転生者、咲き散らす! 〜勇者家系なのに『花咲かスキル』授かって用無しらしいので、世界ちょっと華やかにしてきます〜

黒片大豆

文字の大きさ
13 / 41

13.名付けてGホイホイ

しおりを挟む
 宿のレストランで、俺たち4人はテーブルを囲い親睦を深めていた。と、聞こえは良いが、俺はだいぶ絶望の縁に立たされていた。

 この宿は、冒険者用に整備されている。どうやら全盛期には、ひっきりなしに冒険者が訪れていたらしいが、別の街道が整備されたため、こちらに来る人は減ったとのこと。

「人が減ると、ゴブリンは増えますからねぇ」
 ナツは、出された芋のフライをモサモサと頬張っていた。
 俺もできることなら、久々の『料理』を味わいたかったが、料理よりも眼の前にある問題が大きすぎて、食欲が湧いてこない。

 あ、ちなみにここの食事代と宿代は、村が出してくれた。タダ飯タダ宿にありつけたのは、嬉しい誤算である。

 しかし、村の人たちの情報では、明日明後日にはまたゴブリンが襲来しそうとのこと。
 今夜来られても万全な作戦を立てておく必要が──。

「ふっ! たかがゴブリン。楽勝さ!」
 チキンレッグに齧り付きながら、ファンダが言い放った。

 すごい。これ程まで『私はこれからゴブリン集団に○されます』って書かれたフラグを振り回すキャラがいようとは。

「ゴブリンは単体よりも、集団が怖いですねぇ」
 そんなファンダに、ナツが横槍をいれた。ナツもナツでさっきから、芋のフライばかり手をつけている。大好物らしい。

「じゃあなんだい……ングング。何か作戦……モグモグ。……っくん。あるのかい?」
 口に物を入れてしゃべるな。はしたない。

「クウさんは、何の術が使えますか?」
 俺は、先ほどから口を開かない彼に意見を求めた。
 固いパンをスープに浸し、柔らかくして食べていたクウが、食事の手を一旦止めた。

「ボクは……炎と風の初期術と、あと閃光フラッシュくらいですね」
「フラッシュ……目眩ましか」
 何かに使えそうだ。などと思うも、それを見透かされたかのような答えが、ナツの口から発せられた。

「ランジェ様、ゴブリンは鼻が利きますから、あまり目潰しは効果無いかもしれません」
「ありゃ」
 流石、ゴブリン退治の経験者である。ナツの意見が一番的確だろうし、それに頼ることになってしまっている。

「ん? まてよ」
 鼻が利く、か……。そういえば『あの時』も、この方法が通じたな。

「なあ、みんな。だったら、こういう作戦はどうだ?」
 俺は、嬉々として自分の作戦を伝えた。


 ***


「十分な大きさだな」
「中で、立ち回りもできますねぇ」

 俺たちは村人に掛け合って、使ってない納屋を紹介してもらった。大きさは十分すぎるほどだった。壁は朽ち柱も腐っていたが、元々、取り壊す予定とのことだったので、なおさら都合がよい。

「この建物の中心に、奴らゴブリンをおびき寄せるのさ……ナツ、お願い」
「はい、ランジェ様」
 ナツは、背負っていた編み籠から果物を取り出した。それはほどよく熟しており、甘い匂いを醸し出していた。

「ただの果物でか?」
 ファンダの疑問は概ね正しい。そこで一工夫だ。

「これらを焼くのさ。炙って匂いを引き立たせ、ゴブリンをおびき寄せ……んで、こいつを、と」
 次に、俺の背負っている籠から、根と土を布で包んだ一株の苗を取り出した。

「蕾? ゴブリンちゃんにプロポーズでもすんのか?」
「ちょっとファンダ……ランジェさん、それは昼寝花ナップスですか?」
「そ。詳しいなクウさん。これをこう、果物の近くに植えておく」

 この花粉には強烈な入眠作用がある。ゴブリンに効果があることは、数日前の夜に実証済みだ。

「いやいやいやいや。何寝ぼけてんだランジェ。そんな都合よく咲くわけけないだろ?」
 ファンダが笑いながら頭を振った。そりゃそうだろう。甘い香りに誘われたゴブリンが集まったタイミングで開花し、そして花粉をばらまくなんて、都合の良い事は起こり得ない。……普通なら。

「大丈夫、それは保証するよ……ほい、開花宣言──咲き誇れ」
 俺は、背中の籠から別の苗を取り出し、ファンダとクウの眼の前で『宣言』を行った。すると『ポンッ!』と小さな音とともに、蕾が瞬時に色鮮やかな花を開かせた。

「へええええええ! すげえ! おもしれぇ!」
「これは……一体どういう……」
「いつ見ても、鮮やかですぅ!」
「ぶっちゃけ、仕組みその他は俺もよくわからん! けど、これで信じてもらえたろ?」
 三者三様の驚き様は、見ているこちらも悪い気分にはならない。
 この花を咲かすだけのスキル。通常はぶっちゃけ手品と大差ないが、今回、この能力がゴブリン討伐の要になる。

「ゴブリンが何匹来ようが、昼寝花ナップスを一気に開花させて花粉の海に沈める!」
 あとは、寝ているゴブリンを一網打尽だ。

 村人の証言では、5~6匹のゴブリンが確認されているとのこと。それくらいの数なら、4人がかりで全部の寝首を掻くくらいできるだろう。

「ま、数が多いなら、納屋に火を放って、閉じ込めるだけさ」
 そのために、取り壊して良い納屋を選んだ。ちょうど、藁草や牧草を集めていた建物のようで、よく燃えそうな干し草が残っていた。

「名付けて……Gホイホイ大作戦!」
 ドヤ顔で作戦名を宣言した俺。ふふん! と鼻息を荒く、パーティ側を望んでみたが……。

「わーぱちぱち」
 話を最後まで聞いていたのは、ナツだけだった。

 クウは、俺の能力で咲いた花を未だに不思議そうに見ていた。
 ファンダに至っては、作戦用の果物をかじっていた。

「おうランジェ! この果物うめぇ! お前農家になれよ!!」
 相当甘く美味かったらしい。凛と目を輝かせ、無邪気に悦んでいた。

「不安しか無い」
 俺の口から、本音が溢れた。



 ****



 今宵の月灯りは、森の中に佇むその女の顔を照らしていた。しかしその女は、キツネ目のお面を身につけていたため、素顔を伺うことは出来なかった。

「さ、お食べ」
 女は、ゴブリンたちに『何か』を食べさせていた。果物の芳香を加えられていたため、ゴブリンたちはそれを貪った。

「ゴフッ……ガハッ!!」
 すると、それを食べたゴブリンたちが一斉に泡を吹いた。急激に苦しみだす個体もいれば、そのまま静かにうつ伏せに倒れたものもいる。

「……どうかしら」
 それを、その女はただ眺めていた。バタバタと倒れるゴブリンたち。
 だが、彼らはゆっくりと起き上がった。目は血走り、口からよだれを垂らし、小さな唸り声をこぼしていた。

「うん、ゴブリンにも効くのね」
 女がゴブリンに食べさせたのは、強烈な気付け薬だった。

「さ、後は適当に暴れて頂戴。村の一つや二つ無くなっても構わないわ」
 いつの間にかその女は、木の上に避難していた。気が高ぶり、狂戦士化したゴブリンたちのターゲットにならないよう、彼らの視角から外れ、森の奥に消えていった。

「ゴフッ、ガホゥ!!」
 森から出た彼らは一斉に、僅かに香る甘い果物の匂いを感知した。
 その狂った集団は、匂いにつられ脇目もふれず、村の外れの納屋に突き進んだのであった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

地味スキル「ためて・放つ」が最強すぎた!~出来損ないはいらん!と追い出したくせに英雄に駆け上がってから戻れと言われても手遅れです~

かくろう
ファンタジー
【ためて・放つ】という地味スキルを一生に一度の儀式で授かってしまった主人公セージ。  そのせいで家から追放され、挙げ句に異母弟から殺されかけてしまう。  しかしあらゆるものを【ためる】でパワフルにできるこのスキルは、最高ランクの冒険者すらかすんでしまうほどのぶっ壊れ能力だった!  命からがら魔物の強襲から脱したセージは、この力を駆使して成り上がっていく事を決意する。  そして命の危機に瀕していた少女リンカニアと出会い、絆を深めていくうちに自分のスキルを共有できる事に気が付いた。 ――これは、世界で類を見ない最強に成り上がっていく主人公と、彼の元へ集まってくる仲間達との物語である。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

チートツール×フールライフ!~女神から貰った能力で勇者選抜されたので頑張ってラスダン前まで来たら勇者にパーティ追放されたので復讐します~

黒片大豆
ファンタジー
「お前、追放な。田舎に帰ってゆっくりしてろ」 女神の信託を受け、勇者のひとりとして迎えられた『アイサック=ベルキッド』。 この日、勇者リーダーにより追放が宣告され、そのゴシップニュースは箝口令解除を待って、世界中にバラまかれることとなった。 『勇者道化師ベルキッド、追放される』 『サック』は田舎への帰り道、野党に襲われる少女『二オーレ』を助け、お礼に施しを受ける。しかしその家族には大きな秘密があり、サックの今後の運命を左右することとなった。二オーレとの出会いにより、新たに『女神への復讐』の選択肢が生まれたサックは、女神へのコンタクト方法を探る旅に目的を変更し、その道中、ゴシップ記事を飛ばした記者や、暗殺者の少女、元勇者の同僚との出会いを重ね、魔王との決戦時に女神が現れることを知る。そして一度は追放された身でありながら、彼は元仲間たちの元へむかう。本気で女神を一発ぶん殴る──ただそれだけのために。

魔境の森に捨てられたけど、最強のテイマーになって生還した~外れギフト【スライムテイム】でスライムを無限に仲間にして成り上がり無双~

むらくも航
ファンタジー
とある少年『アケア』は、ギフトを受ける儀式にて【スライムテイム】を授かる。 だが、不遇とされるテイマー系の上、最弱のスライムの名が入ったギフトなど大外れだと言われた。 結果、父からは勘当され、魔境の森という超危険地帯に送り出されることになる。 しかし、誰もこのギフトの真価を知らなかった。 通常は三匹までしかテイムできないテイマー系だが、アケアはスライムに限っては無限にテイムすることができたのだ。 『最弱も積もれば戦力となる』 そう確信したアケアは、色んなスライムをテイムしていく。 テイマーの特性上、従魔の力や魔法は主にも還元されるため、アケアは青天井に強くなってなっていった。 そうして、やがて魔境の森で最強になったアケアは、様々な地で活躍の機会を得る。 あまりに万能すぎる働きに驚かれるが、決まってアケアはこう答える。 「ただのテイマーです」 対して、人々の反応も決まっていた。 「「「なわけあるかー!」」」 そんなツッコミの声が、今日も世界のどこかで聞こえてくるのだった──。

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

処理中です...