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目が覚めたら
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「……は? なにこの豪華なお風呂……」
思わず茫然としてしまうほどの、豪華なバスルームだった。
まるでどこかの高級ホテルの、しかもすっごく高い部屋にありそうなバスルーム。奥にあるジャグジーから泡と湯気が上がっている。
個人でこんな豪華なお風呂って……。もしかして、女の人を何人も連れ込んで……。
思わずしてしまったいやらしい想像をかき消すように、私はブンブンと首を横に振った。
でも。あんなに綺麗な顔をしているからきっと絶対にモテる。あり得ない話じゃない。
そう言えば私、最後に男の人とシたのって、いつだったっけ……。そう考えて、虚しくなってすぐに思い出すのをやめた。
ぐるりと見回すと鏡が目に入って、ギクリとする。あぁ、そうだ、私は、ここで確認しなきゃいけないことがあったんだった……。
恐る恐る鏡に近づいて、自らの身体をそれに映す。全身をチェックしたけれど、特に怪しい“痕”――キスマークとか――は、付いていなかった。思わず安堵のため息をつく。
けれども、それが無かったからと言って“そう言う行為”を彼としなかったと言う証拠にはならない。
下着だってそうだ。目覚めた時は下着を着けていたことに安堵したけれど、それを着けたままでも行為に及ぶことは出来る。
ただそう言うやり方で行為に及んだ場合、だいたいは女性の方に行為の証拠が残るわけで……。つまり、性急に“コトに及んだ”可能性が高かった場合は避妊なんてしないかも知れなくて……。
さっき下着を脱いだ時には何も変わったことはなかった。下半身にもその手の違和感はない。
ただ、几帳面な男であれば性急にコトに及んだ後でも、証拠を残したくない場合は後始末をするかも知れないけれど。
はぁ、と、ため息をつく。
初対面の男が同席する場で飲み過ぎた私が悪い。でもまさか、お持ち帰りされちゃうとは、思ってもみなかった。それとも、酔った私を介抱して親切に一晩泊めてくれただけなのか……。
もやもやした思いのまま私は身体をすみずみまで洗い、ジャグジーに浸かった――。
――バスローブを拝借して洗面室からから出る。
ベッドルームは遮光カーテンが全開になっていて、冬の朝の柔らかい光が室内に届いていた。そこでようやくこの部屋の全貌が分かった。
とても天井が高く、インテリアは……いわゆるブルックリンスタイルと言うのだろうか。コンクリートの壁、木製の床、アイアン製の電気スタンド、ビンテージっぽいサイドテーブル。全体的にトーンを抑えた感じに仕上げているので、ざっくりとした印象を持ちつつもとて落ち着く雰囲気だ。
それにしても広い部屋に住んでるな、なんて考えながら、私はさっき彼が消えていった扉をゆっくりと開いた。すぐに私に気づいた彼が人懐っこい笑顔で「あ、お風呂上がった?」と声を掛けてくる。
今まで私のそばに居たことがないタイプの男だ、と思う。
彼が動くたびに、少しウェーブしている柔らかそうな茶色い髪がふわりと揺れる。
「何か食べれそう? 中華粥作ったんだけど。どう?」
「……いい匂い」
「ふふっ。いい匂いなのは、亜矢さんの方だよ?」
「……は?」
名前を口ずさまれ、私は思わずうろたえた。
名前、教えたっけ……?いや、教えた、多分間違いなく。
ああそうだ、思い出した、自己紹介したね、一言一句違わないやつ。でも私は……彼の名前を覚えていない。きっと昨日、聞いているはずだ、でも、覚えていない……。
あと……サラッと、私がいい匂いとか言った? 言ったよね??
名前の件で青くなったあと、思わず頬が熱くなる。
まずい。感情が忙しすぎる。
「あの、えっと……」
「少しでもいいから、食べて。さ、ここに座って」
ホテルマンのように椅子をサッと引いた彼に促され、私は仕方なくそこへ腰を下ろした。
目の前には中華粥が美味しそうな匂いの湯気を上げている。ほんのり香るごま油の香りが食欲を刺激したのか、急に空腹感を感じた。
思わず茫然としてしまうほどの、豪華なバスルームだった。
まるでどこかの高級ホテルの、しかもすっごく高い部屋にありそうなバスルーム。奥にあるジャグジーから泡と湯気が上がっている。
個人でこんな豪華なお風呂って……。もしかして、女の人を何人も連れ込んで……。
思わずしてしまったいやらしい想像をかき消すように、私はブンブンと首を横に振った。
でも。あんなに綺麗な顔をしているからきっと絶対にモテる。あり得ない話じゃない。
そう言えば私、最後に男の人とシたのって、いつだったっけ……。そう考えて、虚しくなってすぐに思い出すのをやめた。
ぐるりと見回すと鏡が目に入って、ギクリとする。あぁ、そうだ、私は、ここで確認しなきゃいけないことがあったんだった……。
恐る恐る鏡に近づいて、自らの身体をそれに映す。全身をチェックしたけれど、特に怪しい“痕”――キスマークとか――は、付いていなかった。思わず安堵のため息をつく。
けれども、それが無かったからと言って“そう言う行為”を彼としなかったと言う証拠にはならない。
下着だってそうだ。目覚めた時は下着を着けていたことに安堵したけれど、それを着けたままでも行為に及ぶことは出来る。
ただそう言うやり方で行為に及んだ場合、だいたいは女性の方に行為の証拠が残るわけで……。つまり、性急に“コトに及んだ”可能性が高かった場合は避妊なんてしないかも知れなくて……。
さっき下着を脱いだ時には何も変わったことはなかった。下半身にもその手の違和感はない。
ただ、几帳面な男であれば性急にコトに及んだ後でも、証拠を残したくない場合は後始末をするかも知れないけれど。
はぁ、と、ため息をつく。
初対面の男が同席する場で飲み過ぎた私が悪い。でもまさか、お持ち帰りされちゃうとは、思ってもみなかった。それとも、酔った私を介抱して親切に一晩泊めてくれただけなのか……。
もやもやした思いのまま私は身体をすみずみまで洗い、ジャグジーに浸かった――。
――バスローブを拝借して洗面室からから出る。
ベッドルームは遮光カーテンが全開になっていて、冬の朝の柔らかい光が室内に届いていた。そこでようやくこの部屋の全貌が分かった。
とても天井が高く、インテリアは……いわゆるブルックリンスタイルと言うのだろうか。コンクリートの壁、木製の床、アイアン製の電気スタンド、ビンテージっぽいサイドテーブル。全体的にトーンを抑えた感じに仕上げているので、ざっくりとした印象を持ちつつもとて落ち着く雰囲気だ。
それにしても広い部屋に住んでるな、なんて考えながら、私はさっき彼が消えていった扉をゆっくりと開いた。すぐに私に気づいた彼が人懐っこい笑顔で「あ、お風呂上がった?」と声を掛けてくる。
今まで私のそばに居たことがないタイプの男だ、と思う。
彼が動くたびに、少しウェーブしている柔らかそうな茶色い髪がふわりと揺れる。
「何か食べれそう? 中華粥作ったんだけど。どう?」
「……いい匂い」
「ふふっ。いい匂いなのは、亜矢さんの方だよ?」
「……は?」
名前を口ずさまれ、私は思わずうろたえた。
名前、教えたっけ……?いや、教えた、多分間違いなく。
ああそうだ、思い出した、自己紹介したね、一言一句違わないやつ。でも私は……彼の名前を覚えていない。きっと昨日、聞いているはずだ、でも、覚えていない……。
あと……サラッと、私がいい匂いとか言った? 言ったよね??
名前の件で青くなったあと、思わず頬が熱くなる。
まずい。感情が忙しすぎる。
「あの、えっと……」
「少しでもいいから、食べて。さ、ここに座って」
ホテルマンのように椅子をサッと引いた彼に促され、私は仕方なくそこへ腰を下ろした。
目の前には中華粥が美味しそうな匂いの湯気を上げている。ほんのり香るごま油の香りが食欲を刺激したのか、急に空腹感を感じた。
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