チートツール×フールライフ!~女神から貰った能力で勇者選抜されたので頑張ってラスダン前まで来たら勇者にパーティ追放されたので復讐します~

黒片大豆

文字の大きさ
63 / 69

最終話 追放勇者、女神をぶん殴る【その6】

しおりを挟む
「いつ頃から、気付いていたの?」
「確証は今の今まで無かった……けど、最初に違和感を覚えたのは、ブロクダートの公園だ。アイスキャンディー食いながら、昔話をしてた時だよ」
 ええ! と、クリエは大げさに驚いた。

「早っ! さすがにそこでは『ボロ』は出していないと思ったんだけどなぁ?」
「『既にシナリオを書いていた』って言って、俺の偽自伝書を見せたろ。その言いぐさが、ずっと気になっていた」
「ウッソ! これのこと!?」

 するとクリエは、何もない空間から一冊の本を呼び出した。
 この空間では、道具師の武器庫ストレージ能力すら使用不可のはずなのに、彼女は易々とそのルールを破った。彼女が本物の女神クリエイターである証左とも言える。

『勇者で道化師、役立たずで大した力もなく追放させられたけど名声だけ利用して田舎で薬屋経営したらBクラスの冒険者にも認められず詐欺がバレて破産しました!』
 ~~道化師アイサック=ベルキッド 認定自伝~~

「今回用意したシナリオの中でも、自信作なのよ、これ。コメディタッチで描かれるアイサックの珍道中!」
 ぺらぺらと、綴じられた本をめくるクリエ。だが、すぐにその本を手品のように消した。

「……大人しく引退してれば、こんなゆるふわ余生スローライフも用意できたのにね」

 ふわり。と、クリエが空に舞った。まるで重力を感じさせない飛び方だった。光る翼等はもう必要ないのだろう。彼女はゆっくりと移動し、そして、魔王の横に付いた。

「今回は試験的に、NPCのAI自由度を最大にしてみたの」
 彼女は優しく、魔王に手を触れた。表面は魔瘴気で覆われているのだが、彼女は全く意に介しなかった。

「そしたら皆で、まあ好き勝手動いてくれちゃって。用意した道筋シナリオ修正、大変だったわ……けど、おかげで想定以上のデータを造れた」
「データ……だと?」
 魔瘴気に体を預け無事な人間を目の当たりにするも、サックはそれにたじろぐことなく彼女の言葉に耳を傾けていた。

「いい質問ね」
 サックの問いに、クリエはさも嬉しそうに答えた。

「Machine-learned
 Artificial intelligence for 
 the Operation of 
 Urgency system。
 頭文字をとって、MAOU……魔王システム。私の最高傑作よ」
 彼女は『魔王システム』と呼ばれたそれを撫で、そして顔を近づけ、頬ずりを始めた。その顔は法悦としていた。

「これを完成させるのに、負の感情……特に人間の、死中求活しちゅうきゅうかつの感情が足らなかったの。リアルこっちでの検体が少なすぎたのよ」
 死中求活。『死中に活を求める』。つまり、死の間際に迫られながらも『生きたい』と望む思いのことである。

「その中でも、いうなれば『火事場の馬鹿力』の発現。その条件を魔王に学習させたかったの……だから『擬似的に』世界構築して、追い込まれた人類の力を……」
「……疑似的って、どういう意味だよ」
 するとサックが口を開き、彼女の言葉を遮った。彼女の言葉の半分は理解できていなかったが、聞き捨てならない言葉に、彼は口を開いたのだった。

「そのままの意味よ。疑似的。そうね、分かりやすく言えば……『まがい物』」
 クリエは懇切丁寧に、分かりやすい言葉に言い換えた。しかしそれは、彼の神経を逆撫でするのに十分だった。

「ざけんじゃねぇっ!!!」
「あら、ふざけてないわ。大真面目よ、私」
 鬼気迫るサックとは裏腹に、さも当たり前のように、クリエはキョトンとした。

「あなたが勇者として旅立ったのも、その後の追放生活も全部、うそ、偽り、捏造、虚言、仮初かりそめ」
「全て、嘘な訳ないだろ!」
「思うのはご自由に。でも、これが真実よ」
 だんだんと熱くなるサックに反して、クリエの顔は冷徹なものになっていった。まるで、壊れたゼンマイおもちゃを見つめるような顔だった。

「この世界シナリオは、クリエイターが作ったんだもの」
「例え、作られた命であったとしても……女神の創作物であったとしてもっ!」

 サックは『ムーンエクリプス』を両手で携え、クリエに飛び掛かった。

「勇者としての旅立ち、その後の追放生活も! サザンカと出会ったことも! 彼女との約束も! 別れも! あの時の額の冷たさも! 抱いた時の温もりも! 一緒に食ったパンケーキの味も! ヒマワリの未来も!!」

 斧を握る手に力を込め、振り上げ、斧に全力で力を注いだ。球体の魔王ごと真っ二つせんとするほどの勢いだった。

「全部が全部、てめえの『紛い物』だなんて、言わせねぇ!!」
「はい、ざんねーん」

 サックの振り下ろした斧は、魔王に触れることすら叶わなかった。
 サックは能力の解放を試みるも、斧に全く力が行きわたらなかった。
 結果、魔王の目玉から発せられた衝撃波がサックを飲み込み、遥か彼方まで吹き飛ばされたのだった。

「わー、飛んだわねぇ。おーい、生きてる?」
「……がはっ! ごほっ!」
「おお、流石勇者。丈夫ね。でも……回復できないでしょ? ごめんなさいね、あたり一面を『アイテム禁止』ルールに変更したわ」

 魔王の衝撃波は、サックを易々と地面にたたきつけた。
 サックの反撃スキルオートポーションは発動したのだが、いくらポーションを浴びても、サックの傷は癒えなかった。

(回復しない……チート能力ってレベルじゃねぇな、クソ女神)
 負った怪我は治らなかったが、サックは何とかゆっくり立ち上がった。そして自らの足で、クリエたちに近づいていった。足をくじいたためか、歩くたびに激痛が襲う。

 それを見たクリエは、感心した表情とともに、サックに拍手を送った。
「すばらしい! その力が欲しいの! 死中求活の馬鹿力!」

 クリエは、魔王を連れてサックに近づいた。空中移動という速さを越えた、座標軸を転換させ移動する、瞬間移動の類だった。

「いろいろ、ズルいな、クソ女神」
女神クリエイターですもの……でもね、いまは貴方のデータが欲しいわ」

 クリエが再度、瞬時に移動した。
 サックが気がついたときには、魔王の球体の上にちょこんと陣取り、足を組んで座っていた。

「しかし今回は……手を焼かせてくれたわね、特に……」
 魔王に腰かけ、女神が微笑む。この世界を構築したという女神クリエイターは、この世界で発生した『イレギュラー』について語りだした。

「ボッサとアイサックあんた。よくもまあ、面倒なことをしてくれて……けど、貴重なデータも収集できたわ、ありがとう」

 女神は笑顔でサックを見やった。しかしその笑顔は、クリエが冗談を口にしたときに見せる、あの笑顔だった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

無職が最強の万能職でした!?〜俺のスローライフはどこ行った!?〜

あーもんど
ファンタジー
不幸体質持ちの若林音羽はある日の帰り道、自他共に認める陽キャのクラスメイト 朝日翔陽の異世界召喚に巻き込まれた。目を開ければ、そこは歩道ではなく建物の中。それもかなり豪華な内装をした空間だ。音羽がこの場で真っ先に抱いた感想は『テンプレだな』と言う、この一言だけ。異世界ファンタジーものの小説を読み漁っていた音羽にとって、異世界召喚先が煌びやかな王宮内────もっと言うと謁見の間であることはテンプレの一つだった。 その後、王様の命令ですぐにステータスを確認した音羽と朝日。勇者はもちろん朝日だ。何故なら、あの魔法陣は朝日を呼ぶために作られたものだから。言うならば音羽はおまけだ。音羽は朝日が勇者であることに大して驚きもせず、自分のステータスを確認する。『もしかしたら、想像を絶するようなステータスが現れるかもしれない』と淡い期待を胸に抱きながら····。そんな音羽の淡い期待を打ち砕くのにそう時間は掛からなかった。表示されたステータスに示された職業はまさかの“無職”。これでは勇者のサポーター要員にもなれない。装備品やら王家の家紋が入ったブローチやらを渡されて見事王城から厄介払いされた音羽は絶望に打ちひしがれていた。だって、無職ではチートスキルでもない限り異世界生活を謳歌することは出来ないのだから····。無職は『何も出来ない』『何にもなれない』雑魚職業だと決めつけていた音羽だったが、あることをきっかけに無職が最強の万能職だと判明して!? チートスキルと最強の万能職を用いて、音羽は今日も今日とて異世界無双! ※カクヨム、小説家になろう様でも掲載中

外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~

海道一人
ファンタジー
俺は地球という異世界に転移し、六年後に元の世界へと戻ってきた。 地球は魔法が使えないかわりに科学という知識が発展していた。 俺が元の世界に戻ってきた時に身につけた特殊スキルはよりにもよって一番不人気の土属性だった。 だけど悔しくはない。 何故なら地球にいた六年間の間に身につけた知識がある。 そしてあらゆる物質を操れる土属性こそが最強だと知っているからだ。 ひょんなことから小さな村を襲ってきた山賊を土属性の力と地球の知識で討伐した俺はフィルド王国の調査隊長をしているアマーリアという女騎士と知り合うことになった。 アマーリアの協力もあってフィルド王国の首都ゴルドで暮らせるようになった俺は王国の陰で蠢く陰謀に巻き込まれていく。 フィルド王国を守るための俺の戦いが始まろうとしていた。 ※この小説は小説家になろうとカクヨムにも投稿しています

アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。 ふとした事でスキルが発動。  使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。 ⭐︎注意⭐︎ 女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~

夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。 雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。 女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。 異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。 調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。 そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。 ※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。 ※サブタイトル追加しました。

地味スキル「ためて・放つ」が最強すぎた!~出来損ないはいらん!と追い出したくせに英雄に駆け上がってから戻れと言われても手遅れです~

かくろう
ファンタジー
【ためて・放つ】という地味スキルを一生に一度の儀式で授かってしまった主人公セージ。  そのせいで家から追放され、挙げ句に異母弟から殺されかけてしまう。  しかしあらゆるものを【ためる】でパワフルにできるこのスキルは、最高ランクの冒険者すらかすんでしまうほどのぶっ壊れ能力だった!  命からがら魔物の強襲から脱したセージは、この力を駆使して成り上がっていく事を決意する。  そして命の危機に瀕していた少女リンカニアと出会い、絆を深めていくうちに自分のスキルを共有できる事に気が付いた。 ――これは、世界で類を見ない最強に成り上がっていく主人公と、彼の元へ集まってくる仲間達との物語である。

スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~

みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった! 無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。 追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

空月そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

処理中です...