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第二章 第二節 電幽霊(サイバー・ゴースト)戦
第226話 頭上の海の中で白いなにかがひらめいた
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「ありがと、クララ」
レイはさいごの一匹を斬り伏せると、上をみあげて言った。
クララが援護したせいもあって、いまの一太刀でそのエリアのホワトスは一匹残らず駆逐された。
「ありがと、クララ」
「どういたしまして、レイ」
「次もたのむわ」
クララはすこし気分がうわむきになるのを感じた。頭上のマナの数字もいつの間にか相当な数を加えている。得意満面な気分で上空に顔をあげてヤマトに言った。
「タケル、これでいい?」
「ああ、その調子で……頼む」
クララの思惑に反して、心ここにあらずと言ったそっけない返事だった。それ以上の評価を催促するのもみっともないので、クララは後方の地面のほうに目をむけた。
そこにアスカがいた。
魔法のちからで地表面を滑るようにして移動してきていた。空に目をむけたまま、なにかを口元で呟いているのがわかる。さきほどヤマトに命じられたまま、術を詠唱しているのだろうとクララは理解した。
ふいにアスカがクララの視線に気づいた。むっとした表情で顔をあからさまに曇らせたかと思うと、すぐにあっかんべえをしてクララの視線にこたえてきた。
「クララくん、またレイくんの前方にホワトスがたまってきたぞ」
上空前方からユウキの声が聞こえてきた。ヤマトの前を先導して警戒にあたっているユウキは、ヤマトとおなじように髪の毛が濡れそうなほど海面すれすれを浮遊して移動していた。クララはこちらを見下ろして、無言の催促を寄せているユウキに手のひらをかるくはためかせて答えた。
「わかりましたわ、ユウキさん。戦いに専念しますわよ」
そう言って目を下にむけようとした時だった。頭上の海の中で白いなにかがひらめいたのが見えた気がした。ちょうど自分の真上。先導するユウキとヤマトの間。
だが、魚ではない。ちがうなにか——。
クララは戦いに専念すると宣言したものの、それが気になってしかたがなかった。とりあえず、先ほど同様に弾丸ベルトを出現させて、直近の数十体を掃討した。全部は倒せなかったが、それだけで、立ちはだかった敵は、楽々レイの刃の餌食になった。
レイがホワトスを蹴散らしはじめたのを確認すると、もう一度上をみあげた。その仕草に気づいたヤマトが、すこし咎めるような口調でクララに声をかけた。
「クララ、どうした。まだ敵はかなりいるよ」
また海の中でなにかが翻った。今度はひとつではない。
ふたつ、みっつ、いや、白い泡がぼこぼこと海面に湧いてでてくるように、いくつも見えかかっては消えしている。
クララはヤマトのほうを振り向いたまま、自分の真上の海面を指さした。
「タケルさん、これって……」
その瞬間、海面が膨れ上がったかと思うと、白いなにかがこちらにむかって飛びだしてきた。それには顔があった。ぶきみな顔……。病的に白く、口は耳元まで裂け、顔中が鱗のよう襞におおわれていた。
半魚人——。
手を前につきだした半魚人数十体が一斉に海面からとびだして、クララにつかみかかろうとしていた。クララは腕に抱え込んでいた銃をすぐさま上空に向けようとした。しかしとうてい間に合いそうにもなかった。
死んだ魚のような虚んとした目が近づいてくる。裂けた赤い口から見え隠れする、ちろちろと蛇のような舌で、舐めずりする。
クララはふいに恐怖にかられた。だが悲鳴をあげるひまもなかった。
レイはさいごの一匹を斬り伏せると、上をみあげて言った。
クララが援護したせいもあって、いまの一太刀でそのエリアのホワトスは一匹残らず駆逐された。
「ありがと、クララ」
「どういたしまして、レイ」
「次もたのむわ」
クララはすこし気分がうわむきになるのを感じた。頭上のマナの数字もいつの間にか相当な数を加えている。得意満面な気分で上空に顔をあげてヤマトに言った。
「タケル、これでいい?」
「ああ、その調子で……頼む」
クララの思惑に反して、心ここにあらずと言ったそっけない返事だった。それ以上の評価を催促するのもみっともないので、クララは後方の地面のほうに目をむけた。
そこにアスカがいた。
魔法のちからで地表面を滑るようにして移動してきていた。空に目をむけたまま、なにかを口元で呟いているのがわかる。さきほどヤマトに命じられたまま、術を詠唱しているのだろうとクララは理解した。
ふいにアスカがクララの視線に気づいた。むっとした表情で顔をあからさまに曇らせたかと思うと、すぐにあっかんべえをしてクララの視線にこたえてきた。
「クララくん、またレイくんの前方にホワトスがたまってきたぞ」
上空前方からユウキの声が聞こえてきた。ヤマトの前を先導して警戒にあたっているユウキは、ヤマトとおなじように髪の毛が濡れそうなほど海面すれすれを浮遊して移動していた。クララはこちらを見下ろして、無言の催促を寄せているユウキに手のひらをかるくはためかせて答えた。
「わかりましたわ、ユウキさん。戦いに専念しますわよ」
そう言って目を下にむけようとした時だった。頭上の海の中で白いなにかがひらめいたのが見えた気がした。ちょうど自分の真上。先導するユウキとヤマトの間。
だが、魚ではない。ちがうなにか——。
クララは戦いに専念すると宣言したものの、それが気になってしかたがなかった。とりあえず、先ほど同様に弾丸ベルトを出現させて、直近の数十体を掃討した。全部は倒せなかったが、それだけで、立ちはだかった敵は、楽々レイの刃の餌食になった。
レイがホワトスを蹴散らしはじめたのを確認すると、もう一度上をみあげた。その仕草に気づいたヤマトが、すこし咎めるような口調でクララに声をかけた。
「クララ、どうした。まだ敵はかなりいるよ」
また海の中でなにかが翻った。今度はひとつではない。
ふたつ、みっつ、いや、白い泡がぼこぼこと海面に湧いてでてくるように、いくつも見えかかっては消えしている。
クララはヤマトのほうを振り向いたまま、自分の真上の海面を指さした。
「タケルさん、これって……」
その瞬間、海面が膨れ上がったかと思うと、白いなにかがこちらにむかって飛びだしてきた。それには顔があった。ぶきみな顔……。病的に白く、口は耳元まで裂け、顔中が鱗のよう襞におおわれていた。
半魚人——。
手を前につきだした半魚人数十体が一斉に海面からとびだして、クララにつかみかかろうとしていた。クララは腕に抱え込んでいた銃をすぐさま上空に向けようとした。しかしとうてい間に合いそうにもなかった。
死んだ魚のような虚んとした目が近づいてくる。裂けた赤い口から見え隠れする、ちろちろと蛇のような舌で、舐めずりする。
クララはふいに恐怖にかられた。だが悲鳴をあげるひまもなかった。
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