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漆目 人鳥

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2011年(平成23年)3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震。 
東日本大震災。
その翌日からずっと連絡が取れなかった宮城県石巻市のリョウコさんにやっと電話がつながった。

「漆目、千葉は大変そうじゃないか!元気でやってるか?」

それがリョウコさんの第一声だった。
(当時、私は千葉県に住んでいた。)

ええ、元気です、もちろん元気です。
でも、リョウコさん!
大変と言えば宮城の方がよほど大変です。
なにか、困ったことはありませんでしょうか?

私がそう気づかうと、明るい声でリョウコさんが答える。

「うん?いろいろと不自由になってはいるが元気だ。不自由も最初からそう言う物だと割り切ればたいしたことはないぞ」

そうは言ってもリョウコさん。
しばらく千葉にいらっしゃいませんか?
そりゃ、関東だって色々とヤバメではありますが、
こちらには、ゆっくり眠れる場所が有ります。
お風呂も有ります。
部屋は余ってます。

私がそう提案すると、リョウコさんが訝しげな声で言った。

「漆目……オマエは何を言っているんだ?」

……?

「私達がみんなここからいなくなったら、誰がこの町を元に戻すんだ?」

……!

「私はダイジョウブだ。私が大丈夫と言ってるんだから間違いない。心配するな。
それよりも、こんな時だから、今はオマエがやらなきゃならないことをやれ。
頼んだぞ!」

そう言って電話は切られた。


リョウコさん。
私にとって、アナタは怖い存在でした。
でも、今、私はアナタの息子であることを誇りに思います。


心から……、ありがとう。
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