MOON~双子姉妹~

なにわしぶ子

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78話~見えない未来~

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バーチャルレストランで、真琴と希望は
向かい合って座っていた。

【2%】のメンバーがいた頃よりも更にメニューは
増えて、居住区の中にも複数設置がされていた。

「僕、いつか母星に行って本当のオムライスが食べてみたいなぁ。真琴ちゃん作ってくれる?」

希望はオムライスを頬張りながら、真琴に向かって微笑みかけた。

「えぇ、勿論よ。お姉ちゃんみたいに上手く作れないけど、沢山作ってあげる」

「おかあさんは、お料理上手?」

「うん……そうね………」


真琴は珈琲を一口飲みながら、顔を曇らせた。


「おかあさんの話は我慢だったのに、ごめんなさい真琴ちゃん………」

希望はシュンとすると、手にもったスプーンをテーブルの上に置いた。


「私の前では大丈夫よ。でもおとうさんの前では我慢してね?」

「うん!おとうさんの前では絶対しないよ!」


希望はそう力強く言うと、残りのオムライスをむしゃむしゃと平らげ始めた。
真琴はその愛らしい姿を、目を細めながら眺めた。



これからどうなるのだろう……
母星のみんなは?パパは?鞍馬は?元気なのだろうか…

遥とホワイトとは任務の報告で通信を
たまに出来てはいるけれど
その他のメンバーとは、全くコンタクト取れずにいた。


真琴は未来の事を思い巡らせた。

あれから、自分と大和の帰還は許されず
今も許されないままだ。

粒子の摘出は受けてないままだが、あの後
大和の開発した、粒子暴走を止める薬で
今は押さえられていた。


星間戦争が終結してからは、平和だと聞いていた。
街の復興も機関の手によって進み、だからそこ、今回月の居住区を売り出す事に決まったのだろう。

もう少ししたら、母星から色々な民間の人々が
やってきて、月はきっと賑やかになる。

そうしたら、希望はどうなるのだろう……

出来るなら、母星に3人で還りたい
でも、希望が大和が造った、大和とお姉ちゃんの亡くなった子供のクローンだと言うわけにいかない

だから、私と大和の子供だと言って還る以外
方法はきっとない……

私はもうそうしたいとすら思っているけれど
でも、多分大和は拒む、ここに残ると言うはず

お姉ちゃんと過ごしたこの月に………




「真琴ちゃん??珈琲飲まないの??」

真琴がハッとすると、顔を心配そうに覗き込む
希望の顔があった。

「ごめん考え事しちゃってた。勿論飲むわ、この珈琲はお姉ちゃんの思い出の珈琲だもん」

真琴は残りの珈琲を一気に飲み干すと
カップをソーサーに置いた。


「ごちそうさまでした♪」


希望は椅子から飛び降りると、真琴の膝に飛び乗った。
そして真琴の長いウェーブのかかった髪を
自分の顔に絡めて遊びだした。

「こら!人の髪の毛で遊ばないの」

真琴が嗜めると、希望は「はーい」と舌を出しながら今度は膝から飛び降りると、無邪気に出口に向かって駆けていった。

「そんなに走ったら、転んじゃうわ!」

そんな真琴の心配をよそに、出口の前で
希望は身軽に宙返りをしてみせた。

それはさながら、背中に羽があるかのようだった。

「希望、いつからそんな事出来る様になったの……?」

真琴が驚いていると、希望は更にくるくるとまわってみせたあと、誇らしげに胸を張ってみせた。

「凄いでしょ!?ちょっと練習したんだよ。還ったら、母星で頑張って働いてるおかあさんに一番に見せてあげるんだ!」


戸惑う真琴を置いて、希望は自分の部屋へと走っていってしまった。


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