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第24話 交渉
しおりを挟む「……なるほど、少なくともあの鏡は一度繋がってしまえば、勝手に閉じるようなことはないんだな」
「周囲の魔力を吸収して繋げていて、半永久的に動き続けるから大丈夫。私が張った結界もその原理を使っている」
昼食を食べたあとはお互いの世界のことや知りたいことを順番に聞き合っている。俺が一番知りたかったこの鏡についてリリスがよく知っているようで助かった。
どうやらこの鏡は周囲の魔力とやらをエネルギーとし、チャンネルのようなものをいじらない限り半永久的に俺の世界へと繋がっているらしい。異世界へ行っている最中にあの鏡が閉じてしまったらどうしようかと思っていたが、その心配はないようでほっとした。
「今度は私の番。そのスマホはどんな仕組みをしているの?」
「それは俺にもわからないな。こっちの世界だと技術が発展し過ぎて一般人には詳しい機械の仕組みはわからないんだよ」
「なるほど……」
俺の方はこの世界のことや魔法のことについてをリリスから聞いている。リリスの方はというと、俺の世界の魔法ではない機械に興味を持ったようだ。
先ほどスマホを見せた時の反応は実に面白かったな。ネットは通じないけれどハリーやリリスを撮った動画を見せたり、地図や必要なものをいつでも調べられると教えたらものすごく驚いていた。あまりにも高度過ぎて魔道具とも違うこともわかってくれたみたいだ。
ただ残念だがスマホの仕組みなんて俺には1ミリもわからない。
「あとはこんなものもあるよ」
「キュキュ!」
「っ!?」
俺がドローンを飛ばすと、先ほど以上に驚きの表情を浮かべるリリス。
そしてハリーは俺とリリスの話が少し退屈だったのか眠そうにしていたけれど、俺がドローンを起動するといつものように元気よく追いかけていく。
「これはドローンといって、無人で自由に空を飛ばせる機械だよ。ほら、カメラという映像を通して、その様子をこっちに映し出せるんだ」
「………………」
モニターを通して、ハリーがドローンを追いかけている様子が映し出されている。
リリスは絶句という言葉がふさわしいくらいに驚いているな。この世界の魔法がどんなものかはわからないけれど、さすがにこのドローンのようなことができる魔法なんかはないだろう。
「ケンタの世界には便利な道具で溢れている……。文字通り世界がまったく違う」
あっ、やべ!
リリスのリアクションが予想以上に大きく、つい調子に乗ってドローンまで見せてしまった。ドローンは便利な道具でもあるが、軍事利用すればとても利用価値がある。遠隔で操作でき、敵国の地形なんかを簡単に偵察することができ、武器を搭載すれば怪我をする可能性なく敵を攻撃できてしまう。
今のところリリスに敵意はなさそうだったけれど、もしもこの国が戦争状態でこちらの世界の技術を欲しがったりすると非常にまずい。
「今度はこっちの質問の番だ。この国がどんな国なのか教えてほしい」
平静を装いつつ、ドローンを戻しながらリリスに質問をする。
「ここはラノテア国という大きな国で、このミスノル湖は国の東側に位置している」
「ふむ、ラノテア国か。まさか、他の国と戦争中とかじゃないよな?」
「……昔はこの国だけでなく、多くの国が戦争をしていたけれど今はしていない」
「なるほど」
どうやら戦争なんかはしていないらしい。それでけでも少しだけ安心できた。
「この辺りは強い魔物もいないし、王都からは離れているから比較的安全。それに心配しなくてもケンタの世界に何かしたり、こちらの世界の争い事に巻き込むつもりはない」
「………………」
今の質問で俺の意図まで読んだらしい。
リリスは幼く見えるけれどだいぶ賢いな。……というか、もしかすると見た目通りの年齢ではないのかもしれない。
「師匠と私はそういった争い事にはずっと無縁で魔法の研究をしてきた。もちろん他の人にはケンタのことは言わないし、こっちの世界にいる間の身の安全はできる限り保証する。だからケンタの世界のことをもっと詳しく教えてほしい!」
そういいながら目をキラキラさせて俺の方へ詰め寄ってくるリリス。
ああ、あれだ。きっとこの子は知的好奇心が強い研究者なんだな。俺の学生時代の友人にも三度の飯より研究が好きでひたすら研究に明け暮れていたやつがいた。
「……ああ、了解だ。俺もせっかく繋がったこの世界のことをもっとよく知りたいからな」
とはいえ、俺の自分の世界の情報を話す時は少し注意するとしよう。軍事方面に使えてしまいそうな知識の取り扱いは厳重にだな。
そのあとリリスと話をして、いろいろと取り決めをする。まず、この小屋と鏡のことはお互いに他の誰にも話さないようにした。お互いに面倒なことを避けるため秘密にしておく。
そしてあの鏡について、観察するのは構わないけれど、基本的にはいじらないことにしてもらった。もしもどうしても触れたり調べたいことがあるのなら、俺が元の世界に戻ってからにすることを約束してもらう。
俺がいきなりこっちの世界から帰れなくなるのはさすがにご免だからな。リリスもそこについては了承してくれた。
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