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むっつめ【鬼の話②】

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息子はかなり安定したけれど、学校は「ハイそうですか」では勿論終わらない。
しきりに精神科の受診を進めてくる。

そりゃ逆の立場ならそうするのもわかる。自殺されたら大変なのだから。

息子も息子で、それで大丈夫と病院で言われたら払拭できるし、一度行ってみようかなと言い出した。

私がしぶっていると、私の守護が

『行きなさい。お前が一緒に行かなければいけない。』と、語りかけてきた。

「は?その必要性全くわからないんだけど?」

そうぶち切れると(リアル、本当に私は超短気人間である)

『お前が出会わなければいけない人間が待っている。その人間はおそらく、リアルでお前や彼の事を初めて奥深く理解してくれる人間。そしてお前がしなければいけない事がある。』

そう言われた。

ここで反抗した所で、その道に進まされる事は経験でわかっているのと、反発したら、私がもう許して!と言うまで痛い目に合わせてくる容赦ない方々なので素直に従う事にした。

ここからは、私の守護からかなり指示があった。

『ネットを開いて、検索のワードはこれとこれ。
一番上の病院に電話、予約がかなり先でも予約だ。』

私は、言われた通り、その、かなり家からは遠い病院の予約を取った。

近所にもあったのにな……どうしてこんなガソリン代がかかる所を……と思った。

すると、
『その予約した事を、今、敬語で彼にLINEをしなさい』と、言われた。

???と思いつつ

「〇〇病院〇時に予約を取りました。どうぞ宜しくお願い致します。」と打って送信した。

 




帰宅後、息子から
「今日LINEくれたじゃない?あれを読んでたら先生が前から歩いてきたんだ。
僕を見つけて、精神科の件だけど、予約をとってもらえないか?って言ってきたんだよね。」

ふーんと、私が相槌を打つと

「でね、ちょうど予約日時のLINEが送られてきた所だったし、面倒だったからそのままLINEの画面みせて、もう予約済みです!って答えたんだよね」

ほほぅ・・それで?

「そしたらさ、なんか先生の顔色が一気に変わって、僕何かまたおかしな事したかも……」

なんだろうね?とその日は答えたけれど、後になってその意味はわかった。

 
その病院は、学校が提携している指定病院だったらしく、ちょうどその病院に紹介をしようと思っていた所、もう予約済みであったので驚いたらしい。

って事は?この予約した病院で、運命の出会いがあるのかな??

ここからは息子の守護や、その他取り巻きまでかなり大勢が総動員で動き出した。

指示がかなり細かにくる……

『今ここをみろ!』
『今ここでこう動け!』

と、まぁ私は完全にこうなると、ただの駒だ(笑)

昔は反発もしたけれど、最近はもう駒に徹する様に心がけている。

 
それで、息子の未来が今よりよくなるのであるならば、私は何だってする。

 


 
予約の日、息子と2人で病院へ向かった。
案の定私は迷子になった。そう、何を隠そう私は方向音痴だ!!!!|д゚)

困っていると、息子側の守護の方が現れて、ただ黙って方角だけを示しはじめた。
( 神社系の方で、扇子で方向だけ指し示してくれた)

私がその通りに進むと、無事病院(心療内科)にたどり着けた。

いやぁ、ナビいらず!!いつも示してくれていいのよ!!!!駐車場にやっと停めて、かなり緊張しながら、病院の中へと入っていった。


初めて訪れた心療内科の待合室は、とてもリラックスできる様な空間で、大きなソファ、アロマの香りで満ち溢れていた。

そしてなんと!!ハーブティーが飲み放題だった!!!!!!!|д゚)

「ハーブティーがぶ飲みしなきゃ!!!」

そう私が言うと、息子から「もう!静かにして!」と窘められた……(反省)

 
息子が問診表に「何もないのに、色々見えたり、聞こえたりする」と記入を終えて、診察の順番がくるのをひたすら待った。

私はする事がないので、周囲の観察を始めた。

パーカーを深くかぶってガタガタ震えている人がいた。
ソファで横になるサラリーマンもいた。
親子で来ている人もいた。

兎に角、とてもとても待合室には、人が多かった。
正直、こんなに患者がいるとは思っていなかった。


そして何より、みんな笑っていなかった。

『みんな心が疲弊している』

そう、守護から言われた。

 
あぁ……あのサラリーマン、最近人が目の前で亡くなったのを目撃してる。

事故の現場?なのかな?

それから眠れないのか、そりゃそうだよね、そりゃ……

共鳴すると自分が壊れてしまうので、自分のシャッターを静かに下した。

記憶が消え去る事はないけれど、でも、この方に心の拠り所になる様な、そんな、笑顔になれる場所が、リアルの世界、バーチャルな世界問わず、どうか、どうか与えられます様に・・

そう、静かに祈った。

 

 
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