56 / 110
第56話 気分は母親
しおりを挟む「キュキュウ~」
「一昨日食べたステーキと同じくらいおいしかった」
「2人とも気に入ってくれたみたいだね。また作ってみるよ」
クラウドワイバーンのカツは好評だった。
カツを揚げるためにはパン粉や油の処理など面倒なことが多いけれど、3人分一気に作れる上に余った分は揚げたての状態で保存できるから、多少は手間の掛かる料理を作ってもいいかもしれない。それに時間だけはいくらでもあるからな。
「食後はまたタブレットを見てもいいけれど、しばらくは寝る前に回収するからね」
「……わかった。頑張って我慢する」
予想はしていたけれど、リリスのさっきのタブレットに対する集中力はとてもすごかったから、放っておくとまた徹夜して朝まで触っていそうだ。強制的にできないよう夜中はタブレットを俺の世界へ持っていく。
俺も学生のころに初めてスマホを買ってもらった時は夜遅くまでいじっていたからリリスの気持ちは分かる。そしてリリスの集中力は俺なんかよりもすごいから、たぶん止まらなくなってしまうだろう。
多少リリスの興味が落ち着くまで、夜は没収だ。……なんだか今になってゲームは1日何時間と決めていた親の気持ちが少しだけ分かった気がする。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「キュウ~」
「おはよう、ハリー。やっぱり家のベッドはいいなあ」
「キュ」
家の良いベッドでの寝心地はレジメルの街までの往復の野営や宿のそれとは天と地ほども違う。安全で寝心地の良いベッドで毎日寝られる幸せな日本に生まれたことを感謝しないといけないな。
「それじゃあ朝食を作ってリリスと一緒に食べようか」
「キュキュ」
いつものように朝食を作って鏡を通って異世界へと移動する。
「ハリー、ケンタ、おはよう。待っていた」
「キュウ」
「おはよう、リリス。……目が赤いけれど、ちゃんと寝られた?」
小屋にはリリスがすでに待っていた。
ただ、目の周りが少しだけ赤かった。ちゃんとリリスが寝られるようにタブレットはこちらの世界へ持ってきたおいたはずなんだけれど。
「楽しみ過ぎて少しだけ寝られなかった。あと、ちょっとだけ今日何を調べるか考えていた」
「………………」
どう見ても少しやちょっとだけじゃなさそうである。
遠足が楽しみ過ぎてあまり寝られなかった子供のようだが、しばらくは仕方がないか。
「はい。あんまり集中し過ぎないようにね」
「ありがとう!」
朝食を食べ終わり、さっそくリリスにタブレットを渡してあげる。
リリスは無邪気な子供のような笑顔で喜んでいた。
「今日はドローンで遊ぼうか」
「キュキュ♪」
今日も湖のほとりの小屋でのんびりと過ごすとしよう。リリスもいろいろと聞きたいことがあるみたいだし、ドローンを操縦してハリーと一緒に遊びながら過ごすとしよう。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「リリス、悪いけれどよろしく頼むよ。でも無理はしないでね」
「大丈夫、任せて」
そしてさらに翌日。
午前中はのんびりと過ごして、軽い昼食をとったあと、ハリーにはまたキャリーケースに入ってもらった。今日は午後からリリスの飛行魔法でベリスタ村へ連れていってもらう。
レジメルの街でいろいろと購入してきたついでにお土産を買ってきたので、それを渡しに行く。それに加えて街では魚の販売をしていなかったので、以前もらっておいしかった湖の魚や野菜を購入させてもらうつもりだ。ベリスタ村の人たちはあまりお金が必要ないかもしれないから、物々交換できそうなものを持っていく。
以前のように俺とハリーだけでも行けるけれど、収納魔法を使えるリリスがいてくれると、よりたくさんの食材を持って帰ることができるからお願いした。
タブレットをプレゼントしたばかりで申し訳ないけれど、リリスも快く引き受けてくれた。ベリスタ村はそこまで距離がないので、ここからマウンテンバイクを使わずにそのまま飛行魔法で一気に移動してもらうつもりだ。
もちろんリリスとハリーが一緒にいるからといって油断はせず、服の下には防刃チョッキを着込み、すぐにクマ撃退スプレーを発射できるように用意はしてある。
「それじゃあ行こうか。ハリーもちょっとだけ我慢していてくれ」
「キュウ!」
キャリーケースもあんまり大きくないから窮屈だろうけれど、空から落ちたら大変だからな。
さあ、ベリスタ村へ向けて出発するとしよう。
151
あなたにおすすめの小説
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜
奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。
パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。
健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。
辻ヒーラー、謎のもふもふを拾う。社畜俺、ダンジョンから出てきたソレに懐かれたので配信をはじめます。
月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
ブラック企業で働く社畜の辻風ハヤテは、ある日超人気ダンジョン配信者のひかるんがイレギュラーモンスターに襲われているところに遭遇する。
ひかるんに辻ヒールをして助けたハヤテは、偶然にもひかるんの配信に顔が映り込んでしまう。
ひかるんを助けた英雄であるハヤテは、辻ヒールのおじさんとして有名になってしまう。
ダンジョンから帰宅したハヤテは、後ろから謎のもふもふがついてきていることに気づく。
なんと、謎のもふもふの正体はダンジョンから出てきたモンスターだった。
もふもふは怪我をしていて、ハヤテに助けを求めてきた。
もふもふの怪我を治すと、懐いてきたので飼うことに。
モンスターをペットにしている動画を配信するハヤテ。
なんとペット動画に自分の顔が映り込んでしまう。
顔バレしたことで、世間に辻ヒールのおじさんだとバレてしまい……。
辻ヒールのおじさんがペット動画を出しているということで、またたくまに動画はバズっていくのだった。
他のサイトにも掲載
なろう日間1位
カクヨムブクマ7000
【完結】うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。
かの
ファンタジー
孫の雷人(14歳)からテレパシーを受け取った光江(ばぁば64歳)。誘拐されたと思っていた雷人は異世界に召喚されていた。康夫(じぃじ66歳)と柏木(探偵534歳)⁈ をお供に従え、異世界へ転移。料理自慢のばぁばのスキルは胃袋を掴む事だけ。そしてじぃじのスキルは有り余る財力だけ。そんなばぁばとじぃじが、異世界で繰り広げるほのぼのスローライフ。
ばぁばとじぃじは無事異世界で孫の雷人に会えるのか⁈
精霊さんと一緒にスローライフ ~異世界でも現代知識とチートな精霊さんがいれば安心です~
舞
ファンタジー
かわいい精霊さんと送る、スローライフ。
異世界に送り込まれたおっさんは、精霊さんと手を取り、スローライフをおくる。
夢は優しい国づくり。
『くに、つくりますか?』
『あめのぬぼこ、ぐるぐる』
『みぎまわりか、ひだりまわりか。それがもんだいなの』
いや、それはもう過ぎてますから。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい
ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。
強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。
ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる