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69話~鍵のありか~
しおりを挟む2020年2月3日
海人は、桜の花びらの絨毯の上にあぐらをかいて座り込むと、静かに語りはじめた。
「しぶ子も俺も、今の状態は魂だけの状態なのわかる?身体は各々、しぶ子は21世紀の自分の部屋で眠っているし、俺は、古墳空間にある、時と時を繋いだワームホール内で、樹木になりかけて眠ってる。
死んでるって訳じゃないよ?さながら夢を見ている状態って言ったらいいかな。まぁそんな感じ。さて、これからどうするかなんだよね。」
しぶ子は海人と向かい合って座ると、まずは海人と会えなくなってから起きた色々な出来事から、風のトンネルでの柊とのくだりまでを語った。
「とりあえず、早くどうにかしなくちゃ。今日は節分だよ?私はそんな度々眠ってる場合じゃないし。」
「確かに。そっか、今日は節分かぁ、鬼は外~福は内~。一応未来もその風習は残ってるんだよ。」
「そうなの?なんか想像つかないや。」
「柊鰯も魔除けで勿論飾る。柊は鰯の頭をつけるのをなんか嫌がってすぐ取っちゃうんだけどね。」
海人は優しい目をしながら昔話を語り、久しぶりのしぶ子との会話を楽しんだ。
すると、しぶ子は海人にこう尋ねてきた。
「海人には視えてる?海人の姿が元に戻ったみたい。」
海人は少し驚くと、目を瞑り集中をした。
「本当だ。そしてしぶ子に繋がっていた21世紀への扉が消えて、未来への扉には上層部からの鍵はかけられたままって事か。」
しぶ子と海人は暫く考えこんだ。
「俺さ、身体が動けなくなっていった間に色々考えたんだ。実は、信じてる事ですら疑ってみる事って大事なんじゃないかって。」
「疑う……?」
「勿論、信じないって意味じゃなくてさ。むしろ、その逆で、わざと、そう進む様に仕向けられた事に、俺もしぶ子も気づいてないんじゃないかって。そこに気づかないと、駄目なんじゃないかって。」
「この物語を綴ってきた理由は、柊を助ける為のはずでしょう?多分あの風のトンネルが言霊の力で出来たのよ。だから、柊にも今何かしら変化があるはず。」
「それは勿論そうかもしれない。でも実は、そのトンネルはもしかしたら、誰かによって作られたものかもしれない。いや、作ったより作らされた、違う理由の為に、その可能性だってあるわけだよね?」
しぶ子は、無言になり暫く考えこんだ。
確かに。
思い起こせば、色々腑に落ちないどころか、訳のわからない出来事の連続だった。
その度に、固定観念を取っ払う様に意識を向けてきたつもりだった。
「海人、こんな時は、逆引きで考えていくといいかもしれない。」
そう言って、いきなりしぶ子は、自分自身に問いかけはじめた。
私は、柊を助ける未来の為に色々をやってきた。
それは何故?
海人に幸せになってほしかったから。
それは何故?
海人が私と同じ魂の、来世の存在だったから。
同じ魂が消えてしまうのは嫌だったから。
それは何故?
魂がこれからも、すくすくと育ちたいから!
すくすくと!
「すくすくって、何だよその表現。」
海人は、声を出して笑いだした。
「ちょっと!人が真剣に考えてるのに!!」
「いや、でもそれが答えなのかもしれないな。」
「すくすくとが?」
「そう、すくすくと育って欲しいって思ってるのが誰かって事じゃない?」
「そんなの、一人しかいない………。」
しぶ子は呆然と海人を見つめた。
さぁ、しぶ子
一緒に考えようよ
未来への扉にかけられた鍵穴にはまる
鍵のありかをさ
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