異種族キャンプで全力スローライフを執行する……予定!

タジリユウ

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1巻

1-1

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 第ゼロ話 少し未来の話 ~女冒険者、キャンプ場へ行く~


「さて、明日は何をするかな」

 私――ミリーがこの街を拠点きょてんにしてから半年。
 少し前に冒険者ランクがDからCにまで上がって、ようやく日々の生活に余裕よゆうが出てきた。
 今日も今日とて無事に依頼をこなし、いつもの店で軽く飲んでいると、同じ冒険者パーティの仲間である、エレナがやってきた。

「ミリー、明日はひまか?」
「ん? 別にすることもないから、この前欠けてしまったナイフを鍛冶屋かじやぎに出してから、食べ歩きでもしようと思っていたところだ」
「つまり暇なんだな。そしたらちょっと付き合えよ。この前、すっげ~いいところを見つけたんだ。本当は誰にも教えたくないんだが、特別にミリーにも教えてやるよ!」
「……いや、別に教えなくてもいいけどさ。アルトやフレットもさそうのか?」

 アルトとフレットは、私とエレナとともにパーティを組んでいる冒険者の男たちだ。
 思い返せば、パーティを組んだのは二年以上前。
 それだけの期間大きな問題もなく上手くやってこられているのは、いいことだ。
 私たちは一緒に冒険するだけでなく、プライベートで遊ぶこともしばしばだから、今回もそうかと思って聞いたのだが、エレナは首を横に振る。

「いや、たまには女二人で出掛けようぜ。それがさ、さっき言った『いい場所』ってのが本当に存在するのか信じられないくらい、すごいところでよ。ゆめじゃなかったって確かめる意味もあるんだが……四人で行って万一現実じゃなかったら、あれだろ?」
「……なんだそれ。妄言もうげんに付き合っている暇はないぞ。それじゃあ、私はもう帰るからな」
「だあ~、待ってくれ! 頼むよ、ちゃんと説明するから!」

 それからエレナは一から説明を始めた。
 私たちのパーティは、四人で依頼をこなす以外の時間は、自由に過ごしていいことになっている。
 エレナはそんな自由時間を使って、ソロで依頼を受けていたらしい。
 依頼自体は山の中で行う簡単な物で、Cランク冒険者である私たちどころか、け出しの冒険者でも受けられる内容だった。
「だけど」とエレナは続ける。

「依頼自体は問題なく終わったんだが、帰りの道がわからなくなっちまってな……でも散々山の中を彷徨さまよいつつも、なんとかふもとに降りた。でももうその頃にはどろだらけで、腹もペコペコだった。そんな中で、を発見したんだ」
「あれ?」
「ああ、そこにいた者が言うには――キャンプ場という施設らしい」


 ◆  ◇  ◆


 あのあと『キャンプ場』とやらについて更にくわしく話を聞いたが……エレナの言っていることはいまいち信憑性しんぴょうせいに欠ける。
 心身ともにボロボロになったエレナが辿たどり着いたキャンプ場という店(?)は快適かいてきかつ安全で、大勢の人が集まっており、その誰しもが美味おいしい料理や酒を楽しんでいたのだという。
 ……いや、以前私もその山の麓に行ったことがあるが、何もない草原だったはずだ。
 そもそもあのあたりには道どころか、近くに村だってない。
 エレナがつかれきってねむってしまい、夢を見ていたと言われたほうがよっぽど信じられる。
 とはいえ、今日はどうせ暇だ。
 加えて『キャンプ場があってもなくてもご飯をおごってやる』と言われたら、ついていかない理由もない。
 そんなわけで、私はエレナから話を聞いた翌日、彼女に連れられてくだんの山にいた。
 とはいえ麓まで辿り着いたものの、そこには以前と同様、草原が広がるのみである。

「ここまで来たのはいいけど、どうやってそのキャンプ場とやらに行くんだ?」
「ちょっと待ってくれ。ええっと……あった! あれだ! 木の枝にむすんである布を道標みちしるべにすればキャンプ場まで辿り着けるんだ」

 エレナの指差す方向には、馬車がギリギリ通れるくらいの細い道があり、それに沿うようにして青い布が結びつけられた枝のついた木が何本か立っていた。
 ……これを頼りに進めば、目的地に辿り着く、ということか。
 どうやら、エレナの夢だったという線は消えたらしい。
 しかしそのキャンプ場とやらは、どうしてこんな場所にあるんだ?
 どうせだったら、もっと街の近くに作ればいいのに。
 そんな風に思いながら、細い道を進むと、すぐにはばの広い道に出た。
 見ると、青い布が結びつけられた枝のついた木は、その道沿いにまだ何本も立っているようだ。
 なんだ、すぐ近くにしっかりした道があるなら、あと少し頑張がんばって切り開いて、誰もが気付けるようにしたほうがいいだろう。
 で、看板かんばんでも置いておけば客がもっと来るのではないのか?
 思わず首をひねってしまった。


 そのまましばらく歩き続け、ほんの少しだけ山を登ると、大きな広場に出た。
 今目の前には、木でできた高いさくがある。
 柵をへだてた向こう側には、同じく木でできた大きな建物が建っている。

「な、なんだあれは!? こんな場所に、ここまで大きな施設があったなんて……」

 建物を見上げながらおどろく私に、エレナは少し得意げに言う。

「やっぱり夢じゃなかったんだな。しかもあの建物の中は、夜になっても真っ暗にはならないんだぜ。どういう仕組みかはわからないけどな。そして、そのおかげで俺は日が落ちてからでもここを見つけられたってわけだ」

 しかし、なんでこんな大きな施設があるのに、街でうわさになっていないんだ?
 そんな風に不思議ふしぎに思っていると、声がする。

「いらっしゃいませ! ようこそ、イーストビレッジキャンプ場へ!」

 視線を下に向けると、木の柵には馬車が通れるくらいの大きさの穴――出入り口なのだろう――が空いているのに気付く。
 そのすぐ近く、柵の内側に小さな小屋のような建物があり、声のぬしはそのそばに立っていた。
 長くて先のとがった耳をした、エルフ族の女性。
 魔法にけた種族であるエルフ族は数が少なく、大きな街でもたまにしか見かけない。
 そんなエルフ族である彼女は、食事処しょくじどころ給仕きゅうじのような可愛らしい衣装いしょうを着ていた。
 エレナはその女性と既知きち間柄あいだがららしく、気安く右手を挙げる。

「少し前にここにめてもらったエレナだ。あの時は本当に助かったよ。今日はパーティの仲間と一緒に来たんだ」
「エレナさん、お久しぶりです。また来てくれたんですね。ありがとうございます!」

 そう言って屈託くったくない笑みを浮かべるエルフ族の女性を見て、エレナは感動したように身をふるわせる。

「ああ、やっぱり夢じゃなかったんだな……! 『ありがとう』はこっちのセリフだ。今日は二人で一泊したい。またあの美味うまい飯と酒を頼むぞ!」
「はい、かしこまりました。お連れの方は初めてのご利用かと思われますので、当キャンプ場の説明をさせていただいてもよろしいでしょうか?」

 エルフ族の女性が私のほうに視線を向けてきたので、私は頭を軽く下げる。

「ミリーだ、よろしく頼む。それにしてもずいぶんと可愛らしい格好をしているんだな」
「私はサリアと申します。こちらこそよろしくお願いいたします。そして、服装をおめいただき、うれしいです! この服はマスターの故郷こきょうに伝わる、メイド服です。とっても可愛らしいですよね!」

 ほう、私の知っているメイド服とはだいぶ違うな。
 実用性よりも見た目を重視しているような印象を受ける。
 そんな風に考えながらサリアの服を観察していると、彼女はメイド服のはしを両手でまんでうやうやしく一礼してきた。

「それでは改めまして――イーストビレッジキャンプ場へようこそ。当キャンプ場は一泊、銀貨五枚で泊まれる宿泊施設です。こちらで貸し出しております、宿泊用のテントを施設内のお好きな区画にご自身で設営していただきます」

 一泊銀貨五枚か。街にある通常ランクの宿屋と同じくらいか。
 ただそうなると一つ疑問がある。

「テントに泊まるって……宿泊施設なのにか? それに自分たちでテントを設営しないといけないっていうのもめずらしい」

 正直、宿泊施設というより野営地と呼んだほうが適切な気すらしてしまう。
 それで宿屋と同じ値段なのだから、大丈夫なのかと心配になってしまったわけだ。
 しかし、サリアは笑顔で頷く。

「ええ。ご自身で選んだ場所に、ご自身でテントを設営すること自体がキャンプ場の醍醐味だいごみの一つですから。中には、ご自身で作ったテントを持ち込まれるお客様もいらっしゃいますよ」

 エレナもそれに同意する。

「まあ少し面倒な気持ちはわかるけど、寝具しんぐやわらかくて気持ちいいぞ。下手へたな宿なんかよりもよっぽど快適だ」
「そうなのか。すまなかった。続けてくれ」

 私がそう言うと、サリアは説明を再開する。

「かしこまりました。と言ってもテントを設営したあとは、ご自由にお過ごしいただくだけですけどね。そしてこちらのキャンプ場にある施設は、全てご自由にお使いいただけます。食事やお酒を楽しむのもいいですし、川で遊んだりりをしたりするのもよいかと。それ以外にも本の貸し出しサービスを利用される方や、温泉でゆっくりとつかれをいやされる方も多いです」

 それを聞いて、私は思わず叫ぶ。

「お、温泉!? ここには風呂ふろがあるのか!?」
「はい、当キャンプ場自慢じまん大浴場だいよくじょうがあります。温泉だけを目的に足を運ばれるお客様も大勢いらっしゃいますよ」
「そうそう、この前助けてもらった時もクタクタだったから、マジでみたなー!」

 サリアの言葉にエレナはそう同意した。
 私はエレナに詰め寄る。

「エレナ、そういうことは先に言え。温泉があるというだけで、私はついてきただろう。それくらい魅力的みりょくてきな要素だぞ! そもそも風呂なんて、銭湯せんとうか貴族の屋敷やしきくらいにしかないんだし!」

 身体からだよごれをお湯で落とすのは、贅沢ぜいたくなこと。
 普段は川で水浴びをするか、井戸の水で身体をくくらいしかできないのだ。
 銭湯はあるにはあるが、相当値が張るからいい報酬ほうしゅうの依頼を熟した時のご褒美ほうび的な感じでしか行けないし。
 だからこそ宿屋と大差ない値段で風呂に入れるなんて、本当に信じられない。
 しかしサリアは、それより信じられないことを口にする。

「ふふ、ミリーさんのお気持ちはわかります。私も従業員特権で毎日温泉に入っておりますが、とても幸せですもの」

 毎日だと!? なんてうらやましい!
 私はあまりの衝撃しょうげきに、言葉を発することすらできなかった。
 それを見てサリアは「ふふふ」と笑い、説明を続ける。

「さて、それではお食事やお飲み物に関しても説明させていただきます。食材や飲み物の持ち込みは全て自由です。調理器具の貸し出しも行っておりますので、必要がありましたら、あちらの管理棟かんりとうまでおしください」

 サリアが指差したのは、先ほどまで見上げていた、大きな建物だった。
 そして、彼女は声のトーンを一つ落とす。

「また、食材や飲み物の販売も行っているのですが……申し訳ないことに、お酒はお一人様五本までの販売とさせていただいております」

 私は首をかしげる。

「んっ? 宿泊施設で酒の販売を制限するなんて珍しいな」
「ええ。以前ドワーフのお客様方が、際限さいげんなくお酒を飲まれたので……」
「ああ、なるほど」

 それは納得だ。ドワーフの酒好きは有名だからな。
 やつらは気に入った酒があると、有り金全てをはたいてでも飲み尽くすのだ。
 ただ、その話が本当なら、ドワーフが気に入るほどの酒があるということになる。
 私もあとで購入こうにゅうしてみようか……
 そう考えていると、サリアが「そして注意事項を説明させていただきます」と口にする。

「こちらのキャンプ場では、いかなる理由があっても犯罪行為は許されません。そのような行為があった場合、敷地内から自動的に追い出されることになります」

 思わず私は問う。

「犯罪がご法度はっとなのは当然だろうが……自動的にっていうのは、どういうことだ?」
「こちらのキャンプ場には特殊とくしゅな『結界』が展開されております。それにより、犯罪行為が感知されると、転移魔法で強制的に敷地外に転移させられてしまうのです。そして今後、キャンプ場の敷地内に入ることができなくなります」
「て、転移魔法!?」

 そんなまさか!? 転移魔法はこの国でも、数人しかあつかえなかったはずだぞ!?

「ええ。また、結界内の全ての暴力行為も無効化され、転移させられます。なので、犯罪行為を行わない限り、お客様の安全は保証されるのです」
「……そんな高位な魔法、見たこともない……とても信じられないな」
「実際に試してもらったほうが早いかもしれませんね。ミリーさん、どうぞこちらに。こちらの丸太まるたを剣でも魔法でも構わないので、きず付けてみてください」

 サリアの言葉の意図がつかめず、困惑こんわくする。
 Cランク冒険者である私なら、こんな丸太ごとき一撃いちげきぷたつにできる。
 それをここで見せたところで、なんの意味があるのだろう……
 そう思っていると、サリアが言う。

「この丸太はこのキャンプ場の所有物なので、結界の効果によりどんなことをしても傷付きません。遠慮えんりょなく試してみてください」
「……わかった、この丸太を斬ればいいんだな?」
「ええ」

 こしに差した剣をさやから抜き、丸太に向かってかまえる。
 剣を振るう前に丸太を観察してみるが……魔法が発動しているようには見えないな。
 よし、言われた通り試してみるしかあるまい。

「せいっ!」

 そんな気合の入った声を上げながら剣を振るったのだが――

「……っ!?」

 剣が丸太に当たる瞬間、何か見えないかべのような物にさえぎられた感覚があった。
 そして実際、剣は丸太にれることなく、その手前で止まっている。

「やっぱりミリーも駄目だめだったか。俺も前回試してみたけど、傷付けられなかったんだよ」

 そうエレナは言うが、私は平静ではいられない。

「ちょ、ちょっと待ってくれ! 頼む、もう一度挑戦ちょうせんさせてくれ!」
「どうぞ試してみてください。ちなみにこちらの丸太も貸し出しております。悪意ある行為でなければ外に追い出されることもないので、魔法の練習にもってこいなんです」

 そう笑顔で言うサリアを後目しりめに、私は魔力をり始める。
 くっ! さっきはまさか攻撃こうげきふせがれるわけがないと油断ゆだんしていただけだ。
 今度は本気でいく!

あらぶるほのおよ、剣にまといてやし尽くせ!」

 剣に炎を付与する、上位魔法。
 私が使う魔法の中でも最高の攻撃力をほこる、これならどうだ!
 なんて思いながら再度剣を思い切り振るうも……結果は惨敗ざんぱい
 丸太は傷付くどころか、げてすらいない。
 さすがにこれは少しへこむ……
 私がかたを落としていると、サリアがはげましてくれる。

「あんまり落ち込まなくてもいいと思いますよ。当キャンプ場ができてから、まだ誰も丸太を傷付けられていませんから」
「そ、そうなのか!?」
「ええ。むしろ安心していただきたいくらいです。当キャンプ場内であればどこでもこのような力が働きます。夜中に魔物や男性におそわれる心配もないので、ゆっくりとお休みいただけますよ」
「おお、それはすごいな!」
「喜んでいただけてよかったです。さて、それ以外にもいくつか注意事項がございます。まず、当キャンプ場にある物の持ち出しが禁止されております。こちらも暴力行為と同様に、物品を盗む意思と行動が検知けんちされた瞬間しゅんかんにその物品を没収ぼっしゅうした上で、外に放り出されることになります。そして当然、以後出入り禁止にさせていただきます」

 窃盗行為せっとうも感知するとは……本当にこの結界とやらは、どういう仕組みなんだ?
 そう思いながらも頷いていると、サリアは説明を続ける。

「そして、他のお客様もおりますので、あまりさわぎ過ぎないよう、お願いします。周りに気をつかいたくないのであれば、端っこのほうにテントを張っていただけますとさいわいです。人が少ないので、多少は騒いでも問題ないかと思います。また、夜八時に管理棟の明かりが消え、最低限の明かりだけになりますのでご注意ください。それ以降はお休みになられる方も大勢いますので静かにお過ごしいただけますと助かります」

 サリアはそこで一旦言葉を切り、人差し指を立てる。

「最後に、当キャンプ場はできるだけ綺麗きれいにご利用ください。ゴミも、なるべく纏めてくださいませ。何かわからないことがありましたら、遠慮なく従業員に聞いてくださいね」
「ああ、全て了承りょうしょうした」
「ありがとうございます! それでは、テントなどを貸し出しますのでこちらへどうぞ」

 私たちは小屋の中に入った。
 サリアは『備品室』と書かれた部屋に消え、少しして戻ってきた。

「それではこちらが、宿泊用のテントとマットと寝袋ねぶくろになります。テントの設営方法は説明書に書いてありますが、わからないようでしたら従業員が手伝てつだいます。どちらにお持ちしましょうか?」
「ああ、俺たちではこぶから大丈夫だぜ」

 エレナがそう言うと、サリアはぺこりと頭を下げる。

「ありがとうございます。それでは当キャンプ場をお楽しみください!」


 サリアから道具を受け取った私たちは、キャンプ場のおくへ進んでいく。
 私は、口を開く。

「なんとも変わった場所だな。それにしても、結界とやらはどういう仕組みなんだ……」
「まあ細かいことは気にすんなよ。そんなことより、さっさとテントを張って昼飯にしようぜ。ここの飯は、マジで美味いからよ!」
「確かに腹が減ったな。さて、どこにテントを張るかな」

 そう言いつつ、私はあたりを見回す。
 キャンプ場は、思ったよりも広いようだ。森や川なんかもある。
 そしてすでに、私たち以外にも大勢の客がいた。
 辺鄙へんぴな場所だというのに、思ったよりも客が来ているんだな。
 すみっこには五、六人のドワーフがいて、昼間っから酒を飲んでいる。
 なるほど、大騒ぎするのを前提に、隅のほうにテントを張っているわけだ。
 そこから少し離れた場所にいる小柄な男は、ハーフリングか。
 テントの前に、日差しをさえぎる大きな布を張り、椅子いすに座って本を読んでいる。
 そういえば本の貸し出しをしていると言っていたが、手に持っているのはそれだろうか。
 また、中央の開けた場所では犬の獣人じゅうじんたちが羽のような物を打ち合ったり、丸い円盤えんばんのような物を投げ合ったりして遊んでいるようだ。
 あの遊具も貸し出しているのだろうか。
 そして、あそこにいるのは……貴族かな。
 大勢のお付きと一緒に優雅ゆうがに食事を楽しんでいる。
 ……ん? あのドレスを着た女性、この国の王女に似ているような……
 いやまさか、他人の空似そらにってやつだろう。
 さすがにこの国の王女がこんな場所に来ているはずがない。
 とはいえ、貴族の近くで過ごして、何かしら粗相そそうをしてしまったらおそろしい。
 エレナも同じことを考えていたようで、口を開く。

「貴族たちとは離れたところにテントを張ろうぜ」
「同感だな。う~ん、そこ以外ならどこでもいいぞ」
「じゃあ前回俺が泊まったところにするか。夜になったらも見られるしな」
「いい物?」
「それは夜になってからのお楽しみだ。さあ、テントを張って飯にしようぜ」

 こうして私たちは、適当なところにテントを張ることにした。
 このテントは私たちが持っている野営用の物とはまるで違う。
 設営も簡単で、丈夫な上にとても軽い。雨がみ込んでくる心配もなさそうだ。
 寝袋はそれほど分厚ぶあつくない割に、手を入れてみると温かい。
 寒い夜でも、これがあればこごえることはないだろう。
 そして、マットは軽いのにとても柔らかい。
 これを寝袋の下に敷けば、多少ゴツゴツした地面の上でも気持ちよく眠れるだろう。
 私は手を動かしつつ、言う。

「なあ、このテントや寝袋は販売していないのか? 私たちが使っているやつよりも軽くてよっぽど上質だぞ」
「前回来た時はそんなことを気にしている余裕はなかったけれど、確かにそうだな。あとで誰かに聞いてみようぜ」

 そんな会話をしながらテントを設営し、私たちは管理棟と呼ばれていた大きな建物へ向かう。

「……なんとも立派な建物だな」

 そんな風につぶやきながら、とびらを開ける。
 すると、中には褐色かっしょくはだと尖った耳を持つ、ダークエルフがいた。
 彼女もサリアと同じで、可愛らしいメイド服を着ている。

「いらっしゃいませ。ここでは料理のご注文を受けたり、食材の販売や調理器具の貸し出しを行ったりしております。本日は何をお求めですか?」
「そろそろ飯にしようかと思ってな。何かおすすめはあるか?」

 私のそんな質問に、ダークエルフは少し考えてから口を開く。

めん料理の『焼きそば』、肉料理の『グリルチキン』、魚料理の『アヒージョ』、チーズを使った料理の『チーズフォンデュ』が本日のおすすめです。他にも人気のメニューはこちらに纏めてあります」

 渡されたメニューを見てみるが、知らない料理ばかりだ。
 説明書きはあるが……まぁ、こういう時はおすすめを頼んでみるのが一番だろう。
 どれもそれほど高くないし。
 そう考えていると、先に食べる物を決めたエレナが口を開く。


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