300 / 1,035
第三章 第一節 魔法少女
第299話 クララ、よく聞いて
しおりを挟む「クララ、よく聞いて」
その前置きにクララはゾクリとした。およそレイらしくない物言いに、ただならぬ気配を感じた。
大変なことが起きている——?。
「さっきの電撃、わたしも無傷じゃなかった。かなり厳しい状況であなたを助けられない。だけどイオージャをなんとかして、あなたの機体に近づけないようにする。だから早く逃げて」
クララは意味がわからずレイの機体が映し出されたモニタのほうへ目をむけた。
レイのセラ・サターンが腕だけで地面を這い回っていた。
電撃の直撃は免れていたはずだったが、下半身になにかしらのダメージを受けたらしかった。レイのセラ・サターンは腰から下が動いてなかった。立つことができず。サターンは手と上半身だけを使って、ビルの谷間を縫うようにして這っていた。
「レイさん。あなたのほうも……」
クララが思わずレイに声をかけると、レイがことさら厳しい口調で諌めてきた。
「クララ!。ひとのことはいい。あなたは自分のことを心配して!」
レイらしくない切羽詰まったような態度に、クララはぼわっとした驚きを感じた。その時、アルが張りつめた表情で、クララに警告してきた。
「クララ、すまねぇ。なんとか動かせねぇか。かなりまずいことになったんだ」
「まずいこと?。アルさん。でもこのセラ・ジュピターは動かせないんです。この機体にはムラなく超絶縁体が塗布されているんじゃないんですの?。わたしのからだ、まだ痺れていますのよ」
「クララ、それは謝る。こちらの想定を超える高負荷のパワーだったんだ。完全には遮断できなかった」
アルの表情が引き攣って、あまりに申し訳なさそうにうつったので、クララはアルを責めるのをやめて、そのあとの指示を仰ぐことにした。
「で、アルさん、わたくしはどうすれば?」
アルに尋ねたはずだったが、答えは逼迫した声のミサトからもたらされた。
「クララ、どうやっても、そこから逃げて。レイが今、時間を稼いでいる。もう一発くらったら、あなたの命が危ないわ」
「わたしの?」
クララはセラ・ジュピターを映し出しているカメラの映像を呼び出した。倒れているセラ・ジュピターを真上から映し出している映像を見ると、からだのあちこちが燻っているように、淡い煙が出ているのがわかった。
が、そのカメラに胸部分にあるコックピットが映し出されると、クララは呆然とした。
コックピットに全面塗布されていたはずの起絶縁体の一部が剥がれ落ちていた——。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
26
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる