キャンピングカーで往く異世界徒然紀行

タジリユウ

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【番外編】キャンピングカーとアウトドアショップ②

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【お知らせ】
本日より別作品の『アウトドアショップin異世界店 冒険者の始まりの街でオープン!』2巻が発売です∩^ω^∩
こちらの作品もよろしくお願いいたします!





「ここがその店か」

 2階建ての建物の上にはこの世界の共通語というこの国付近で使用されている文字でアウトドアショップと書かれている。

「それほど大きくはない店ですが、大勢のお客さんがおります」

「みんな冒険者さんみたいだね」

「ホー!」

 そのお店は小さいながらも大勢の冒険者のお客さんで賑わっていた。その様子を確認して、一行は店の中に入る。

「いらっしゃいませです!」

 店の中に入ると、可愛らしいキツネ耳を生やした女の子が出迎えてくれた。

「こんにちは」

 挨拶を返しつつ、みんなと相談していた通り、まずは店内の様子や店に並べられている商品を見渡す。

「どうですか、シゲト?」

「……やっぱりここで売っている商品は俺の故郷で見たものばかりだ。間違いなくこの商品を仕入れているか製造しているのは俺と同郷の人だな」

 店内には方位磁石や浄水器、ブルーシートなど、元の世界で見てきた物が数多くあった。この時点でシゲトは確信した。

「なにかお探しですか?」

 シゲトとジーナがヒソヒソ話をしていると、先ほどのキツネ獣人の女の子と同じ緑色のエプロンを付けている女性が声をかけてきた。

 金髪のショートカットで、とても綺麗な女性であったが、その女性は左肩から先がなかった。

「あっ、いえ!」

 突然声をかけられて驚くシゲトだったが、冒険者ではない格好で店内をいろいろと見て回って仲間とヒソヒソ話をしている、魔物を肩に留めた自分は怪しかったのではないかと自覚した。

「このお店の商品についていろいろと聞きたいのですが、責任者の方とお話をできませんか?」

 これらの商品を誰が手に入れているのか、その人がどんな状況なのかわからないこともあり、慎重に女性店員へ尋ねるシゲト。

「……少々お待ちください。テツヤ、この方がこの店の商品について聞きたいことがあるみたいだ」

 その女性はシゲトの黒髪や顔立ちを見てからテツヤという者を呼ぶ。

 シゲトたちは気付かなかったが、このお店には可愛らしいキツネ獣人の女の子と金髪ショートの美人店員の他にもうひとり影の薄い店員がいたらしい。

「はい、当店の商品につきましてなにか……」

「………………」

 テツヤとシゲトがお互いに顔を合わせると、お互いに何かを察したらしい。

 この世界では黒い髪をした人はそこそこに珍しいことと、顔立ちがどう見ても日本人ということもあり、同じようにこの世界へ転移してきた2人はすぐに理解をしたようだ。



「驚いたなあ。もしかしたらと思っていたけれど、この辺りに同じ故郷の人がいたとは……」

「テツヤと同郷の者とは驚いたな」

「びっくりしたです!」

 お店の営業が終わり、アウトドアショップの2階にある住居スペースへと案内されたシゲトたち。

 リリアとフィアはテツヤが異世界から来たということを知っているが、ジーナやコレットたちはまだ異世界から来たということを伝えられていないため、遠い同郷の者ということになっている。

「ああ、こっちも驚いているよ。とはいえ、こっちはつい先日同郷の者に会ったばかりだから、そこまでは驚いていないけれどな」

「えっ、シゲトさんの他にもいるの!?」

「ああ。むしろこのお店の情報はそこにいる人から聞いてここまでやって来たんだ。この街に冒険者のために安くキャンギアを売っているアウトドアショップという名前の店があると聞いて、すぐに察したってさ」

 キャンプ場の設立者であるユウスケからは同じ世界からやってきた人がいたら、キャンプ場のことを話してもいいと伝えられていた。

 冒険者の始まりの街で安くキャンギアを販売し、ここまで案内してくれた3人組の駆け出し冒険者や他の冒険者からこのお店の評判を聞いて、テツヤと直接対面したシゲトはそのことを話しても問題ないと判断したようだ。

「なるほど。もしかして故郷に帰る方法があったりするのかな?」

「いや、そっちの方はその人も俺もさっぱりだ。のんびりと旅をしながら、その方法がないかを一応探している。まあそこまで帰りたいかというと、そうでもないんだけれど。両親に元気でやっていることを伝えたいくらいだ」

「はは、俺とまったく一緒だよ。故郷に戻れたとしても、社畜の生活に戻りたくないなあ」

「おお、テツヤさんも同士だったか!」

 ガシッ

 なぜかお互いが社畜であったというところに深い共感を覚えて握手をするシゲトとテツヤ。たとえ会社が違っても、共に残業時間の多いブラック企業に不満を抱えている仲間と認識したらしい。

「それにしてもよくここまで来てくれたよ。あんまり広い店じゃないけれど、みんなゆっくりと過ごしていってね。たぶん気付いていると思うけれど、俺は故郷の物を取り寄せる能力があるんだ。キャンプギアだけじゃなくて、インスタントスープとかアウトドアスパイスとかも購入できるから晩ご飯は楽しみにしてくれ」

 この店が閉店時間になるまで店内で販売している商品を見ていたシゲトはそのことは多少予想していた。

「ありがとう、お世話になるよ」



「へえ~それじゃあ、シゲトさんはキャンピングカーを召喚できるのか! それは羨ましいなあ! 俺もいつかはキャンピングカーをほしいと思っていたんだ!」

「俺としてはテツヤさんの能力もすごく羨ましいけれど、気持ちはわかるよ。やっぱりキャンプをしたことがある人はキャンピングカーに憧れている人が多い気がする。自然の中を楽しむキャンプもいいけれど、柔らかなベッドでゆっくりと休めるキャンピングカーもいいものだ」

 テツヤが作ってくれた元の世界の料理をみんなで楽しみ、シゲトも自分の能力のことをテツヤたちに話した。

 やはりお互いの能力についてはお互いに羨ましく思っているようだ。

「シゲトのキャンピングカーはすごく速くて、冷たくなる箱や火を出せるコンロもありますよ」

「それに冷たい風や温かい風が出てきて、とっても不思議なんだよ!」

「ホー!」

 ジーナとコレットはキャンピングカーの良いところを伝える。こちらの異世界の住人にとって、冷蔵庫やコンロや冷暖房は魔法以上に不思議なようだ。

「へえ~みんな楽しそうに旅をしているんだな。いい旅の仲間がいてなによりだよ」

「いろんな場所を旅するのも楽しそうです!」

「ああ。そのキャンピングカーというものをぜひ見てみたいな」

 シゲトたちが楽しそうに話す様子を見て、テツヤたちもそのキャンピングカーというものに興味がわいたらしい。

「もちろん、構わないよ。これくらいの人数なら全員乗れるし、店が大丈夫そうなら、一緒にどこかへ行こうか?」

「おお、それはありがたい! ちょうど明日と明後日は店が休みだから、この街の近くにある河原でキャンプでもしない?」

「それはいいな! ちょうどキャンプ場の人からいろいとろとお土産をもらったんだ。ぜひ一緒に楽しもう!」

 どうやら翌日はキャンピングカーに乗って近くの河原まで行き、河原でキャンプすることに決まったようだ。
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