究極のポーター 最弱の男は冒険に憧れる

長野文三郎

文字の大きさ
32 / 98

第32話 告白

 覆面をかぶり、怪盗 モリアーティー・ウーロンティーと名乗った俺にみな目が点になっている。
ここは気にせずに続けよう。
「女性に手荒なことをするのは苦手でしてね、おとなしく金と魔石を出していただけませんか? この男のようになりたくなければ」
 俺は失禁しているユーライアにむけて顎をしゃくる。
しばらくポカンとしていたパティーたちもこの茶番の意味が分かったのだろう、大急ぎで財布を取り出した。
「これが私の全財産です」
俺は投げられた財布を受け取る。
「ふむ。素直で助かりますな。ああ、庶民から金をとろうとは思いません。私が狙うのは貴族だけです」
ユーライアが俺を睨みつけてくるが身体はうまく動けないようだ。
「おの…れ…ただで…」
「バスッ!」
情け容赦なくもう一発スタン弾をユーライアに叩き込む。
ユーライアは白目をむいて気絶した。
パティーの体を狙うなんて許せるわけがない。
こいつは勃起障害を起こす薬を注射してやる。
俺の恨みは恐ろしいのだ。
後で早速素材集めだ。
「おとなしくしていろ。ん、これは貴様には過ぎた剣だな。私がもらってやろう」
俺は自分が作った劣化聖剣を掴んだ。
バカ貴族に刃物は危険すぎるのだ。
そろそろみんなショックから立ち直る頃か。
「ふむ。もう少し諸君らと会話を楽しみたいところだが迷宮の鬼が私を呼んでいる。再びこの闇に我が身をとかす時間が来たようだ。少年老い易く学成り難し、ボーイズビーアンビシャス! 再び会おう! フハハハハハハハハハハハハハハハ…………」

 俺は去り際、端にいたボニーさんに「追いかけてきて」と囁いた。
「マテ…怪盗ウーロンティー…」
わお! 
すごい棒読み。
ボニーさんに釣られて他のメンバーも走り出す。
「待ちなさい!」
お、パティーは意外と演技派だ。
「逮捕するぅ!」
ジャン、お前は顎の割れた警部さんか。

 しばらく移動し十分な距離をとって小部屋に入った俺たちは、笑いながら一息入れていた。
「おっさん笑わせないでくれよ。まったく何が迷宮の鬼が呼んでいるだよ」
「まあまあ、あの辺あたりの件くだりは適当だから。これであいつもパティーとは無関係な怪盗に襲われたと勘違いするだろう」
「イッペイさんが後方に控えていてよかったですよ」
「ふ…よくやった…」
「ありがとうイッペイ。正直言うと少し怖かったわ。あいつはラムネス伯爵家の長男でユーライアっていう嫌な奴なのよ」
「求婚されたの?」
「ええ。碌な噂を聞かないし、即座に断ったわ。でも、あそこまでの下衆とは知らなかった」
「どうせ権力を笠に着て、悪逆非道を繰り返してるタイプだよ。後でお仕置きするから手伝ってくれ」
「イッペイ、相手は貴族よ。下手に手を出せばあなたの命が危ないわ」
「闇討ちとか、暗殺とかは考えていないよ。…ボニーさんはがっかりした顔しない! これ以上不幸な女性を出さないために奴のナニを使えなくします」
「それって…」
パティーとメグが顔を真っ赤にしながら興味津々で聞いてくる。
「えー、なんだ…勃起障害をひきおこす薬を奴に気づかれないように飲ませます。大事なところが使えなかったら被害にあう人は減るだろ」
妙齢の女性たちの前で改めて言うと恥ずかしいな。
「刈り取った方が早い…」
「ボニーさん、直接手を下すのはだめですから」
「刈り取るって、ボニーさん眼が怖いよ」
ジャン、気持ちはわかるけど両手で股間を隠すのやめなさい。
あ、俺も無意識のうちに隠してた。
ゴブ…お前にはついてないだろ?
「でも、どうやってその薬を飲ませるんですか?」
メグの質問ももっともだ。
俺としては料理に混ぜることを考えていた。
ハチドリを改造すればうまく鍋の中などに薬をいれられると思う。
「イッペイ…吹き矢の先に薬を塗って使えるか…?」
内服薬として使うつもりでいたが、皮下注射薬にも変更できる。
確かにその方が楽かもしれない。
隠密潜行の得意なボニーさんなら容易に吹き矢を打ち込めるだろう。
「ええ、薬品の使い方は変えられます」
「なら、私が奴を狩る…。あの手の奴は大嫌いだが、あの手の奴を狩るのは大好きだ…」
普段より饒舌すぎて怖いです。
怯える俺の顔をみてボニーさんは他には聞こえないように呟く。
「イッペイのことは狩らない…好きだから…」
不思議な感じで告白されてしまった。
そして、この人の声はとても優しくて…困ってしまう。

 すぐに俺は調薬にかかり、ボニーさんは奴らの動きをトレースするために出かけて行った。
やがて薬が出来上がり、無事にユーライア・ラムネスに打ち込むことが出来た。
奴が絶望する顔が見られないことが残念だがまあいい。
俺の復讐はなされた。

 早いもので明日はもう地上に戻る日だ。
次はもう少し長く潜っていてもいいかもしれない。
少しずつ距離と時間を伸ばしてこの次は第二階層のもっと奥まで進んでみよう。
皆は眠っている。
俺は一人起きて見張りだ。
寒いのでたき火を絶やさないように気をつける。
 むっくりとパティーが起き上がり、俺の横に音もなく座った。
「眠れないの?」
「ううん。話がしたかったの」
パティーが少しだけ俺に体を預けてくる。ほんの少しだけ。
「昼間はありがとね。助かったわ」
「うん」
「どうして男ってこう…性欲が強いのかしら」
パティーは怒ったように言う。
「性欲は生物の本能だからいかんともしがたいなぁ。ユーライアの場合は性欲云々じゃなくて人としての在り方の問題だ。どんなにスケベな気持ちになっても、どう行動するかは本人の心次第だもん」
「じゃあイッペイも私に欲情するの?」
「…ストレートすぎる質問だな。正直に言えば答えはイエスだ。だけどレイプしようとは思わない。普通はそうだろ。そうじゃなかったらこの世界は性犯罪者だらけだ」
「そっか…」
「それに、襲ったら確実に俺が殺される」
「アハハ、それはそうね。でも私がもっと弱くて、イッペイがずっと強くてもイッペイは襲わない。それはわかってる…」
パティーの胸は大きい。
俺はしょっちゅう盗み見てる。
その視線はバレバレだろう。
だけど信用はしてくれているようだ。
「パティー…、俺は27歳、もうすぐ28歳になる。衝動的に行動するほど若くはないし、情熱をあっさり捨てられるほど老いてもいないんだ。だから少しだけ待っていてほしい。俺が君に俺の思いを打ち明けられる状態を何とか作る。その日まで…」
「…うん」
 貴族の女と恋に落ちた男は強制労働か死が待っている。
恋愛関係になれば強制労働、その結果肉体関係になれば死罪だ。
女も修道院で尼になるしかない。
それがこの国の法律だ。
それだけではなく、貴族の場合は家名に傷がつく。
メンツを重んじる貴族にとって許されることではなかった。
パティーは両親を大切にしている。
自分の気持と家族の間で苦しんでいるはずだ。
つまり俺たちが幸福になる方法は一つだ。
俺が貴族になるしかない。
「パティー、俺はこの国で貴族になるよ。手伝ってくるかい?」
「うん。嬉しいよ…」
パティーは俺が貴族になる意味をすぐに分かってくれたみたいだ。
そして俺は今一つの覚悟を決めた。
とりあえずは強制労働に対する覚悟だ。
思っていたより俺は若くて衝動的だったらしい。
「パティー、好きだ」
「うん、私も大好き」
俺はパティーを抱き寄せ、その唇に自分の唇を重ねた。
感想 4

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!

さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。 冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。 底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。 そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。  部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。 ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。 『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!

田舎おじさんのダンジョン民宿へようこそ!〜元社畜の俺は、民宿と配信で全国初のダンジョン観光地化を目指します!〜

咲月ねむと
ファンタジー
東京での社畜生活に心身ともに疲れ果てた主人公・田中雄介(38歳)が、故郷の北海道、留咲萌町に帰郷。両親が遺したダンジョン付きの古民家を改装し、「ダンジョン民宿」として開業。偶然訪れた人気配信者との出会いをきっかけに、最初の客を迎え、民宿経営の第一歩を踏み出す。 笑えて、心温かくなるダンジョン物語。 ※この小説はフィクションです。 実在の人物、団体などとは関係ありません。 日本を舞台に繰り広げますが、架空の地名、建造物が物語には登場します。

異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。

Mです。
ファンタジー
異世界学園バトル。 現世で惨めなサラリーマンをしていた…… そんな会社からの帰り道、「転生屋」という見慣れない怪しげな店を見つける。 その転生屋で新たな世界で生きる為の能力を受け取る。 それを自由イメージして良いと言われた為、せめて、新しい世界では苦しまないようにと防御に突出した能力をイメージする。 目を覚ますと見知らぬ世界に居て……学生くらいの年齢に若返っていて…… 現実か夢かわからなくて……そんな世界で出会うヒロイン達に…… 特殊な能力が当然のように存在するその世界で…… 自分の存在も、手に入れた能力も……異世界に来たって俺の人生はそんなもん。 俺は俺の出来ること…… 彼女たちを守り……そして俺はその能力を駆使して彼女たちを英雄にする。 だけど、そんな彼女たちにとっては俺が英雄のようだ……。 ※※多少意識はしていますが、主人公最強で無双はなく、普通に苦戦します……流行ではないのは承知ですが、登場人物の個性を持たせるためそのキャラの物語(エピソード)や回想のような場面が多いです……後一応理由はありますが、主人公の年上に対する態度がなってません……、後、私(さくしゃ)の変な癖で「……」が凄く多いです。その変ご了承の上で楽しんで頂けると……Mです。の本望です(どうでもいいですよね…)※※ ※※楽しかった……続きが気になると思って頂けた場合、お気に入り登録……このエピソード好みだなとか思ったらコメントを貰えたりすると軽い絶頂を覚えるくらいには喜びます……メンタル弱めなので、誹謗中傷てきなものには怯えていますが、気軽に頂けると嬉しいです。※※

規格外の魔法少女は『遊び』と称して魔獣討伐行ってます! 〜王子の機転が国家を救う!?〜

婚后 清羅
ファンタジー
子供たちはただ遊んでいるだけなのに?王子の機転が国家を救う!?痛快ファンタジー!  平和な田舎町コレットに住む少女キスティーは、全属性の魔法を極めた規格外の魔力を持っていた。しかし彼女にとって魔法は「家事があっという間に終わってしまい、毎日の楽しみを奪うもの」でしかなく、その力を使うのはもっぱら幼馴染のアリシア(精密な無詠唱魔法の使い手)、ギルバート(規格外の強靭な肉体の持ち主)との「遊び」の中だけだった。  そんな彼女たちの前に、視察団として身分を隠した第三王子レイエスが現れる。王子は、三人が国家級の脅威である魔獣たちを、ただの「遊び」の延長で、一撃のもとに仕留める光景を目の当たりにし、驚愕する。この国の常識を遥かに超えた彼女たちの力は、本人たちにとってはあくまで「日常の遊び」に過ぎなかったのだ。  王子に同行している騎士団長は、自らの部隊が命懸けで挑む難敵を、遊び感覚で仕留める彼女たちの振る舞いに、常に顔を青ざめさせ、胃を痛め、絶叫に近いツッコミを入れ続ける。  レイエスは確信する。各地で活発化する魔獣の脅威を退け、王国の平和を守る鍵は彼女たちの力にあると。しかし、義務や名誉に興味がない自由奔放な彼女たちを、騎士団などの堅苦しい枠に閉じ込めることは不可能だ。そこでレイエスは、一石二鳥の妙案を思いつく。それは、彼女たちを「働かせる」のではなく、討伐対象がいる危険地帯へ「遊び」という名目で誘い出すことだった。  レイエスは親たちへの根回しを完璧に済ませ、再び三人の前に現れる。「褒美に海へ遊びに行こう」という誘いに、三人は、王子様が自分たちを騙して捕まえようとしてるのではないかと疑うが、結局未知なる冒険という名のピクニックへと旅立つことになる。  こうして、規格外の力を持つ三人と、彼女たちを「遊び」で導き、その力を正しく制御しようとする王子の奇妙な旅が始まる。彼女たちが無邪気に遊ぶたび、王国を脅かす難敵は露知らずのうちに駆逐されていく。自覚なき救世主たちのドタバタな日常が、世界の運命を静かに、そして豪快に変えていくのである。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 【2025カドカワBOOKS10周年記念長編コンテスト中間選考通過作品】 ・規格外の魔法少女は『遊び』と称して魔獣討伐行ってます!?

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。