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第99話 特殊個体
しおりを挟む「なんだあれ? なんか一匹だけドス黒い個体がいる?」
ヴィオラが指示する方向へドローンを動かす。すると茶色い鱗のアースドラゴンの中に一匹だけ異なる色をした個体がいた。
「……形はアースドラゴンだけれど、鱗の色がおかしいだけでなく、身体も他の個体よりも大きい」
「おそらく特殊個体だな。魔物の中には突然変異で生まれる特殊なやつもいる。たいていは普通の個体よりも強い場合が多い。他の個体の行動からも、あいつがこの群れのボスで間違いないだろう」
「そんなやつがいるのか……」
「キュウ……」
リリスとヴィオラの言う通り、ドス黒い色をした鱗の個体は他のアースドラゴンよりも大きく、他の個体はその個体を中心に動いているようにも見える。あいつがこの群れのボスということか。
突然変異――俺の世界でも色素が薄いアルビノという個体もあったし、それと似たようなものなのかもしれない。
「……なんかすごく強そうだけれど、大丈夫?」
特殊個体とかヤバそうにしか聞こえないし、少し心配になってきた。
「はんっ、特殊個体であろうと、アースドラゴンなら問題ねえよ。ただ、少なくともリリスくらいの力がねえと危ないやつだ。あいつは俺が相手をするぜ!」
「私も倒せるけれど、他のアースドラゴンと一緒に来られると少し面倒。他の騎士や冒険者が対面すればかなりまずい。事前に偵察をしてよかった」
「そうなんだ。とっても心強いよ」
どうやら特殊個体であっても、この2人がいれば問題なさそうだ。ドローンで偵察をした意味もちゃんとあったらしい。
急いでレンダーさんに報告をしに戻るとしよう。
「なに、特殊個体だと!」
「……群れの数が多いと思っていましたが、その特殊個体のせいかもしれませんね」
ロールルの街へ戻り、早速冒険者ギルドへと向かった。すぐに冒険者ギルドマスターの部屋へ通され、報告をする。
今日はレンダーさんだけでなく、副ギルドマスターのロイマさんもいた。レンダーさんみたいにがっしりとした体格ではなく、少し細身の男性だ。
「これがアースドラゴンの巣の場所。今回偵察で見た時には特殊個体が一番奥にいて、周辺には特に多くドラゴンたちが集まっていた」
「おおっ! 巣の場所や特殊個体がいた場所までわかったのか!」
地図を広げてみんなで詳細を確認する。借りていた地図にリリスが偵察で得た情報を書き込んでくれている。
アースドラゴンの巣の場所と群れの大体の数、そして特殊個体がいた場所など、ドローンの偵察で得たすべての情報だ。
「これはすばらしい情報ですね! さすがAランク冒険者のリリスさんです」
「……私だけの力じゃない。報酬は期待している」
「おう、これだけの情報だからな! 本当に助かったぜ!」
副ギルドマスターとレンダーさんに褒められて、少しだけ複雑そうな表情を浮かべているリリス。
ドローンのおかげであることを気にしているのだろう。偵察の報酬は俺が受け取ることになっているから、あんまり気にしなくていいのに。
「特殊個体の方は俺がやるからな。あんまり周囲に他の冒険者を近寄らせないでくれよ」
「ほう、ヴィオラが出てくれるのなら特殊個体は任せるとしよう。他の者にも巻き込まれないよう最大限に注意しておく」
「承知しました。ヴィオラ様の戦いに巻き込まれれば命はないと他の冒険者たちに警告をしておきます」
……相変わらずヴィオラへの警戒もすごいな。でも、それだけすごい戦いになるということなのだろう。
そのあとはしばらくみんなで具体的な戦闘方法を話し合っていた。偵察が迅速に終わったこともあり、明日の昼から討伐するということが決まり、副ギルドマスターは急いで他の冒険者たちに連絡をしにいく。
俺は戦闘についてはさっぱりなので、大人しくそれを見守っていた。ハリーもみんなの言葉はわからないので、定位置である俺の肩の上で退屈そうにしていた。
「へえ~、これが魔道具屋か」
「キュウ!」
長い作戦会議が終わり、レンダーさんたちが今は明日の準備をしている最中だ。
リリスとヴィオラは俺が行きたかった市場へ連れていってくれると言っていたのだが、さすがに明日が決戦ということもあってやめておいた。そういったことは無事に2人が戻ってきてからでいい。
その代わりというべきか、リリスが魔道具に使う魔石を購入したいということもあって、街にある魔道具屋さんへとやってきている。昔の古本屋さんのようにいろんな物が雑多に置かれているのかと思ったら、店内は綺麗に整頓されており、様々な魔道具が並べられていた。
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