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虚を突かれた

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香織は障子を勢いよく開けた。
室内は熱気と肌の匂いがした。
沙織が真紀理に腕枕をした状態で枕言葉を交わしているところだった。
二人は香織の侵入にキョトン顔を見せた。

「二人共!すぐに服を来ろ!山尾組が攻めてくるやもしれん」

山尾組と聞いてすぐに沙織は我に返った。

「そうだ!こうしちゃおれん」

「なに?なんなの?」

真紀理はわからない。

「地井頭が斬った河本一家の敵討ちに山尾の連中が来る!真吉!支度せえ」

亜香里が駆け込んで来た。

「あ、あの…やくざ達が外に…」

「くっ…先手で虚を突かれたか。亜香里、真紀理を裏口に案内しろ」

羽織を着た真紀理に亜香里が「こっちへ」
亜香里の後をついていった。
沙織が袴を履いて刀を腰に差した。

「こちとら戦闘態勢整ったぜ。さっそく出迎えてやるか」

香織は玄関の方を一瞥して沙織に言った。

「真紀理と亜香里達と最後の言葉を交わそう」

「なに?」

「山本殿には悪いがここは時間稼ぎをしてもらう」

香織の言ったとおり、山本治三郎は外の騒がしさに呼ばれたように玄関から顔を出した。

「なにごとにござる?」

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