学校怪談は眠らない

漆目 人鳥

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明神亜々子と時計じかけの学校怪談

ヒトノモリ

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「ヒトノモリは、みんな最初はサイトの管理人じゃないかって思ったらしいんだけど、特に荒し行為に注意喚起したり、メンテの告知をしたりすることは無かったんだって。では、何をしたか」
「何をしたんですか?」
「質問」
「あ、はい。どうぞ」
 杉山さんから、突然質問の打診を受けたと思った私は、もつれ気味にそう返した。
「違う違う、ヒトノモリが質問して来るのよ。他人のスレやレスにね」
 ヒトノモリが質問?
「どんな質問を?」
 杉山さんは、ちょっと考える風にしながら答えた。
「ここの裏サイトってさ、基本は人の悪口とか、学校への不平不満の書き込みなわけ。例えば、何年生のAがムカつくとか」
 うん、それはさっき調べたから知ってる。
「Aがムカつくから酷い目に遭わないかな。とか書き込みしたスレにヒトノモリがレスするの『Aは酷い目に遭ってイイの?』とか――」
 何それ、怖い。
「そうするとさ、そのAってのが本当に酷い目に遭ったりするのよ」
 杉山さんはそう言うと「偶然かも知れないんだけどね」と言って笑った。
「酷い目ってどんな感じになるんですか?」
 私が尋ねると杉山さんはまた、少し考える風にして言った。
「私が聞いたことがある奴でちょっと酷かったのは、サッカー部の奴が試合中に転んで、顔面をサッカーシューズで蹴られて骨折したって言うのを聞いたよ」
 うわー、悲惨。
「ヒトノモリはいつもいるわけでは無いの。たまーに、ひょっこり現れて、質問してくるんだって。『そいつ、ホントにやっちゃっていい?』みたいに」
「それが、ヒトノモリの呪い?」
 いや、私の感じでは、これは呪いと言うより――。
「実行者」
 そうそれ!ぽつりと言った黒川さんの言葉に思わず私は何度も頷きながら、心の中で同意していた。
「うん、そうだよね。最初はね、みんなもどういう力か解らないけど、ヒトノモリがなんかやってるんだと思ってたのよ。なんかカラクリが有るんだろうって。だけどね、あの一年生の自殺がね――」
 杉山さんの表情が少し硬くなる。
「ここからは、私も裏サイトで起こったことを見てたから、噂云々じゃ無くて、がちな奴。
夏休み前に裏サイトに書き込みがあったのよ。一年の――えーと、名前は、忘れたからA君でいいか――」
「白石くんです」
 三沢さんがぼそりとそう言った。
「白石正樹くん」
 ああ、そうか三沢さんは同学年だったんだっけ。
「そう、白石くんか。じゃあそれで話すよ」
 杉山さんが姿勢を正す。
「夏休みの始まる少し前。裏サイトに書き込みがあったの。『一年の白石うぜぇ。いらない』ってね。ところがさ、その白石って奴、いい奴だったらしくって。擁護するレスこそ有れ、誰も悪く言わなかったの。そんな事って珍しかったのよ。大概、みんなに嫌われてる奴が書き込まれる場所だからね。だから私もその書き込みを気に掛けてたのよね。いつ頃悪口が書かれるんだろう?書かれるとしたらどんな悪口が書かれるんだろう?とか思ってたと思う。そしたら或る日――」
 杉山さんはそこで悪い顔をして笑い、少し話を溜めた。
 話の流れは見えたが、息を飲む私。
「ヒトノモリが現れたのよ」
「レスを見たんですか?」
 思わず質問する。
「見たよ。私は初めて見たんだけどね。普通にレスしてた」
「なんて、レスだったの?」
 黒川さんが質問する。
「黒川――」
 杉山さんは、少し変な顔をした。
「まさか、この話知らないとか?」
 黒川さんは無言で小さく首を横に振った。
「……」
 なんか、嫌な沈黙が短く続いた。
「まあ、いいや――」
 気を取り直すように杉山さんが呟いて話し始める。
「『シライシハ、イラナイノ?』それがヒトノモリからのレスだった」
 そして、夏休みが始まり、再び学校が再開される事となる。
「そしたらさ、ヒトノモリのレスにレスが付いてたのよ」
 そのレスは記入された日付を見るに、夏休みが終わる直前に付いたものらしかった。
「なんて、返って来てたんですか?」
「たった一言、『いらない』って書き込んであった」
 それは、最初に白石さんをいらないと書き込んだ人間によるものということになるのだろうか?
「それから暫くして、彼――白石くんは自殺しちゃったのよ。本人のことは私直接知らないから、噂なんだけど、明るくて、凄く人気の有る子でさ、最近好きな子が出来たらしいって――そんなで、自殺しちゃうかね?って、結構噂になったのよ」
 そう言って杉山さんは苦笑いしながら「まあ、しちゃったんだけど」と付け加えて少し黙った。
 なんか、話が話だけにその先を催促していい物か――なんならここで終わりにしても仕方が無いような気もするし。
 そんな思いで回りの沈黙に流されていると、杉山さんが再び語り出した。
「それから噂が流れたの」
「呪いの噂――ですか?」
 私の問いかけに杉山さんはゆっくりと頷いた。
「ヒトノモリは本当に人を呪える幽霊?神様?妖怪?そんな何かなんじゃ無いかって。そんで、別に私達の味方ってわけじゃ無くて、ただ、裏サイトに名前の挙がっている人物から選んで、好きなように人を呪ってるんじゃ無いかって。それって結構ヤバイ事よね?相手に話が通じないことがあるかもしれない。怒らせて呪い殺されちゃうかもしれない。だってさあ、『いい奴』でも殺されちゃうのよ。次、自分かも知れないじゃ無い」
 そうか、いいひとが死んだことがやばいんだ。
 人狼みたいにみんなで投票して、わるいひとだって選ばれた人が殺されるんじゃ無くて、どんだけ回りがいいひとだと認めていても、誰かが書き込みして、ヒトノモリが気まぐれにそうしたいと判断すればそれで呪われるって。
 どんだけリスキーな人狼なのよ。
 でも、それにしたって――。
「三沢さんはこの話を知っていたんですよね?なんで七不思議候補にしなかったんですか?」
「早いかなって――」
「?」
 早い?って――何が?
 私が黙って見つめていると、ハッとしたように三沢さんは口を開いた。
「いや、ほら、まだ一年経ってないでしょ。経ってないんですよ。生々しいし、そうですよね?あまり受けが良くない。よろしくないかと――」
 なるほど、使えないと解っていれば最初から黙ってる方がいいかも知れない。
「不謹慎か、そうかもね。使えないか」
 杉山さんはそう言った後、裏サイトへのアクセスの仕方を教えてくれた。
「じゃね、私はこれで。面白そうだから、何かあったら協力してあげるからまた声かけてよ」
 そう言って立ち上がり、部室の後ろから廊下に出る扉を開けた直後、振り向くと口を開いた。
「黒川――」
 ビックリするくらい真顔になる。
「アンタホントに黒川?」
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