。何もしない。これに尽きる。
「何もないよ。」
「よかった。付き合ってほしいところがあるんだけどいい?」
今日は傷ついた体を休ませる。疲労に打ちひしがれた手足を回復させる。そのためには何もせずに休養する。そんなこと知ったことか!俺の体のことなどどうでもいい!
「いいよ。昼前まで寝てたせいで体力が有り余ってるんだ。どこでも付き合うよ。」
「わぁ、ありがとう。そう言ってくれると助かるわ。」
涼香の笑顔が可愛いと思った。春が来たかもしれない。そんな浮ついた気持ちと足取りで優は涼香とともに学校を後にしたのであった。
4
涼香に連れられて優が来たところは一軒のカフェでだった。雑誌にも乗っている有名店である。この店で有名な物はたしか・・・。
「この店って、パンケーキが有名な店だよね?」
優が涼香に話しかけた。この店はいつも行列ができている。特に休みの日などは長蛇の列ができるほどである。
「そうなの、休みの日は一杯で入れないでしょ。この時間がねらい目なんだけど、一緒に行けく友達が都合合わなくなって、どうしても食べたいから香上君にお願いしたの。」
一人で入ればいいじゃないか。とは言えるわけもない。女子のこういうところは理解できないところである。飲食店に一人で入れない。理解はできないが、この好機は逃すわけにはいかない。
「そうか、俺もこの店は気になってたから、一度は来てみたかったんだよ。」
パンケーキなどに興味の無い優が涼香に話を合わせる。美味いラーメンなら並んでも食べたいが、パンケーキに並ぶ気にはなれない。
「そっかぁ、良かった。香上君とは結構趣味が合うよね。」
「そうだね。」
まんざらでもない表情の優は涼香とともにパンケーキで有名なカフェに入っていった。筋肉痛で体全体が痛む。今となっては本当にどうでもいいことである。
(明日はちゃんと体を休ませよう。)
優はそんなことを思いながら、結構値段が高いなと思うパンケーキを堪能したのであった。
次の日も涼香と学校で会う。昨日のパンケーキの話をすると、涼香の友達も会話に入ってくる。「いいなぁ」「私も食べたいなぁ」という声が漏れている。男同士の会話だと、まず味の評価から入るが、女子はそうではないらしい。単に会話のネタがあればいいのである。結局この日、涼香は放課後を友達と過ごすため、優はまっすぐ家に帰って、今度こそ体を休めることにした。
次の日もまたその次の日も優は日常の学校生活を送っていた。涼香とはパンケーキを食べて以来、仲が深まったと思う。毎日話すようにもなっている。どうしても意識をしてしまう。相手はどう思っているのだろうかと。
そして、金曜日。そんな、青春の悩みを抱えた少年に体格の良い女子が話しかけてきた。雪宮朔夜である。
「香上君。体の方はもう大丈夫みたいね。今日から訓練を再開するわよ。いつまでも休んでなんていられないからね。本当は毎日でもやらないといけないのよ。」
「まじかよ・・・。あれをまたやるのか・・・。」
朔夜の言葉に意気消沈した優は恨めしそうな声を上げる。
「あなたは自覚が足りなさすぎるのよ。もう現実からは逃げられないわよ。命が大切なら私に付いてきなさい。」
朔夜がビシッと言い切った。確かにその通りでだった。青春を謳歌したいが、非情な現実が優を襲ってきたことは事実であり、今も自分の中には化け物が宿っている。「アジ・ダハーカ」と名乗った化け物が。
「ああ・・・。分かった。行くよ・・・。」
覚悟を決めるしかなかった。青春を謳歌して死んでしまっては意味がない。生き残ることが最優先である。そのうえで青春を謳歌する。
「それに、今日やるのは基礎訓練じゃないわよ。」
「えっ!?そうなの!?」
あの訓練ではない。優はそれを聞いただけで心が軽くなった。
「ええ、とりあえず、私の家の道場に来てくれる?」
嫌な予感がした。基礎訓練じゃなければ実戦訓練か。心が軽くなったのは一瞬だけであった。あからさまに嫌そうな顔をした優を朔夜は無理矢理引っ張って学校を後にした。
5
朔夜の道場は電車を乗り継いで1時間ほどかかった。古いが大きな道場。丁寧に手入れが行き届いており、清潔感がある。畳が敷き詰められたその道場の中は古さを感じさせない威厳のようなものが感じられた。道着に着替えた優は入っただけで身が引き締まる思いであった。
「おじいちゃん、連れてきたわよ。」
道場には一人に老人が立っていた。どれくらいの年齢だろうか。白髪が目立ち、額には深い皺が刻みこまれている。年期を感じさせる風貌と同時に、背筋はまっすぐであり、細い体ながらも巨木を思わせるような安定した姿である。老人は優と同じ道着を着ている。
「よう来なさった。待っておったよ。わしは朔夜の祖父、道重という。あんたが、香上優か。なかなか男前やのう。」
「あ、初めまして。香上優です。よろしくお願いします。」
優は丁寧に挨拶をする。おそらくこの老人が今日、稽古をつけてくれる人なのだろう。雪宮の巨体と戦わなくて済みそうですこしホッとした。
「今日は、おじいちゃんが香上君の訓練のパートナーよ。訓練の目的は香上君の力を引き出すこと。実戦さながらの訓練から能力を使えるようにするわ。」
朔夜が今日の訓練の趣旨を説明する。それに対して優が反論を示した。
「ちょっと待ってくれ。俺の力を引き出すのはいいが、道重さんが危ないんじゃないのか!?」
「大丈夫よ、おじいちゃんは元テスタメント。全盛期には最強のテスタメントと呼ばれたこともあるわ。むしろ、あたなが殺されないことを考えた方がいいわよ。」
「おいおいおい!冗談だよな?」
優はビビりながら質問をする。冗談ではないことくらい承知のうえで質問をする。
「ははは、そう怯えんでもいい。要は香上君が力を使えるようになればそれだけで死なずに済む。」
道重は冗談か本気か分からないようなことを言っている。
「時間が惜しいわ。さっそく始めて。」
問答無用で朔夜が訓練を開始する。優が抗議の声を上げようと雪宮を見るが、聞いてくれそうにない。とりあえず身構える。と、目の前にいるはずの老人の姿がなかった。
「油断大敵と言ってな。」
いつの間にか優の死角に回り込んでいた道重に腕を取られる。抵抗しようとしたが、その時には景色が回転していた。
ビタンッ!何が起こったか分からないまま、優は畳の上に叩きつけられていた。その衝撃に息が止まる。
「よそ見をしているとこういうことになる。」
道重が静かに話を続けた。優が理解できたことは、投げられたということだけ。目を離したのは一瞬だけだった。それを捕らえられた。
起き上がった優は、後方に飛んで距離を取る。近づけさせたら駄目だ。今は逃げないといけない。そんな考えからの行動であった。
「かかってこんのなら、またこっちから行くぞ。」
道重は老人とは思えないような素早い動きで距離を詰めてくる。優は腕を掴まれないように注意をしながら、後ろに下がる。しかし、前身する方が早い。腕を取られまいとすると、胴ががら空きになる。そこに道重の拳がめり込んだ。優は鉄球が飛んできたのかと思った。細い老人の腕からは想像がつかないような重い一撃。その一発で優は膝を折った。
「ほれ、立ちなさい。まだ始まったばかりだぞ。」
道重は苦悶に喘いでいる優に容赦なく声をかける。
「い、いや、ちょっと待ってください・・・。」
「アビスは待ってくれんがの。」
道重はそう言うと、動けないでいる優にさらに攻撃を加えてきた。優はそれを見て、咄嗟に横へ転がる。
「ははは、動けるではないか。」
優は痛む腹を押さえながら、何とか立ち上がる。ギブアップは受け付けてくれそうにない。倒れたら、倒れたところを攻撃されるだろう。
「力を使えんといつまで経っても終わらんぞ。」
道重は言葉を続ける。優は力を使えるようになればいいと言われたが、どうやったらいいか分からない。
「出て来い!アジ・ダハーカ!」
優が叫び声を上げる。だが、何も起こらない。道場に優の声が響いただけである。そして、道重の拳が優の体に打ち込まれる。大きな金槌で殴られているのではないかと錯覚するほどの攻撃が襲い掛かってくる。
「そんなことでは、力は使えんぞ。」
道重は拳を打ち込みながら教示する。ならばと、優は右手を突き出し、目を閉じて強く念じる。
「分かっとらんのう。命令や念じるのではない。それはお前自身だろうが。」
道重に蹴飛ばされながら、優は言葉を聞いていた。命令するでもなく、念じるでもなく、どうやってこの力を使えばいいのか。分からないが、分からなければ本当にこのまま命を奪われるのではないかとさえ思ってきた。
「もう一度、言うぞ。お前自身だ。別物ではない!」
優は道重の言葉を反芻する。
(俺自身・・・。俺自身の力を使う。俺の中のものを使う。それは俺を使うということか・・・!?)
膝を付いた状態の優に道重は腰の入った重い拳を突き出した。優は右手の腕をかざしてそれを受け止める。さっきまでなら簡単に吹き飛ばされていた一撃を片手で受け止める。
「ああ、そういうことか。自分の手足を動かすのに命令したり念じたりすることはしないよな。そんなことでは動かねえわな。」
優は何か確信を得た声を出してきた。そして言葉を続ける。
「お前は、もう俺だ!俺はお前だ!お前自身が俺自身だ!」
優は右手を横凪ぎに払う。道重は素早い動きで後方に退避した。優が払った軌跡をたどるように一瞬だけ空間が黒く染まり、すぐに元に戻った。まるで虚無の空間が発生したように何もない黒が現れたように見えた。
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