転生者、咲き散らす! 〜勇者家系なのに『花咲かスキル』授かって用無しらしいので、世界ちょっと華やかにしてきます〜

黒片大豆

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37.出番だよ

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 国王の目線は、キストと親父を捉えていた。
 キストは剣を収め膝をつき、頭を垂れた。興奮気味だった親父も、一旦息を落ち着かせたあと、同じように頭を下げた。
 そして俺たちも、それに倣って同じ格好をした。
 なお、怪我をした兵士たちを治癒するナツは、礼節よりも治療を優先していた。ナツらしいといえばナツらしい。

 しかしまあ……見た目はヨボヨボな爺さんなのに、たった一言で、この場の全員を萎縮させた。国王としての威厳と、本人の胆力、そしてカリスマ性が為せる所業だ。

「オーレン! キスト、そしてランジェ! これは一体、どういうことだ!」

 続けて国王が、俺たちに言葉を投げかけた。なお、オーレンっていうのは親父の名前。オーレン=ヴァリヤーズ公のこと。

「……くっ!」
 親父は、答えなかった。代わりに、キストが顔を上げ、返答した。
「国王陛下! 突然の無礼をお許しいただきたい!」
「……返答しだいであるぞ、キストよ! 諸君らは、なんのため『天啓の儀』に現れたのだ!」

 どうも国王様は、ご立腹のようだ。まあ当たり前か。俺たちの無礼もさることながら、ヴァリヤーズ公爵家は、3回も儀式に失敗しているのだ。
 国の未来を担う勇者が現れず、失敗続きの儀式を見せられ、それでいてクーデター紛いなことを起こされてしまえば、仏の顔もなんとやら。

「陛下! 私は、訳あって、実兄ランジェ=ヴァリヤーズを連れ馳せ参じました!」
「公爵を追放された人物が、何用かっ!」
「詳しくは伏せますが……ランジェは、この混乱を解決させる策を持っております!」

 ん? だいぶ大きく出たな……って、俺?! 

「ほう」
「未だ見つからない勇者の所在! ランジェが全て知っております!」
「ちょっちょちょっちょ! 言い過ぎ言い過ぎ!」
 雄弁に語るキストを、流石に止めた。

「何故止める兄貴! 父上含めて『花を明かす』と言っていただろう!」
「『鼻を明かす』だ! 出し抜いて驚かせるの意味!」
「はあ!? 『花を明かす』は、自身の秘密を公開するということだろう!」

 しまった。まさかこんなところで、『異世界の慣用句による齟齬』が発生してしまうとは。
 どうやらこちらの世界の『ハナを明かす』は、『自分の隠し事をさらけ出す』の意味らしい。

「あの時の兄貴の含みっぷりを考えると、つまりは『勇者は自分』ということだろう! ……陛下! 私の実兄、ランジェ=ヴァリヤーズこそ、勇者なのです!」
「勘違いだぁぁ! 違う違う違う!!」

 キストの勘違いで話がさらにとんでもないことに成りかける。国王も怪訝な顔をしているし、俯いていた親父は、いつの間にか顔を上げこちらを睨みつけていた。
 みんなの視線が痛い。期待の眼差しと、疑いの目。

「ちょ、ちょっとまってくれ、大変期待をさせて申し訳ないが、俺は勇者じゃなくって……」
「ああそうさ! あたいが! あたいが真の! 勇者ファン……もごごごごごご」
「黙ってろオマエはぁあぁぁぁぁ!!」

 これ以上に混乱させてたまるか。俺は全力でファンダの頭を押さえて、地面に押し付け黙らせた。
 つーか、なんでお前までこっちに降りて来てんだよ! 

「馬鹿をいうなぁ!! ランジェは、勇者の剣に選ばれなかった!! 戯言をっ!!」
 そんな漫談にしびれを切らした親父が、ブチ切れながら立ち上がった。目を見開き、よだれを垂らし、顔面は真っ赤に染まっていた。その様相は、例えるなら、まるで魔物だ。

「……馬鹿はどっちだ、親父。その通り、俺は勇者じゃねぇよ」
「この愚息がっ! 不届き者がっ! 今ここで叩き伏せてくれるっ!」
 口では物騒なことを語るも、しかし実際は、国王陛下の御膳であるためか、親父が切りかかってくることはなかった。多少は冷静さを取り戻したか。

「もう一度言うぞ親父。俺は勇者じゃなかった。それは紛れもない事実だ……けど、勇者が何処にいるか分かったから、ここに舞い戻ってきたんだ」
「なん……だと!」

 ざわざわ……と、周囲がざわめき始めた。頭に花が咲いた長男が、突然帰ってきて勇者を発見したと宣言したのだから当然か。

「世迷い言を! ならば、その勇者はどこにいるのだ!」
 周囲に唾を撒き散らしながら、半狂乱状態で親父が言う。冷静になったと思ったけど、そうでもなかったらしい。

「言われなくても。すぐにお連れするぜ」

 そして俺は、彼女の方に向かって歩いていった。
 気を失っているのか、地面に顔を突っ伏し、お尻を突き上げたまま微動だにしない彼女……。

 ではなく、その先にいる人物。

「……ふう。傷は塞がりましたぁ」
 その人物は、こんな混沌とした場面であっても、脇目も触れずに兵士たちの傷の治療を行っていた。
 俺は、その彼女の横に立ち、手を差し伸べたのだった。

「さ、出番だよ、ナツ」
「……? ふぇ??」

 今までの会話は、治癒に専念しすぎて聞いていなかったぽい。
 まあ、いいか。ちょっと説明不足でナツには悪いけど──。

「咲いてもらうぜ、ナツ。開花宣言──咲き誇れ!」
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