学校怪談は眠らない

漆目 人鳥

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明神亜々子は七不思議の夢を見るか

学校七不思議

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「それでは、これよりオカルト研究部の総会を開始します!」
 再びホワイトボードの脇に立ち、三沢先輩が声高々に宣言する。
 ホントに始まっちゃった。
 この会の意味とは?私の立場とは?
「顔合わせって事で、紹介からさせて貰いますね。まずはうちの顧問になっていただいた松島先生」
 三沢先輩はそう言って隣で座っている先生を右手で指し示した。
 先生は座ったまま小さく頭を下げてから話し出す。
「こんばんは。2年と3年1組の美術の担当をしている松島と言います。うーん、まあ。担当になったと言っても(仮)なんだわ。急だったからね。実は私も今年赴任してきたばっかりでね。手が空いてたって言うか――。美術部の顧問は、もう一人の美術の先生、1年生と3年2組と3組の顧問をしている石橋先生が担当しているので、特に私はこれからもどっかの担当になる予定が今のところ無くてね。そんな感じ。以後よろしく。あ、それから部室も当分 (仮)ね、文化棟に倉庫になってる部室があるから、最終的にはそっちになるはずなんだけど」
 文化棟というのは三沢先輩の作ってくれた配置図によれば、三階の三年生の教室が並ぶ棟の反対側に集まって並んでいる教室の事で、文化部の部室はみんな、そこを使っている様だった。
「倉庫化した教室の荷物を何処に動かすかがまだ決まらないみたい」
 先生はそう言うと、決まり次第荷物の移動を行うので、その時はよろしくね。と言って笑った。
 あ、それ、私達がやるんだ。と、悟った私。
「そっちの三年生は3年3組の黒川さん。部長をやって貰ってまぁす」
 改めて三沢さんにそう紹介された黒川さんは、特に席から立ち上がることも無く、小さく「よろしく」と言って頭を下げた。
 彼女は本当に綺麗な人だった。
 烏羽からすば色の腰まである長髪。
 知的に赤いルージュを引いたような唇。
 肌も、色白と言うよりは透明感があるという感じ。
 キッチリ、うっとり、自分で再度理解したかったので、箇条書きに思考してみた。
「私は2年3組の三沢秋みさわ あき副部長兼会計担当です。よろしく、よろしくお願いいたします」
 三沢先輩は右手を胸に当てながらそう言って深々と芝居がかったお辞儀をした。
 副部長と会計。
 まあ、2人しかいなかったんだから順当そうなるよね。
 知らないうちに会計とかにされて無くてホントによかった。
「そしてこちらが、我が部のダーク・ホース!明神亜々子!」
 三沢先輩はビシリと私を指さすと、そう声を張り上げた。
 一瞬流れた静寂の後、気後れしたように先生と黒川さんが、音の無い拍手で応える。
 それにしても、ダーク・ホースって言葉使うの初めて聞いた。
 なんだっけ?ダークホース。
 あんまり期待してないけど、予想外に活躍しそうな人。
 とか、そんな感じだっけ?
 褒められてんの?2、3度しか逢ったこと無いのに?
 あ、社交辞令?それにしたって2、3度しか逢ったこと無いのに?
 ふと、気が付くと、3人の視線が私に注がれていた。
 あっ、いけない。
 挨拶しなきゃだ。
 慌てて立ち上がり、お辞儀する。
「1年2組の明神亜々子です。詐欺られて入部しました」
 場を和ませるジョークのつもりで言ったのだけど、先生も黒川さんも真顔だし、三沢先輩に至っては、口元が笑顔を崩さぬまま引きつっている。
 滑った――、どころか、土砂崩れじゃん。私。
「さ……さあ、それじゃあ、自己紹介も終わったので!気を取り直して!」
 なんか、気を取り直してるのはあなただけだと思います、三沢先輩。
「部の活動も始まったところで、まずやらなくてはならないことがあります。あるのです」
 三沢先輩が仕切り直す。
 まず、やらなくてはならないこと?
「部活ですか?」
 私が呟くと、三沢先輩が見下すような目で口を開いた。
「部の活動の事を部活と言います、明神さん。部活はもう始まっているのです。認識を改めろ。そうして下さい」
 ごもっともです。
 私もそうじゃないかなぁとは思っていました。
 だけど、三沢先輩の事を考えるとですねぇ、何が答えでもおかしくないかなぁって――。
「すいませんでした」
 素直に謝った私――えらい。
「まず、やらなくてはならないこと、それは、予算の奪取です!」
「えっ」
 と、私を含む3人が驚きの声を上げた。
 真面目まともだ。
 三沢先輩が真面目な事をしゃべっている。
 先輩は続けた。
「この学校には均等割の部活活動費の他に備品購入維持の予算を請求する事が出来る制度があります。始まったばかりのこの部には、圧倒的に備品が足りません。勿論、このままでも、情報を収集記録、そして世に問うことで部活として成立出来なくはありません。しかし!」
 三沢先輩は唸りを上げる勢いで、胸の前で拳を握った。
「それだけでは、文芸部の嘘怪談文集や、新聞部のクソ不思議記事となんら変わらないのです」
 三沢先輩、下品です。そんなにカワイイのに――。
「私 (達)の求める物は、リアルです。実話です。フィールドワークです。そのためにもこれから備品は必要になります」
「備品って――、具体的にどんな物が必要なんだ?」
 見当も付かないという風に黒川さんが尋ねる。
 あんた、部長じゃ無かったっけ?
「贅沢を言えばきりがありませんが、アクションカメラは必須。それにヘッドライトに長靴、軍手とか野外基地としてのキャンプ用品一式もあれば便利ですよね、それから、それから――」
「この世の真理でも突き止めようって言うのかい?あんた」
 止まらない三沢先輩を黒川先輩がそう言って制した。
「まあ――」
 三沢先輩が、照れ笑いを浮かべながら頭を掻いた。
「飽くまで、理想の話という事で――。もちろん、一気にそんな予算がもらえるとは思っていません。当面の活動は自腹、自前という覚悟は必要です」
 三沢先輩はそう言って私達を見渡して続けた。
「しかし予算はあるに越したことはありません。そして、そのためには実績が必要です。不可欠です」
 ああ、そうか。
 実績……何をやってるのか解らない部に、予算は付かないよね。
 あれ?そういえばオカルト研究部って何をやる部なんだろう?
「次回の生徒会への予算申請までに、実績を既成のものとし、認めさせ、多少なりとも予算を獲得する!それは……解りますか?つまりそれはオカルト研究部の活動を公式の場で学校に認めさせると言う事にも繋がるのです。認めさせる事が出来れば、交渉の機会も出てくるでしょう。そうすれば、少しずつ予算のアップだって可能になるかも――」
「私……今年で卒業なんだけど?」
 右手を小さく挙げながら、呟くように黒川先輩が言った。
「それは――」
 三沢先輩はそう言って少し後ろに身じろぐと、次の瞬間大きく頭を下げた。
「そこは一つ、後輩達の礎となっていただくと言うことで!ここはまとめていただいて」
「わかった」
 黒川先輩があっさりとそう言って手を下げた。
 えっ?いいの?
 まぁ、言ったところでどうにもならない話ではあるけど。
「実績。そのために提案があります」
 三沢先輩が胸を張る。
「『学校の七不思議』です。学校で噂される怖い話や不思議な出来事。七不思議を探すのです!」
 ?七不思議を何ですって?
「七不思議って決まってるから七不思議なんじゃ?」
 私がそう尋ねると、三島先輩は、ふふんと鼻を鳴らして答えた。
「調べたのですが、この学校に七不思議は無いのです。私調べでは、それを答えられる者が生徒にも職員にも居ないのです」
「ああ、それね」
 黒川先輩が話しに割り込む。
「国の教育制度にも原因があるって聞いたことがあるよ」
 えっ!
  国?教育制度?

……政治?
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