チートツール×フールライフ!~女神から貰った能力で勇者選抜されたので頑張ってラスダン前まで来たら勇者にパーティ追放されたので復讐します~

黒片大豆

文字の大きさ
69 / 69

最終話【エピローグ2】

しおりを挟む
 そこを覗けば、底は無し。
 ひとたびそれに落ちれば、ただただ落ち続ける。

「見事に割れてるな……もう少し街に近かったら危なかった」
 周囲をうっそうとした森に囲まれた場所で、それを見つけた。

 ハクノ区の郊外の森は良質な狩り場として、レンジャーや狩人が多く出入りする。そのため早急な復旧が必要だ。
 この『裂け目』に人が取り込まれたら、まず生きて帰ることはできない。

 昨日の荒天で、崖の一部が地滑りを起こして崩落していたのだ。それまで草木や岩石、他のパーツに隠されていた場所──地面と地面の境目に、それは現れていた。

「こういう細かいところの作り込みが、ホント甘すぎんだよな……」

 オレは、目の前に光のパネルを呼び出した。光り輝く画面に描かれた図形の中から、その場所に近い『岩』と『地面』のパーツを選び出した。

「よっと、よし嵌った」
 それらのパーツを指でスワイプし、欠損個所に落とし込んだ。あとはテクスチャを伸ばし、境界面が完全に繋がるよう、伸縮を繰り返した。

 穴は完全に埋まった。『データの奈落』とも言えるその隙間が、ちゃんと埋まっているか、実際にオレは体を擦り付けてみた。
 服は土で汚れるも、そこから『すり抜ける』『落ちる』といったことは発生しなかった。

「まだまだ、バグ修正フィックスが終わる気がしねぇ」

 オレは4年前。どうやら女神を倒してしまったらしい。
 女神を失った世界は、崩壊のカウントダウンを始めていた。これを止めるには、誰かが新たな『管理者』になるしかなかったのだ。世界を制御する道具ツールを理解できる誰かが……つまり、適任は一人しかいなかった。

 承認ボタンを押したその刹那、頭に流れ込む世界のルールと構成。そしてそれらを自在に操作するすべ
 結果的に、オレは思い掛けず、世界を意のままに扱うことができる【チートツール】を手にすることになった。

 この力を使えば、不可能なことなどない。
 自由に大地を隆起させ、海を干上がらせることも。
 人間の思考を操ることもできる。金も名誉も思いのままだ。
 人の命も、指一本で支配できる。生かすも殺すも、新たに命をつくるのも、人間を消失させるのも、片手間で出来てしまう。

 その気になれば、亡くなった人を蘇らせることも可能だ。当時の記憶データは残っているため、それをコピペするだけだ。
 魔物に殺された命も、共に戦った勇者たちも、滅んだ街の人間も。

 そして……彼女を現世に呼び戻すことも。

(女神の力……それを使わない愚か者め、なんて思われるかもだけど……)

 けど、オレはその力を自分の利益に使うことは無い。
 こうやって、世界に残る『バグ』を修正するためだけに留めている。

 過去は、もう過ぎたのだ。
 世界は、未来に向かって進んでいる。
 未来は、今を生きる人々の手で作っていくべきだ。

 もう、女神が用意した道筋シナリオなど存在しないのだから。



「ねーおとーさん!」
 ちょっと感傷的になってしまったオレに、カメリアが声をかけた。
 僅かに目を話していた隙に、彼女は崖を上り、何かと戯れていたようだ。

「みてみて! 狩ったよ!  今夜は焼き肉だね!」
「……うーん……」
 オレは頭を抱えてしまった。
 そこには、野生のイノシシワイルドボアがいた、いや、『あった』が正しい文法か。
 それは綺麗に頸動脈を裂かれ、地面は血で濡れていた。しかし、サバイバル用のナイフを携えたカメリアは、返り血すら浴びていなかった。

 ……うーん。
 記憶は消しているのは確かなのだが、いわゆる、体が覚えているようなのだ。
 日常生活の中でもその傾向はみられ、咄嗟の際に出る動きは、暗殺者のそれだった。

(5歳の動きじゃないんだよ……困ったなぁ)

 ふと、光のパネルを見やった。
 管理者権限それを使えば、記憶操作に行動制限も容易に可能だ。性格や年齢でさえ変更することもできる。

 ……いやいやいやいやいやいや。
 ついさっき、使わないと決意したやん、自分。

 おれは頭を振り、邪な考えを消し去った。

 これを使うのは、本当に最後の手段。
 手に終えないレベルで問題になるようなら……おいおい、ね。

「さ、帰ろうかカメリア」
 そんな事を思いながら、オレはその野生のイノシシワイルドボアを転送させた。誤解のないように説明するが、これは管理者能力ではなく、道具師もとい荷物持ちポーター拡充収納ストレージ術である。今は自宅の地下倉庫に繋げている。

「うーん……」
 近くの沢で手を洗っていた彼女は、帰宅するのに不満のようだ。折角の遠出(転送術で一瞬だが)なので、彼女はどこかで遊びたいといったところか。

 現在地は、ビルガドのハクノ区にほど近い。ここから徒歩で森を抜けても、街の入り口まで30分もかからないだろう。

 そんなことを考えていると、オレも、ジャクレイに挨拶してやろうかと思い始めた。
 急に現れたら、奴はどんな顔をするだろう。新婚ホヤホヤな場所に、あえて土足で邪魔するのも悪くない。

「そうだな、街に遊びにいくか!」
「……うん!」
 カメリアは明るい声で返事をし、太陽のような笑顔を見せた。成長したカメリアの笑顔は、時折、彼女の顔と重なるときがある。

 傾き始めた太陽の光を頼りに方角を定め、オレは彼女の手を取り歩み始めた。
 能力を使わず、一歩一歩、しっかりと地面に足を付け、踏みしめ、確実に前に進み始めた。

「そういえば、お腹空いたな」
「うん、わたし、お腹ペコペコだよ!」
 昼飯のタイミングを逃していたことを思い出した。来客対応と緊急警報で、すっかり忘れていたのだ。
 頬を膨らましご立腹な彼女を宥めながら街に近づく。着いたらまずは、遅い昼食を頂こう。

「カメリア、何か食べたいものあるか?」
 今日は彼女のリクエストを優先しよう。意見を振られた彼女は「いいの!?」と喜び、うーん、と悩み始めた。が、答えはすぐに返ってきた。

 カメリアが最高の笑顔で出した提案に、オレも満面の笑みで答えたのだった。

「んとね……おっきいパフェと、あとパンケーキがいい!!」



 ~~~ Fin ~~~
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と甘々ライフ~

月城 友麻
ファンタジー
『お前みたいな無能、最初から要らなかった』 恋人に裏切られ、仲間に陥れられ、家族に見捨てられた。 戦闘力ゼロの鑑定士レオンは、ある日全てを失った――――。 だが、絶望の底で覚醒したのは――未来が視える神スキル【運命鑑定】 導かれるまま向かった路地裏で出会ったのは、世界に見捨てられた四人の少女たち。 「……あんたも、どうせ私を利用するんでしょ」 「誰も本当の私なんて見てくれない」 「私の力は……人を傷つけるだけ」 「ボクは、誰かの『商品』なんかじゃない」 傷だらけで、誰にも才能を認められず、絶望していた彼女たち。 しかしレオンの【運命鑑定】は見抜いていた。 ――彼女たちの潜在能力は、全員SSS級。 「君たちを、大陸最強にプロデュースする」 「「「「……はぁ!?」」」」 落ちこぼれ軍師と、訳あり美少女たちの逆転劇が始まる。 俺を捨てた奴らが土下座してきても――もう遅い。 ◆爽快ざまぁ×美少女育成×成り上がりファンタジー、ここに開幕!

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  お気に入り・感想、宜しくお願いします。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

処理中です...