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『南海琉生』編 【完結】
【3月】僕の大好きな祐
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あんなに寒かった2月が終わり、だんだん暖かくなる3月になった。
僕の余命宣告からもう一年。
この一年辛い事が沢山あったけど、楽しかった思い出が頭をよぎる。
医師の言う通り、僕は3月に入ってほとんど話すことはなく常に眠っている状態になった。
夜中になると時々息が止まることも多々あったことがあり、酸素マスクを付けるハメになってしまった。
まぁ、このことは祐には内緒だけど…
僕は眠ってはいるが、自分が今何をされているのかはハッキリと分かる。
裕は寝ているから気づいてないと思っているはずだが、全てお見通しだ。
祐はいつも僕が眠っていることを都合のいいみたいに、僕のことを撫でたり、抱きしめたり色んな事をしてくるのだ。
外に咲いている桜は僕のことを見守るかのように花を咲かしている。
(桜の花言葉……ってなんだっけ……)
段々薄れていく意識とぼやけてくる僕の視界。
息も随分と苦しくなってきた。
酸素マスクをしているおかげか僕の呼吸音が浅いことに気づく。
あぁ、もう時間か…
微かに目を開け横を見ると、祐が泣きそうな顔をして僕の手を握ってくれている。
温かい…
僕は最期の力を振り絞って祐に話しかけた。
「……ゅ……ぅ……」
「…!!琉生っ…俺はここにいるぞ。」
目に涙を浮かばせながら、必死に僕のことを見つめる祐。
僕はどうしても伝えたいことがあって、祐に言った。
「……み……み……」
「耳?こうか?」
祐は僕の意図を感じてくれたらしく、僕の方へ耳を傾けてくれた。
僕は段々薄れていく意識に逆らって祐に伝えたいことを言った。
「……ゅ…う……だい…すき…」
「俺も大好きだよ、ほらここにちゃんといるから…」
(笑わなきゃ…最後くらい笑顔で…)
「ゆ、う?…今、まで…ぁ…りが……と…ぅ…」
「……え…?」
僕の頬に祐の涙が数滴落ちてくる。
祐が必死に何か言っているけれど、もうほとんど嗚咽で何言っているかわからなかった。
けれど、思いは十分に伝わっている。
僕だって、いつまでも祐と生きたかった。
でも、神様は意地悪だ。もうすぐ傍までお迎えが迫っている。
僕は祐に心配をかけまいと、飛び切りの笑顔をみせた。
しかし、祐は未だに雫を落としている。
僕はその涙を拭おうと震える手を必死に伸ばした。
もう少し…もう少しで届く……っ…
「ゅ…ぅ………………」
一瞬で腕の力が抜け、ベットに叩きつけられる。
僕の手は祐の目元まで届かなかった。
「琉生…っ…琉生いいいいぃいいい!!!」
薄れる意識の中、最期に聞こえたのは無機質な機械音と祐の叫び声だった。
(幸せ…だったな…)
命の灯火が消える前に僕の唇に柔らかい感触があったことは
恐らく気のせいだろう。
そう思っていたい。悔いが残らないように。
祐、大好きだよ。
僕の願いはね…
僕より大切な人と出会って
いつまでも幸せでいてください。
それが、僕のたった一つの願いです。
祐、ばいばい
愛しています。
今までありがとう。
-end-
僕の余命宣告からもう一年。
この一年辛い事が沢山あったけど、楽しかった思い出が頭をよぎる。
医師の言う通り、僕は3月に入ってほとんど話すことはなく常に眠っている状態になった。
夜中になると時々息が止まることも多々あったことがあり、酸素マスクを付けるハメになってしまった。
まぁ、このことは祐には内緒だけど…
僕は眠ってはいるが、自分が今何をされているのかはハッキリと分かる。
裕は寝ているから気づいてないと思っているはずだが、全てお見通しだ。
祐はいつも僕が眠っていることを都合のいいみたいに、僕のことを撫でたり、抱きしめたり色んな事をしてくるのだ。
外に咲いている桜は僕のことを見守るかのように花を咲かしている。
(桜の花言葉……ってなんだっけ……)
段々薄れていく意識とぼやけてくる僕の視界。
息も随分と苦しくなってきた。
酸素マスクをしているおかげか僕の呼吸音が浅いことに気づく。
あぁ、もう時間か…
微かに目を開け横を見ると、祐が泣きそうな顔をして僕の手を握ってくれている。
温かい…
僕は最期の力を振り絞って祐に話しかけた。
「……ゅ……ぅ……」
「…!!琉生っ…俺はここにいるぞ。」
目に涙を浮かばせながら、必死に僕のことを見つめる祐。
僕はどうしても伝えたいことがあって、祐に言った。
「……み……み……」
「耳?こうか?」
祐は僕の意図を感じてくれたらしく、僕の方へ耳を傾けてくれた。
僕は段々薄れていく意識に逆らって祐に伝えたいことを言った。
「……ゅ…う……だい…すき…」
「俺も大好きだよ、ほらここにちゃんといるから…」
(笑わなきゃ…最後くらい笑顔で…)
「ゆ、う?…今、まで…ぁ…りが……と…ぅ…」
「……え…?」
僕の頬に祐の涙が数滴落ちてくる。
祐が必死に何か言っているけれど、もうほとんど嗚咽で何言っているかわからなかった。
けれど、思いは十分に伝わっている。
僕だって、いつまでも祐と生きたかった。
でも、神様は意地悪だ。もうすぐ傍までお迎えが迫っている。
僕は祐に心配をかけまいと、飛び切りの笑顔をみせた。
しかし、祐は未だに雫を落としている。
僕はその涙を拭おうと震える手を必死に伸ばした。
もう少し…もう少しで届く……っ…
「ゅ…ぅ………………」
一瞬で腕の力が抜け、ベットに叩きつけられる。
僕の手は祐の目元まで届かなかった。
「琉生…っ…琉生いいいいぃいいい!!!」
薄れる意識の中、最期に聞こえたのは無機質な機械音と祐の叫び声だった。
(幸せ…だったな…)
命の灯火が消える前に僕の唇に柔らかい感触があったことは
恐らく気のせいだろう。
そう思っていたい。悔いが残らないように。
祐、大好きだよ。
僕の願いはね…
僕より大切な人と出会って
いつまでも幸せでいてください。
それが、僕のたった一つの願いです。
祐、ばいばい
愛しています。
今までありがとう。
-end-
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