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【第二章 他国との交流編】

お母さん! 巨人の悩み!

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「おーい! そろそろ、昼休憩にしよう」

「... ...」
「... ...」
「... ...」

 羽をもがれた天使のように作業員からは正気が感じられず、当然に俺への返答もない。

「花島。ちょっとちょっと」

 状況を把握してか、気配りができるホワイトが手招きをする。
 そして、ホワイトは幼子に話しかけるように目線を落として俺に話しかけ。

「花島。ヴァニアルちゃんを戻した方がいいんじゃない? みんな、ヤル気を失って死にかけのスライムみたいだよ」

 周りを見渡すと確かにみんなドロッとし、今にも溶け出しそう。
 美少女という存在がいなくなっただけでこれ程の効果があるとは。

「まぁ、作戦は練ってある。しかしあれだな、ホワイトはヴァニアルに嫉妬しないのか?」

 ゴーレム幼女は嫉妬凄かったし。

「うーん。嫉妬ってなに?」

 ホワイトは口に指を当て、アホっぽい質問を俺にする。

「えー、そこから、ほれ、何か好きな人が自分とは違う女の子と喋ったりしているとヤキモキしたり、今までチヤホヤしてた連中が別の子に乗り換えたりしたらイラっとしない?」

「うーん。あたし、好きな人とか出来た事ないからなー。好きな人出来るってどういう感覚なの?」

「どういう感覚? そりゃ、その人の事考えると胸が締め付けられるとか一般的に言えばそんな感じだな。因みに俺はドMだから好きな子に蔑まれたり、暴力振られたいって思うぞ。参考になるか分からんが」

「うーん。よくわかんないんだけど」

 一応、ギャグを言ったつもりだったのだが、それが伝わらなかったのかホワイトはサラリと流す。

「じゃあさ、ホワイトは俺をどういう風に思ってるんだ?」

「どういう? うーん。小さくて可愛いなって思うよ」

 小さくて可愛い?
 こいつ、俺の事を小動物だと思ってんのか?
 だったら、寝ている時に布団の中に入られても文句言うなよ。

「ほう。シルフやゴーレム幼女は?」

「シルフ様は神様みたいな存在で、ゴーレムちゃんは何か小さいのに強いなって思うよ」

「なるほど。恋愛的な要素があるとすると俺に思っている感情が近い気がするぞ」

 自分で言って、あまりにも脈略もない。
 と思ったが、ホワイトは本当に恋愛感情が分からないのか、俺の話を真に受けてしまう。

「えー。そうなの? じゃあ、あたし、花島の事好きなのかな?」

 ホワイトは好きという言葉を口にはしてはいるが、目線を避けることも、頬を赤らめるといった好きな人相手だとやってしまうようなテンプレ動作をする事はなく、淡々と会話をしている。

「... ...いや、知らないけど。時と場合によっては好きになる要素はあるんじゃない? あとはフラグをいかに立てるかだな」

「フラグを立てるってどうするの?」

 なんか、こいつ、凄い絡んでくるな... ...。
 俺が冗談で言ってる事にもツッコミも入れないし。

「フラグの立て方は今度教えてやる。とりあえず、お前は俺を好きになるように毎晩俺の事を考えろ。俺はこの世界でハーレム作りたいから好いてくれる女を増やしたいんだ」

「何か強引過ぎない?」

 そこはツッコムのか。
 どうもやりにくいな。

「恋愛というのは時に強引な事も必要だからな」

「うーん。分かった。努力するよ」

 ホワイトは良い奴だ。
 この国で一番まともな性格だし、性根も腐ってない。
 何よりも身を徹して魔法少女達の魔法から俺を守ってくれ、仲間の為なら命を投げ出す事が出来る人格者でもある。

 しかし、この中で一番天然だ。
 抜けているという表現がぴったりな巨人でもある。

 初めの頃はからかうのが楽しかったが、今では楽しいとか嬉しいとかの感情はなく、天然のホワイトをイジるのが作業的になってしまっているのは申し訳ないとは思っている。

『花島! 準備が出来たみそ』

 ゴーレム幼女から準備オーケーの言葉が脳内に響く。
 いや、お前、ナチュラルに俺の能力コピーしてるんじゃないよ!

 とゴーレムという種族の魔法適正の高さに驚かされたのと同時に主人公としての俺の個性が早々に潰されたことに若干ショックを受けた。
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