『億り人』になって田舎に家を買ったら、異世界と現代日本を行き来できるようになった件。~お金と文明の利器を使ってのんびり生活~

タジリユウ

文字の大きさ
34 / 110

第34話 鳥の肉

しおりを挟む

「……え~と、おはようリリス。なにかあったの?」

 小屋の方へ戻るとリリスは起きていたみたいだ。

 しかし、なぜかものすごく不機嫌な顔をしていた。

「昨日の夜にすごくおいしそうな香りがして、ケンタたちの方を見ていた。あの料理はなに?」

「あ、ああ。あれは唐揚げという料理だよ。熱した油に衣を付けた肉を浸すと衣の中に肉の旨みを閉じ込めることができるんだ。肉自体にタレで味をしみ込ませているから――」

「私も食べたい!」

「………………」

 ものすごく食い気味でこちらに詰め寄ってきた。

 なんだ、唐揚げが食べたかっただけか。というか……。

「もしかして昨日の晩ご飯は食べてないの? 携帯食がまだ残っているって聞いていたけど?」

「……目の前であんなにおいしそうな料理を食べているのにあの固くて臭いのきつい携帯食は食べたくなかった」

「な、なるほど……」

 気持ちはわからなくもないけれど、今日改めて言ってくれればそれくらい作るのだから、我慢すればいいのに……。いつも料理を食べているところを見てちょっと思っていたけれど、リリスはグルメというか、食いしん坊なんだな。

「結界の届くギリギリの範囲でケンタとハリーに合図を送っていたのにずっと気付いてくれなかった……」

「えっ、全然気づかなかった。それはごめん」

「キュウ?」

 どうやらザイクとビーターが見えない結界ギリギリのところまで近付いて合図を送ってくれたようだけれど、それには気付いていなかった。

 俺とハリーは小屋の方を背にして座っていたし、暗い中だと目の前にある焚き火へ視線が行ってしまうからそのせいかもしれない。

 というか、そこまでするのなら、一緒に来ればよかったのに。いや、一応この小屋と鏡のことがバレないようにリリスが配慮してくれたのかもしれない。

「残念だけど、もう全部食べちゃったし、食材ももうないんだ。ダナマベアの肉とかでも代用できるのかな? ……駄目か、やっぱり唐揚げには鶏肉が一番適しているらしい」

 すでにグロウラビットの肉はハリーも含めた4人でペロリとたいらげてしまった。

 まだ少し残っているダナマベアの肉で唐揚げを作ってみようかと思ってスマホで調べてみたけれど、そういえば牛肉や豚肉の唐揚げを見たことがないと思ってスマホで調べてみたら、他の肉だと水分量が少なく硬めでパサついてしまうため、鶏肉が最適らしい。

 そういえばグロウラビットの肉もモモ肉以外は少しパサついていた気がする。和牛なんかは特に水分量が少なく、唐揚げには向かないようだ。

「うちに鶏肉はないから街まで買いに行くか。それじゃあお昼ご飯は唐揚げにしよう」

 2食連続で唐揚げとなってしまうが、リリスがここまで意思表示したのは初めて見たし、昨日はウサギ肉だったからいいだろう。

 お店で買ってきた唐揚げもうまいのだが、やはり昨日の揚げたての唐揚げは本当においしかった。せっかくだから自分で作るとしよう。

「……鳥肉があればいいの?」

「ええ~と、そうだね、鳥ならおいしく食べられそうかな」

 俺が言っていたのは鶏の意味の鶏肉だったのだが、鶏の他にも雉や七面鳥など鳥の肉は比較的水分量が多いらしい。

「ちょっと待ってて」

 そう言いながらリリスは目を閉じて動かなくなった。

 もしかして、なんらかの魔法を使っているのだろうか?

「……いた」

「うおっ!?」

「キュ!?」

 突然目を見開いたと思ったら、突然リリスの身体が宙へ浮き、そのまま空を飛んでいった。

 ここに来る時も風魔法で空を飛んできたと言っていたが、実際にこの目で見るのは初めてだ。すごいな、まさか魔法の力で空を飛べるとは……。

 そして空に何度か激しい光が煌めき、大きな音が轟いた。少しするとリリスが空からゆっくりと降りてきた。リリスの手には3羽の大きめの鳥が握られていた。

「あと必要なものはある?」

「……いえ、大丈夫です」

 思わず敬語になってしまった。

 さっきのは探知の魔法か何かを使っていたのかもしれない。それにしても魔法の力は本当にすごいのだな……。一瞬で3羽もの獲物を狩ることができてしまうとは。俺の世界の技術も便利だが、魔法もかなり便利である。



「……っ!? 外はサクッとしていて香ばしく、中はとってもジューシーでおいしい!」

「キュキュ♪」

 先ほどリリスが獲ってきてくれた素材を使って唐揚げを作った。もちろん鳥の解体なんてしたことのなかった俺だが、スマホで調べながらなんとかといった感じだ。

 以前にザイクがダナマベアの解体をしているところを見て少し耐性がついていたから助かった。あれだけ大きな魔物と比べると、まだこれくらいの鳥型の魔物ならなんとかそれほど気持ち悪くならずに解体することができた。

 さすがに解体したのは1羽だけで、残りの2羽はリリスの収納魔法で保存してもらったが。

「うん、昨日のグロウラビットの肉よりもこっちの方がおいしいかもしれないな」

 もちろん自分で解体をして苦労したという補正もあるかもしれないが、昨日食べた唐揚げよりもおいしくできた気がするし、市販の鶏肉の唐揚げよりもおいしい。

 やはり俺の世界の肉よりもこちらの世界の肉の方がうまい気がする。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

辻ヒーラー、謎のもふもふを拾う。社畜俺、ダンジョンから出てきたソレに懐かれたので配信をはじめます。

月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
 ブラック企業で働く社畜の辻風ハヤテは、ある日超人気ダンジョン配信者のひかるんがイレギュラーモンスターに襲われているところに遭遇する。  ひかるんに辻ヒールをして助けたハヤテは、偶然にもひかるんの配信に顔が映り込んでしまう。  ひかるんを助けた英雄であるハヤテは、辻ヒールのおじさんとして有名になってしまう。  ダンジョンから帰宅したハヤテは、後ろから謎のもふもふがついてきていることに気づく。  なんと、謎のもふもふの正体はダンジョンから出てきたモンスターだった。  もふもふは怪我をしていて、ハヤテに助けを求めてきた。  もふもふの怪我を治すと、懐いてきたので飼うことに。  モンスターをペットにしている動画を配信するハヤテ。  なんとペット動画に自分の顔が映り込んでしまう。  顔バレしたことで、世間に辻ヒールのおじさんだとバレてしまい……。  辻ヒールのおじさんがペット動画を出しているということで、またたくまに動画はバズっていくのだった。 他のサイトにも掲載 なろう日間1位 カクヨムブクマ7000  

【完結】うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。

かの
ファンタジー
 孫の雷人(14歳)からテレパシーを受け取った光江(ばぁば64歳)。誘拐されたと思っていた雷人は異世界に召喚されていた。康夫(じぃじ66歳)と柏木(探偵534歳)⁈ をお供に従え、異世界へ転移。料理自慢のばぁばのスキルは胃袋を掴む事だけ。そしてじぃじのスキルは有り余る財力だけ。そんなばぁばとじぃじが、異世界で繰り広げるほのぼのスローライフ。  ばぁばとじぃじは無事異世界で孫の雷人に会えるのか⁈

精霊さんと一緒にスローライフ ~異世界でも現代知識とチートな精霊さんがいれば安心です~

ファンタジー
かわいい精霊さんと送る、スローライフ。 異世界に送り込まれたおっさんは、精霊さんと手を取り、スローライフをおくる。 夢は優しい国づくり。 『くに、つくりますか?』 『あめのぬぼこ、ぐるぐる』 『みぎまわりか、ひだりまわりか。それがもんだいなの』 いや、それはもう過ぎてますから。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい

ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。 強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。 ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

処理中です...