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第二章 第二節 電幽霊(サイバー・ゴースト)戦
第211話 それは人間と呼ぶのがはばかられるような異形
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それは気軽に『人間』と呼ぶのがはばかられるような姿形をしていた。
「ちょっとぉ、幽霊って……あんな気色わるい化け物なの?」
アスカが嫌悪感あふれる声色で叫んだ。
「いや、私もはじめて出会うタイプの電幽霊だ」
今、出現した電幽霊を目のあたりにしてユウキは思わず声をあげた。電幽空間に潜った経験が何度もあるとはいえ、このような姿をしている霊は初めてみる。
人の意識が具現化したものでありながら、およそ人間の形をしているとは言えなかった。
首と頭の境目がないようなずんぐりとした体駆の容姿は、まるでジュゴンかセイウチに足がはえて、前傾姿勢で二足歩行しているようであった。のっぺりとした顔には、ただ切り込みが入っただけのような目と口があるだけだったが、時折、真赤な舌がのぞいて、その不気味さが極立った。
だがなによりも醜いのは、背中から生えたひょろ長い蔓だった。まるで粘菌に侵されて胞子体を生やしているようで、その先端にある瘤はあきらかに人間の顔だった。
それが壊れた壁の影からわらわらと現れた。数十体はいるだろうか。
「おぞましいな」
ユウキはおもわず素直に第一印象を口にした。そんな化物にあたりを囲まれていてはいい気がしない。自分のうしろを見ると、クララとアスカはおびえている様子をしていた。
レイはまるでひと事のようにただ眺めたまま言った。
「ユウキ、こいつらなの。ドラゴンズ・ボールを奪ったのは?」
「レイ君、残念だが、かれらはただの自縛霊だよ。数世紀もの間ずっとこの階層に巣くって、あたらしい魂が潜ってくるのを待ってたんだろう」
「待ってるって、あたしたちのこと?」
「アスカ、心配ない。見た目は気持ち悪いけどザコだ。スライムみたいなもんだと思えばいい」
ヤマトが一歩前に進みでながら言った。
「この電幽霊、倒すのにはどうすればいい?」
レイの質問に、ヤマトがユウキのほうへ顔をむけて訊いた。
「ユウキ、きみがこの幽霊どもを始末してみせてくれ」
「タケル君、うれしいね。わたしに切り込み隊長をまかせてくれるのかい」
「あたりまえじゃないか。ユウキ、きみはぼくの『盾』だろ」
ユウキは胸元に手をやり、かしこまってみせた。だが、こころのなかは疑心が渦巻いていた。ヤマトのそのことばの真意がわからなかった。
ヤマト・タケルはわたしにどんな踏み絵を踏ませようとしている?。
踏め、といいながらも、踏んではいけないものかもしれない。それとも思いっきり踏まねばならないものか……。
「ユウキ、ほかのみんなに、この世界のルールを説明したい。ぼくの言う通り動いてくれないか」
ユウキはヤマトの真意がまだ掴みかねていたが、余裕の笑みを満面に浮かべた。試そうとしているのはわたしの実力か、それとも忠誠心か……。
「もちろんだ。なんなりと申し付けてくれたまえ」
「ちょっとぉ、幽霊って……あんな気色わるい化け物なの?」
アスカが嫌悪感あふれる声色で叫んだ。
「いや、私もはじめて出会うタイプの電幽霊だ」
今、出現した電幽霊を目のあたりにしてユウキは思わず声をあげた。電幽空間に潜った経験が何度もあるとはいえ、このような姿をしている霊は初めてみる。
人の意識が具現化したものでありながら、およそ人間の形をしているとは言えなかった。
首と頭の境目がないようなずんぐりとした体駆の容姿は、まるでジュゴンかセイウチに足がはえて、前傾姿勢で二足歩行しているようであった。のっぺりとした顔には、ただ切り込みが入っただけのような目と口があるだけだったが、時折、真赤な舌がのぞいて、その不気味さが極立った。
だがなによりも醜いのは、背中から生えたひょろ長い蔓だった。まるで粘菌に侵されて胞子体を生やしているようで、その先端にある瘤はあきらかに人間の顔だった。
それが壊れた壁の影からわらわらと現れた。数十体はいるだろうか。
「おぞましいな」
ユウキはおもわず素直に第一印象を口にした。そんな化物にあたりを囲まれていてはいい気がしない。自分のうしろを見ると、クララとアスカはおびえている様子をしていた。
レイはまるでひと事のようにただ眺めたまま言った。
「ユウキ、こいつらなの。ドラゴンズ・ボールを奪ったのは?」
「レイ君、残念だが、かれらはただの自縛霊だよ。数世紀もの間ずっとこの階層に巣くって、あたらしい魂が潜ってくるのを待ってたんだろう」
「待ってるって、あたしたちのこと?」
「アスカ、心配ない。見た目は気持ち悪いけどザコだ。スライムみたいなもんだと思えばいい」
ヤマトが一歩前に進みでながら言った。
「この電幽霊、倒すのにはどうすればいい?」
レイの質問に、ヤマトがユウキのほうへ顔をむけて訊いた。
「ユウキ、きみがこの幽霊どもを始末してみせてくれ」
「タケル君、うれしいね。わたしに切り込み隊長をまかせてくれるのかい」
「あたりまえじゃないか。ユウキ、きみはぼくの『盾』だろ」
ユウキは胸元に手をやり、かしこまってみせた。だが、こころのなかは疑心が渦巻いていた。ヤマトのそのことばの真意がわからなかった。
ヤマト・タケルはわたしにどんな踏み絵を踏ませようとしている?。
踏め、といいながらも、踏んではいけないものかもしれない。それとも思いっきり踏まねばならないものか……。
「ユウキ、ほかのみんなに、この世界のルールを説明したい。ぼくの言う通り動いてくれないか」
ユウキはヤマトの真意がまだ掴みかねていたが、余裕の笑みを満面に浮かべた。試そうとしているのはわたしの実力か、それとも忠誠心か……。
「もちろんだ。なんなりと申し付けてくれたまえ」
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