【アラウコの叫び 】第3巻/16世紀の南米史

ヘロヘロデス

文字の大きさ
37 / 59
アンデスの悪魔

第110話「逸話へすがる者」

しおりを挟む
-パナマ湾-
16世紀初頭、南アメリカ大陸ではなく
中南米の征服に従事していた者たちもいた。

その中の1人にペドロ・パントーハ・デ・ラ・セルダがという者がいた。
彼は、カリブ海のグレナダ、サンタ・マルタなど数々の島での征服に従軍し若いながらも経験豊富な軍人であった。

パントーハは、
海と空が美しいオレンジ色に染まったパナマ湾を眺めていた。
そして隣で共に佇む同い年の青年に話しかけた。
「ガブリエル、本当に説得に行くのか?」

「パントーハ、忠告はありがたいが私の意思は変わらない。
皆はカルバハル様の事を誤解している。」
彼の名はガブリエル・デ・ビジャグラと言い、名門ビシャグラ家の出あり、《双璧のフランシスコ》と呼ばれるフランシスコ・デ・ビジャグランの従甥にあたる。

パントーハ「しかし、ここだけの話
カルバハル様に関しては良い噂を聞かぬ。」

ガブリエル「悪い噂だけではない。
先のチュパスの戦いでの話を知ってるだろ?」

フランシスコ・デ・カルバハルには豪快な逸話がある。

それはディエゴ・アルマグロの息子エル・モソとバカ・デ・カストロが激突したチュパスの戦い(※注1)の時であった。

カルバハルは寝る時ですら甲冑を着込んでいたと言われおり、
その様な人物が一度だけ衝撃的な場面で甲冑を脱いだ。

強力な砲撃部隊を前に、
兵達が臆病風に吹かれてる中、
自身の防具を脱ぎ捨て先頭に立ち檄を飛ばしたという話である。

その時「スペイン人よ、恥を知れ。ワシはお前たちの誰よりも敵の標的になる!」と叫び、

矢面に立ち兵達を鼓舞し、勝利に貢献した。

ガブリエル「あの様な自己犠牲が出来る方が、
噂通り非人道的な人間であるはずがないと私は信じてる。」

パントーハ「確かに、その様な話もあるが、
狡猾な戦上手だとも聞いている。
その様な行動も計算の一つじゃないか?」

「そう言う声もあるだろう。
しかし、現に私は一度お会いした事がある。
その様な方には見えなかった。」
ガブリエルはカルバハルの好々爺の様な顔を思い出しながら言った。

「そこまで言うのであれば私は止めはせぬ。
ただ、私からの願いだ。
これを持っていってくれ。」
パントーハは、先端が独特の形をした細い鉄製の棒を手渡した。

ガブリエル「これは?!
フォークか何かか?」

パントーハ「いや笑
これはどんな錠前も開けれる道具だ、念の為。」

ガブリエル「しかし、その様に疑る姿勢で
向かうのも気が引ける。」

パントーハ「いや、これはカルバハル様に対してではない。
あくまで道中の護身用にと思ってな!」

ガブリエル「そういう事ではあれば快く頂く。」

ガブリエルたちの元へ船が到着した。

ガブリエル「それでは行ってまいる!」

2人は手を振り合い、ガブリエルは船に乗り込んだ。

パントーハ(ガブリエルは親友であったバカとの一件依頼、人を信じる事に期待を求めている様に見える。無事を祈ってるぞ・・)



※注1)1542年9月16日にクスコ郊外のチュパスで起こったディエゴ・アルマグロ・エル・モソとカストロ率いる政府軍の戦い。エルモソはこの戦いに敗れ、再起を図ったものの逮捕されて、父が殺された物と同じ処刑台で斬首された。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【アラウコの叫び 】第1巻/16世紀の南米史

ヘロヘロデス
歴史・時代
【毎日07:20投稿】 1500年以降から300年に渡り繰り広げられた「アラウコ戦争」を題材にした物語です。 マプチェ族とスペイン勢力との激突だけでなく、 スペイン勢力内部での覇権争い、 そしてインカ帝国と複雑に様々な勢力が絡み合っていきます。 ※ 現地の友人からの情報や様々な文献を元に史実に基づいて描かれている部分もあれば、 フィクションも混在しています。 また動画制作などを視野に入れてる為、脚本として使いやすい様に、基本は会話形式で書いています。 HPでは人物紹介や年表等、最新話を先行公開しています。 公式HP:アラウコの叫び youtubeチャンネル名:ヘロヘロデス insta:herohero_agency tiktok:herohero_agency

【アラウコの叫び 】第2巻/16世紀の南米史

ヘロヘロデス
歴史・時代
【毎日07:20投稿】 動画制作などを視野に入れてる為、脚本として使いやすい様に、基本は会話形式で書いています。 1500年以降から300年に渡り繰り広げられた「アラウコ戦争」を題材にした物語です。 マプチェ族とスペイン勢力との激突だけでなく、 スペイン勢力内部での覇権争い、 そしてインカ帝国と複雑に様々な勢力が絡み合っていきます。 ※ 現地の友人からの情報や様々な文献を元に史実に基づいて描かれている部分もあれば、 フィクションも混在しています。 HPでは人物紹介や年表等、最新話を先行公開しています。 公式HP:アラウコの叫び youtubeチャンネル名:ヘロヘロデス insta:herohero_agency tiktok:herohero_agency

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...