究極のポーター 最弱の男は冒険に憧れる

長野文三郎

文字の大きさ
27 / 98

第27話 新戦術

【4区       】【5区(第二階層への階段)】【6区     】
【1区(迷宮入り口)】【2区(レビの泉)    】【3区     】

 カンテラ型ゴーレムのヒカル君は高さ30センチのカンテラに手と足が生えている。
その手足を一生懸命動かして走る姿は結構可愛い。
ヒカル君は小さいので魔物たちもヒカル君を脅威に感じることはない。
そこが狙い目だ。
トテトテとコボルトの一団に近づいたヒカル君をコボルトはバカにしたように見ている。
そしてやおら剣を振り上げ破壊しようとしたその時だ。
ヒカル君がフラッシュをたいた。
ただでさえ暗い迷宮の生活になれた魔物が強力な光をまともに見てしまったのだ、完全に視界は奪われてしまう。
「今だ! バリ、バンペロ、ボーラ、いけっ!」
 ゴブの両肩と頭の上からハチドリ型ゴーレムが高速で飛び立つ。
コボルトの上空、後ろ、脇へと一瞬で入り込み死角からレーザーを計9発叩き込んだ。
7体のコボルトはなす術もないままその場へと倒れた。
「フハハハハハ、圧倒的ではないかわが軍は!」
喜ぶ俺を呆れたようにジャンとメグが見ている。
「無茶苦茶だぜおっさん」
「すごいです」
「まあな。でもハチドリたちは3分しか俺から離れられないし、レーザーは1体につき3発しか打てない。動力の魔力を使いきったら補給するためには俺の近くに10秒以上いなくちゃならないんだ」
 戦闘中の10秒はかなり長い時間と言える。
「つまり、短期決戦型だな」
「まあ、そうだね。初手としてヒカル君からハチドリたちの奇襲という作戦をとるけど、敵の数が多い場合や倒しきれなかった場合は前衛の二人に頑張ってもらうからね」
「わかりました。でもヒカル君で敵の視力を奪うのは私たちが攻撃する際にも有効ですね」
「確かにね。ハチドリたちが倒しきれなくても視界は奪ってあるから、殲滅は二人に任せるよ」
 俺たちはこの戦法を使って快勝を重ねていった。
コボルトはIクラスの魔石しか出さなかったが、戦闘を開始して3時間で13個の魔石を出している。
しかもコボルトの鉄剣は安いながらも買取素材だ。
弓を使う個体がいるので俺は後ろの方でゴブのシールドに守られながらゴーレムたちに指示をだすが、なかなか順調な滑り出しと言えた。

 昼時となって俺たちは小部屋を確保して、戦利品を数えている。
「Iクラスの魔石が13個だ。買取価格は500リム。ほれいくらになるか計算してみ」
ジャンは木の燃えカスを鉛筆代わりに床に数字を書きつけている。
「えーと、500リムが13個だから………6500リムか!」
「正解。それからコボルトの鉄剣は1本100リムで8本あるぞ」
「じゃあ、6500と800合わせて7300リムじゃねぇか」
「そういうことだ」
「やっぱりポーターの時よりも儲かりそうですね」
「まあね。ただ素材は全部持ち帰れるかどうかわからない。なるべく高いものを持ち帰ろうぜ」
青銅の剣は買ってもらえないので捨てる。
木の盾もゴミ扱いだ。ばらして薪にするくらいしか用途がない。

昼食はバゲットを軽くあぶりチーズとハムを挟んだもの、カブをスライスしてオリーブオイルとビネガーと塩で和えたサラダ、リンゴ、紅茶といった具合にしっかり食べた。
俺はともかくジャンとメグはまだまだ成長期だ。なるべくバランスのいい食事を心がけている。
成長期といえば、俺以外のメンバーのレベルがどんどん上がっている。
ジャンはレベル14にメグもレベル12になったそうだ。
嫉妬がないと言えば噓になるが、うれしくもある。
この調子で午後は4区の奥まで進んでみよう。

ガチャガチャと具足の音がして、曲がり角の向こうがぼんやりと光っていた。
こちらの明かりを弱くしてそっと近づく。
向こうにいるのが冒険者なのか、はたまた魔物なのかはまだわからない。
角から鏡を使って覗いてみると、廊下の先がドーム状の広い部屋になっていてその中でイビル・エイプというサル型の魔物がたき火をしていた。
焚火では虫のような何かが焼かれていて、食事の準備をしているようだ。イ
ビル・エイプはゴブリンやコボルトよりも動きが俊敏で戦いづらい魔物だ。

「何匹いる?」
メンバーで一番目のよいジャンに聞く。
「16てとこだ。やるか?」
「そうだな…。ハチドリで奇襲。向かってきたところをヒカル君で目つぶし。俺が銃弾を全部撃ち尽くして数を減らしたら二人が強襲。いつも通りのプランでいいな?」
「いいけどこの距離じゃおっさんの射撃は当てにならないな」
「よくて、2体ですね」
「い、いや。敵が二人の死角に入らないようにちゃんと牽制するから…」
「包囲されるのは嫌ですからね。しっかりとお願いします」
「それと、俺たちに当てるなよ」
「わかってるって。あてたことないだろ…」
「さっき危なかっただろうが!」
はい。反省はしております。俺も後方での援護にだいぶ慣れてきたけど、まだまだ修練が必要だ。
「おっさんは射撃よりもハチドリたちの再出撃を優先してくれよな」
「了解だ。いくぞ!」

ゴブの体から飛び立ったハチドリたちがイビル・エイプに襲い掛かり、僅かな時間で9体を戦闘不能にした。
エイプたちはどこから攻撃されたかわからず混乱していたが、ハチドリたちが帰還する方向、つまり俺たちの方を見て雄たけびを上げて向かってきた。
だがエイプたちは知らない。
彼らのすぐ目の前にあるカンテラはただのカンテラではなくフラッシュを搭載したゴーレムであることを。ヒカル君が強烈な光を放ち、俺の銃弾がはなたれる。
「ズババッ!」「ズババッ!」「ズババッ!」「ズババッ!」「ズババッ!」「バスッ!」
3点バーストで5回、単発で1回、計16発の弾がエイプを襲い、2体のエイプが倒れた。…メグの予想が大当たりぃ! でも倒せなかっただけで負傷はしているようだ。
 再び光ったヒカル君のフラッシュを合図に猛然と走り出したジャンとメグが生き残りのエイプを次々と屠っていく。
視覚を奪われたエイプに二人の攻撃に抗う術はなかった。
うむ、今回も快勝だ。
空になった弾倉に弾を込めながら戦闘終了を確認していると、不意に肩に手を置かれた。
「よく戦えているようだな」
全身に冷水を浴びせかけられたような気持ちで心臓がぎゅっと縮み上がる。
驚いて振り向くとそこには初心者講習で教官役を務めたボニーが立っていた。
「驚かさないでくださいよボニーさん」
「すまん…」
 ボニーさんは目つきは怖いけど、実は優しい人だったりする。
初心者講習では斥候役を務めてくれて、常に俺たちの安全に気を配ってくれていた。
弱気になる俺を言葉少なながら励ましてくれたのもボニーさんだ。
今日も斥候らしく忍者のような黒装束を着て、背中には刀のような幅の狭い剣を背負っていた。
そして顔の下半分を包帯で巻いている。
肌はずっと迷宮にいるせいか青白く、漆黒のような黒髪と相まって幽霊のように見える時もあった。
「鳥のゴーレム…いい攻撃だ。私でも初見ならやられているかもしれない。だけどもう見た…」
いや何ですか、その「かかってこい」みたいな挑戦的な目つきは? 
ぶっ潰してやるよ的な余裕の笑みは? 
やりませんよ。
「今日はロットさんとクライドさんはいないんですか」
「講習会の時だけ…、パーティーじゃない…」
講習会の時だけ偶々組んで教官をやっていたということか。
「そうだったんですね。もしかしてソロで狩りをしてるんですか?」
「いつもソロだ…」
この人はソロ活動が基本なのか。で、たまにユニットを組むと。どこぞのアーティストみたいだな。

「ボニーさんじゃないですか!」
ジャンとメグもこちらに戻ってきた。
「全員よくやっているようだ…」
「まだ第一階層だけですよ。でも俺たち『不死鳥の団』はこれからっすよ!」
あ、ジャン君その名前を名乗っちゃう? 俺はちょっと恥ずかしい…。
「『不死鳥の団』かいい名前だ…」
いい名前なんですね。
「お前たちなら第二階層でも大丈夫だろう。案内してやろうか…?」
突然の申し出だったが、魅力的な申し出でもあった。食料も水も余裕があるし、ベテランのボニーさんが案内をしてくれるというのだ。俺たちに断る理由はなかった。
感想 4

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!

さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。 冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。 底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。 そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。  部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。 ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。 『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!

田舎おじさんのダンジョン民宿へようこそ!〜元社畜の俺は、民宿と配信で全国初のダンジョン観光地化を目指します!〜

咲月ねむと
ファンタジー
東京での社畜生活に心身ともに疲れ果てた主人公・田中雄介(38歳)が、故郷の北海道、留咲萌町に帰郷。両親が遺したダンジョン付きの古民家を改装し、「ダンジョン民宿」として開業。偶然訪れた人気配信者との出会いをきっかけに、最初の客を迎え、民宿経営の第一歩を踏み出す。 笑えて、心温かくなるダンジョン物語。 ※この小説はフィクションです。 実在の人物、団体などとは関係ありません。 日本を舞台に繰り広げますが、架空の地名、建造物が物語には登場します。

異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。

Mです。
ファンタジー
異世界学園バトル。 現世で惨めなサラリーマンをしていた…… そんな会社からの帰り道、「転生屋」という見慣れない怪しげな店を見つける。 その転生屋で新たな世界で生きる為の能力を受け取る。 それを自由イメージして良いと言われた為、せめて、新しい世界では苦しまないようにと防御に突出した能力をイメージする。 目を覚ますと見知らぬ世界に居て……学生くらいの年齢に若返っていて…… 現実か夢かわからなくて……そんな世界で出会うヒロイン達に…… 特殊な能力が当然のように存在するその世界で…… 自分の存在も、手に入れた能力も……異世界に来たって俺の人生はそんなもん。 俺は俺の出来ること…… 彼女たちを守り……そして俺はその能力を駆使して彼女たちを英雄にする。 だけど、そんな彼女たちにとっては俺が英雄のようだ……。 ※※多少意識はしていますが、主人公最強で無双はなく、普通に苦戦します……流行ではないのは承知ですが、登場人物の個性を持たせるためそのキャラの物語(エピソード)や回想のような場面が多いです……後一応理由はありますが、主人公の年上に対する態度がなってません……、後、私(さくしゃ)の変な癖で「……」が凄く多いです。その変ご了承の上で楽しんで頂けると……Mです。の本望です(どうでもいいですよね…)※※ ※※楽しかった……続きが気になると思って頂けた場合、お気に入り登録……このエピソード好みだなとか思ったらコメントを貰えたりすると軽い絶頂を覚えるくらいには喜びます……メンタル弱めなので、誹謗中傷てきなものには怯えていますが、気軽に頂けると嬉しいです。※※

規格外の魔法少女は『遊び』と称して魔獣討伐行ってます! 〜王子の機転が国家を救う!?〜

婚后 清羅
ファンタジー
子供たちはただ遊んでいるだけなのに?王子の機転が国家を救う!?痛快ファンタジー!  平和な田舎町コレットに住む少女キスティーは、全属性の魔法を極めた規格外の魔力を持っていた。しかし彼女にとって魔法は「家事があっという間に終わってしまい、毎日の楽しみを奪うもの」でしかなく、その力を使うのはもっぱら幼馴染のアリシア(精密な無詠唱魔法の使い手)、ギルバート(規格外の強靭な肉体の持ち主)との「遊び」の中だけだった。  そんな彼女たちの前に、視察団として身分を隠した第三王子レイエスが現れる。王子は、三人が国家級の脅威である魔獣たちを、ただの「遊び」の延長で、一撃のもとに仕留める光景を目の当たりにし、驚愕する。この国の常識を遥かに超えた彼女たちの力は、本人たちにとってはあくまで「日常の遊び」に過ぎなかったのだ。  王子に同行している騎士団長は、自らの部隊が命懸けで挑む難敵を、遊び感覚で仕留める彼女たちの振る舞いに、常に顔を青ざめさせ、胃を痛め、絶叫に近いツッコミを入れ続ける。  レイエスは確信する。各地で活発化する魔獣の脅威を退け、王国の平和を守る鍵は彼女たちの力にあると。しかし、義務や名誉に興味がない自由奔放な彼女たちを、騎士団などの堅苦しい枠に閉じ込めることは不可能だ。そこでレイエスは、一石二鳥の妙案を思いつく。それは、彼女たちを「働かせる」のではなく、討伐対象がいる危険地帯へ「遊び」という名目で誘い出すことだった。  レイエスは親たちへの根回しを完璧に済ませ、再び三人の前に現れる。「褒美に海へ遊びに行こう」という誘いに、三人は、王子様が自分たちを騙して捕まえようとしてるのではないかと疑うが、結局未知なる冒険という名のピクニックへと旅立つことになる。  こうして、規格外の力を持つ三人と、彼女たちを「遊び」で導き、その力を正しく制御しようとする王子の奇妙な旅が始まる。彼女たちが無邪気に遊ぶたび、王国を脅かす難敵は露知らずのうちに駆逐されていく。自覚なき救世主たちのドタバタな日常が、世界の運命を静かに、そして豪快に変えていくのである。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 【2025カドカワBOOKS10周年記念長編コンテスト中間選考通過作品】 ・規格外の魔法少女は『遊び』と称して魔獣討伐行ってます!?

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。