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アンデスの悪魔
第110話「逸話へすがる者」
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-パナマ湾-
16世紀初頭、南アメリカ大陸ではなく
中南米の征服に従事していた者たちもいた。
その中の1人にペドロ・パントーハ・デ・ラ・セルダがという者がいた。
彼は、カリブ海のグレナダ、サンタ・マルタなど数々の島での征服に従軍し若いながらも経験豊富な軍人であった。
パントーハは、
海と空が美しいオレンジ色に染まったパナマ湾を眺めていた。
そして隣で共に佇む同い年の青年に話しかけた。
「ガブリエル、本当に説得に行くのか?」
「パントーハ、忠告はありがたいが私の意思は変わらない。
皆はカルバハル様の事を誤解している。」
彼の名はガブリエル・デ・ビジャグラと言い、名門ビシャグラ家の出あり、《双璧のフランシスコ》と呼ばれるフランシスコ・デ・ビジャグランの従甥にあたる。
パントーハ「しかし、ここだけの話
カルバハル様に関しては良い噂を聞かぬ。」
ガブリエル「悪い噂だけではない。
先のチュパスの戦いでの話を知ってるだろ?」
フランシスコ・デ・カルバハルには豪快な逸話がある。
それはディエゴ・アルマグロの息子エル・モソとバカ・デ・カストロが激突したチュパスの戦い(※注1)の時であった。
カルバハルは寝る時ですら甲冑を着込んでいたと言われおり、
その様な人物が一度だけ衝撃的な場面で甲冑を脱いだ。
強力な砲撃部隊を前に、
兵達が臆病風に吹かれてる中、
自身の防具を脱ぎ捨て先頭に立ち檄を飛ばしたという話である。
その時「スペイン人よ、恥を知れ。ワシはお前たちの誰よりも敵の標的になる!」と叫び、
矢面に立ち兵達を鼓舞し、勝利に貢献した。
ガブリエル「あの様な自己犠牲が出来る方が、
噂通り非人道的な人間であるはずがないと私は信じてる。」
パントーハ「確かに、その様な話もあるが、
狡猾な戦上手だとも聞いている。
その様な行動も計算の一つじゃないか?」
「そう言う声もあるだろう。
しかし、現に私は一度お会いした事がある。
その様な方には見えなかった。」
ガブリエルはカルバハルの好々爺の様な顔を思い出しながら言った。
「そこまで言うのであれば私は止めはせぬ。
ただ、私からの願いだ。
これを持っていってくれ。」
パントーハは、先端が独特の形をした細い鉄製の棒を手渡した。
ガブリエル「これは?!
フォークか何かか?」
パントーハ「いや笑
これはどんな錠前も開けれる道具だ、念の為。」
ガブリエル「しかし、その様に疑る姿勢で
向かうのも気が引ける。」
パントーハ「いや、これはカルバハル様に対してではない。
あくまで道中の護身用にと思ってな!」
ガブリエル「そういう事ではあれば快く頂く。」
ガブリエルたちの元へ船が到着した。
ガブリエル「それでは行ってまいる!」
2人は手を振り合い、ガブリエルは船に乗り込んだ。
パントーハ(ガブリエルは親友であったバカとの一件依頼、人を信じる事に期待を求めている様に見える。無事を祈ってるぞ・・)
※注1)1542年9月16日にクスコ郊外のチュパスで起こったディエゴ・アルマグロ・エル・モソとカストロ率いる政府軍の戦い。エルモソはこの戦いに敗れ、再起を図ったものの逮捕されて、父が殺された物と同じ処刑台で斬首された。
16世紀初頭、南アメリカ大陸ではなく
中南米の征服に従事していた者たちもいた。
その中の1人にペドロ・パントーハ・デ・ラ・セルダがという者がいた。
彼は、カリブ海のグレナダ、サンタ・マルタなど数々の島での征服に従軍し若いながらも経験豊富な軍人であった。
パントーハは、
海と空が美しいオレンジ色に染まったパナマ湾を眺めていた。
そして隣で共に佇む同い年の青年に話しかけた。
「ガブリエル、本当に説得に行くのか?」
「パントーハ、忠告はありがたいが私の意思は変わらない。
皆はカルバハル様の事を誤解している。」
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パントーハ「しかし、ここだけの話
カルバハル様に関しては良い噂を聞かぬ。」
ガブリエル「悪い噂だけではない。
先のチュパスの戦いでの話を知ってるだろ?」
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強力な砲撃部隊を前に、
兵達が臆病風に吹かれてる中、
自身の防具を脱ぎ捨て先頭に立ち檄を飛ばしたという話である。
その時「スペイン人よ、恥を知れ。ワシはお前たちの誰よりも敵の標的になる!」と叫び、
矢面に立ち兵達を鼓舞し、勝利に貢献した。
ガブリエル「あの様な自己犠牲が出来る方が、
噂通り非人道的な人間であるはずがないと私は信じてる。」
パントーハ「確かに、その様な話もあるが、
狡猾な戦上手だとも聞いている。
その様な行動も計算の一つじゃないか?」
「そう言う声もあるだろう。
しかし、現に私は一度お会いした事がある。
その様な方には見えなかった。」
ガブリエルはカルバハルの好々爺の様な顔を思い出しながら言った。
「そこまで言うのであれば私は止めはせぬ。
ただ、私からの願いだ。
これを持っていってくれ。」
パントーハは、先端が独特の形をした細い鉄製の棒を手渡した。
ガブリエル「これは?!
フォークか何かか?」
パントーハ「いや笑
これはどんな錠前も開けれる道具だ、念の為。」
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