究極のポーター 最弱の男は冒険に憧れる

長野文三郎

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第1話 飛ばされて異世界

 人間というか、生物の「生《せい》」というのはどれも同じだと思う。
生まれ、食べ、場合によっては子孫を残して死んでいく。
これこそが生き物の基本的なあり方だ。
動物も植物も人間もそこは同じじゃないかな。
でも、人はその基本的なあり方を説明したがる珍しい生き物だ。

だから物語が生まれる。

俺は一度死んで、違う世界で生き返った。 
どういうことかって? 
そうだね、俺も俺の「生」を説明してみようかな。
聞いてくれるのかい?
ありがとう。
じゃあ、物語を始めよう。


 皆さんこんにちは!
俺は宮田一平《みやたいっぺい》27歳です。
さっきまで食品会社の営業をやっていました。
今日も仕事で外回りをしていたのですが、トラックに跳ねられて異世界へ転移しました。 
はいっ。 
テンプレ通りです。
よろしくお願いします!

 誰にともなく元気に挨拶をしたのはいいが、本当はかなり困っている。
右を見ても草原、左を見ても草原が続いているのだ。
ここはどこなのだろう?
人影はおろか道さえもない現実に涙が出そうだ。
だけど俺は慌てない。
一度死んでしまうと人間落ち着きが出るね。
まずは自分の能力を確かめてみようか。
この世界に来るときにチュートリアルは受けている。

ステータスオープン。

【名前】 宮田一平
【年齢】 27歳
【職業】 無職
【Lv】 1
【HP】 8/8
【MP】 999999/999999
【攻撃力】3
【防御力】5
【体力】  4
【知力】 1480
【素早さ】5
【魔法】 生活魔法 Lv.max、回復魔法Lv.max
【スキル】料理 Lv.max  素材錬成(マテリアル) Lv.max  薬物錬成 Lv.max
鍛冶錬成 Lv.max  鑑定Lv.max  ゴーレム作成Lv.max  道具作成Lv.max
【次回レベル必要経験値】 0/100000 

なんだろうね、
この弱さは。
都会でサラリーマンしていたから体力がないのは自覚してるよ。
でもこれはあんまりじゃないかな。
ヒットポイント8って! 
RPG最弱のスライムやらゴブリンと戦闘しても即死しそうな数値だぞ。
そして、戦闘力の低さに反比例するように素晴らしい生産スキルの数々。
何というかこれは……アンバランスだ。
生産系特化のキャラクターじゃないか。
そういえばこの世界に来るときに神様っぽい声に聞かれたんだよな、「新しい世界ではどんな人間になりたい?」って。
あの時「人の役に立てる人間になりたいです!」なんて答えちゃったんだよな。
素直に「俺TUEEEEEEがしたいです!」 にしとけばよかったよ……。
人前だとつい恰好つけちゃう俺のバカ。

 とりあえず、人のいるところに移動しよう。
俺は寂しいと死んでしまうから。
ちなみにウサギは寂しいと死んでしまうという説は嘘らしい。
だが俺は死んでしまう。
人は一人では生きられないんだよね。

 草原はどこまでも続く。
季節は日本の秋によく似ている。
暑くも寒くもなくて過ごしやすいのだが、舗装されていない道を革靴で歩くのは非常に疲れる。

そうだ! 
俺にはゴーレム作成のスキルがあるじゃないか。
馬型のゴーレムとかを作って乗っていけばいいんだ。
さっそくゴーレム作成のスキルを発動させてみよう。

―コアとなる魔石を選んでください―

魔石? 
どうやらゴーレムを作るには魔石が必要らしい。
当然俺は魔石を持っていない。
そもそも魔石って何だろう?
スキルの鑑定を駆使してゴーレム作成について詳しく調べてみるか。

 調べてみると魔石とは魔物を倒したときに得られる魔力の結晶のことだった。
ゴーレムはこれを核にして作られる。
素材は石でも土でも鉱物でも何でもいいらしい。
また作られたゴーレムは魔石を生み出した魔物の最大80パーセントの体力と知力を有することができることもわかった。
例えば体力が10の魔物の魔石から作られたゴーレムは、最大で体力8までの能力をだせるのだ。
また、コアは10個まで組み合わせて使うことができるという情報もゲットした。
いずれにせよ、今は魔石の持ち合わせはない。
ここにいてもどうしようもないので歩くことにしよう。
メニューを見ているだけじゃご飯は食べられない。
作り方はわかっても、それだけじゃゴーレムは作れないのだ。
俺は諦めるのが得意なのだ。
根性ナシともいう……。

 初めての異世界だからいろいろ調べながら歩いたほうがいいな。
歩きながらさらに鑑定のスキルを使ってみよう。
その辺を見まわし、食用になりそうな植物や素材になる鉱物などを探してみる。
これまで知らなかったけど、鉱山だけでなくその辺の土の中にも少量の鉱物やガラスなどが含まれているんだね。
素材錬成で地表に散らばる鉄などの鉱物を集めながら歩いた。
鉄に関していえば、歩きながら卵くらいの大きさが集めることができた。
やれば出来るものだ。


 ……すでに3時間は歩いている。
何度も回復魔法をかけているので体は疲れないのだが、歩くのに少し飽きてきた。
いや、かなり飽きてきたぞ。
風景はどこまでいっても同じ草原だ。
まるで変化がない。
もう少し心に潤いが欲しくなってしまう。
一人で歩いていると、両親や友人、仕事の同僚のことが何度も頭をよぎった。
恋人は社会人になってからはできなかった。
いい感じになると仕事が忙しくなって、一緒にいられなくなるんだよね。
誰かの陰謀を感じるほどだった。
それにしても親孝行できなかったな……。
ごめん! 
せめて俺の貯金で、家をリフォームして温泉旅行でも行ってくれ。
地球に残された両親に幸あれ。

 それにしても何もないところだ。
いいかげんうんざりしていたところで道に出た。
右に行くべきか左に進むべきか。
道をよく観察すると、車輪の跡が轍《わだち》になっている。
人の踏み跡もしっかり残っているぞ。
普段から使われている道のようだ。
だったら焦らずにここで待って、通行人から情報を得ればいいだろう。

 俺は生活魔法の洗浄を使い、身体と着ているものの汚れを落とした。
やっぱり第一印象は大切だ。
服は清潔にしておいたほうがいいだろう?
小汚くても様になるのはイケメンだけだ。
今の俺は地球で着ていたスラックスとカッターシャツ姿だ。
手に持っていたジャケットはトラックに跳ねられたときに落としたのか、こちらの世界に来たときは持っていなかった。
魔法で綺麗にしたシャツを確認すると、どうしても取れなかった襟元と袖口の汗沁みが真っ白になっていた。
生活魔法vs漂白剤は魔法の圧勝だったな。
ファンタジーな白さだぜ。
さあこれで完璧な爽やか青年の出来上がりだ。
素材の関係上これ以上いい男にはなれないが最大限の努力はした。
カモン! ファースト コンタクト!
俺は気合を入れて通行人を待った。
感想 4

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