異世界と地球がダンジョンで繋がった ー異世界転移者の私ー

白木夏

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第8話

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フォノンの近くにあるダンジョン入り口に到着すると、私はしばし思考を巡らす。

「念のため武器くらいは持ち込んだ方が自然かもね」

私は収納魔法からシンプルな鉄の片手剣を取り出し、革の鞘ごとベルトに取り付けた。
白銀の美しい髪と白い肌、端整な顔立ちを持つ私が、カジュアルな服装と剣を携えた姿は周囲の冒険者たちの視線を集めてしまう。

「あの人は……?」

「すごく綺麗な人だけど、どこかの貴族令嬢か?」

ざわつく声が耳に入るが私は特に気にも留めずカイトとマリに向き直る。

「では入りましょうか」

ダンジョンに入ってしばらく歩き、三人揃ってゲートをくぐりトンネルのような空間を抜けて兼六園ダンジョンに着いた。

「それじゃ私はここからは別行動になるから、無理しないで気をつけてね」

「うん、母さんもね」

「ママ、いってらっしゃい!」

カイトとマリが手を振る中、私は探索者ギルドへと足を向けた。
私の白銀の髪と白い肌は人々の好奇な眼差しを惹きつけるが、そんなことは気にせず目的の場所へ進む。
入口のドアを押し開けると、内部は朝の賑わいで溢れていた。
依頼書が貼られた掲示板の前で議論するパーティー、受付カウンターで手続きを急ぐ冒険者たち、その喧噪が壁のように立ち塞がっていた。

(さて、まずは情報を集めないと)

人混みを抜けながら、落ち着いた雰囲気の一角を見つけた。
掲示板の隅に貼られたポスターに目を引かれる。

『魔導旅行記~魔導列車で東京へ行こう!~』

そう言えば昨日も同じようなポスターを見た気がする。

(魔導列車か……)

好奇心がうずく。
かつて日本では新幹線に乗るのが密かな楽しみだったが、今や魔法で造られた特別な列車が存在するとは興味深い。

しかし一方で、

(魔法で飛べばあっという間なんだけれどね)

と考えて苦笑する。
情緒というものがないか。
掲示板の魔導列車ポスターに再び目をやる。

(これに乗ってみようかしら)

思い立ち、受付カウンターへ向かった。
ギルド内は依然として騒がしいが、受付は比較的空いていた。
若い女性受付嬢が笑顔で対応してくれる。

「いらっしゃいませ。どのような御用でしょうか?」

「ラキナから来た者ですが、東京へ行く方法をお教えいただけますか?」

と問いかけると、一瞬、私を見て固まったように見えるがすぐに冷静さを取り戻したようで、

「東京へですね。まず、こちらの金沢駅から魔導列車が運行しております。指定席をご利用いただくのがおすすめですね。金沢駅への行き方は……」

丁寧に説明してくれる受付嬢の言葉にうなずきながら、頭の中で地図を描く。

「ありがとうございます。料金も教えていただけると嬉しいのですが」

「はい、金沢駅までのバス料金が210円、魔導列車は出来たばかりということもあり指定席が3万円から5万円ぐらいとなっております」

私は提示された金額に頷き、財布を確認し東京に着いてから何があるかわからないので多めにラキナのお金と日本のお金を両替してもらった。

「わかりました。ありがとうございます。それでは失礼します」

「いいえ、またのご利用お待ちしております」

笑顔で見送る受付嬢に小さく会釈し、ギルドを後にした。

(魔導列車か……)

胸躍る思いで足を速め、バス停を目指した。
バスの中では窓際に座り、流れる景色を眺める。
ラキナとは違う景色、そんな変化に胸が弾んだ。
やがてバスは金沢駅に到着。
駅構内の魔導列車乗り場を探す。
券売所でチケットを買い魔導列車の指定された席へと向かった。

(やっぱり魔法は便利よね……)

ふと独り言が漏れる。
普段なら一瞬で飛べる道のりも、今は非日常的なワクワクが胸を満たしていた。

しばらくするとアナウンスが流れる。

『まもなく出発いたします。シートベルトをお締めください』

(あれ、シートベルトなんてあるの?)

疑問が浮かぶが、周りの客たちと同じようにシートベルトを締める。
やがて魔導列車はゆっくりと動き始め、次第に加速していく。
窓の外には金沢の街並みが流れ、遠ざかる山々が徐々に小さくなっていく。

(不思議だわ……こんなに速く走っているのにほとんど揺れない)

その滑らかな走行に驚きつつ、景色を眺めるうちに心が軽くなる。
列車の中は、魔法技術による冷暖房完備で、窓際の席でも外の寒さを感じることなく快適だった。

「これなら数時間でも快適ね」

静かに呟き、目を閉じる。
異世界で長い時を過ごした自分が、こうして故郷への道を歩んでいる不思議な現実を噛みしめていた。

そして、ついにアナウンスが流れる。

『間もなく東京駅に到着いたします。お忘れ物のないようご注意ください』

(東京……)

鼓動が早まる。
扉が開くと同時に人々がホームへと吐き出されていく。
私はその流れに乗って出口へと歩を進めた。
ラキナから来たらしい様々な髪色、目の色をした人々や、獣人族、エルフといった異世界の多種族たちがそこかしこに見受けられた。
彼らの存在が当たり前の光景となっていくのだろう。

(随分と変わったものね……)

改札口を通り抜けると、広大な東京駅の構内が目の前に広がる。
観光客と思われるラキナからの訪問者たちが珍しそうに天井や壁のデザインを眺めている姿が微笑ましい。

(さて、私の家は……)

昔の記憶を頼りに、東京駅の配置を脳裏で確かめる。
思った以上に変化は少なく、安心感が胸に広がった。
電車に乗るため改札へと向かう。
幸いなことに、ラキナからの渡航者が増えても、公共交通機関のシステムはほとんど変わっていないようだった。
定期的に来る電車に乗り込み、数十分の時間を過ごす。
窓ガラス越しに流れる都会の景色は、以前よりも高層ビルが増え、一部区画は全く新しい風景に変わっていたが、全体的には見慣れた東京の面影を残していた。

(懐かしいわ……)

心の中で呟きながら、途中の駅で下車し、さらに別の電車に乗り換える。
約一時間ほどかけ、都心から少し離れた、かつての実家がある街へと辿り着いた。
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