究極のポーター 最弱の男は冒険に憧れる

長野文三郎

文字の大きさ
36 / 98

第36話 その後

過酷な一週間が終わった。
俺たちはブラッディ―・ターキーを狩り、ネピアへと運び続けた。
その数12頭。中抜きをして羽をむしったブラッディ―・ターキーの重さは平均600㎏前後になる。
俺たちは実に7.2トンもの肉をネピアに送っていた。

 イエストルダム大聖堂の広場にはコンテストの結果を知ろうと大勢の人間が詰めかけていた。
ブラッディ―・ターキー・レースは1時間前の正午に締め切られている。
集まった群衆は集計中の結果を今や遅しと待ち焦がれていた。
やがて壇上に教会の偉いさんやこの地方の領主コーク侯爵が姿を現した。
「これより、今年度のブラッディ―・ターキー・レースの入賞者を発表する」
大司祭の言葉に民衆が歓声をあげ、熱気がどんどんと膨らんでいく。
「5位から発表していこう。5位はナンバー17、684キロ。狩人グラハム!」
大観衆が足を踏み鳴らし地響きのように広場がなる。
かなりの迫力だ。
俺も広場の雰囲気に飲み込まれて足を地に打ち付けた。
 壇上に登ったグラハムという狩人がメダルと賞金を受け取っているのが見えた。
みなが彼を褒め称え、英雄のように扱っていた。
「続いて4位を発表する…」
このように授賞式は続き、順位が上がるたびに会場に詰め掛けた観衆のボルテージもぐんぐんと上がっていった。
「いよいよ第1位の発表だ。第一位は冒険者パーティー「ホワイト・ベリー」が獲った967キロ!」
 壇上に『ホワイト・ベリー』のメンバーが上がった。
可愛いパーティー名に反して筋肉ムキムキのおっさん5人組だった。
「俺たちの冬が終わったな…」
ジャンが季節外れの高校球児のようなセリフを呟く。残念ながら俺たちの入賞はなかった。
俺はジャンの頭を掌で掴んでゴシゴシしてやった。
「どうせ来年も参加して、俺をこき使うんだろ?」
「あたりめーだ。覚悟しとけよおっさん」
俺に背を向けているのでジャンの表情はわからない。
悔しくて泣いているのだろうか。
青春の涙というやつだ、ほっといてやろう。

「これで授賞式は終わるが、最後に私から個人的に発表したいことがある」
大司祭の言葉に広場の歓声がやんだ。
「入賞するターキーは捕まえられなかったが、なんと5人のパーティーで12頭ものブラッディ―・ターキーを狩り、運んだ強者つわものたちがいるそうだ」
俯いていたジャンの顔が上がる。
「発表しよう。冒険者パーティー『不死鳥の団」だ』
「うおおおおおおおおお!」
おサルさんが雄たけびを上げていた。
「いよっしゃぁ! 俺たちだ!」
「坊主が『不死鳥の団』か?」
「おうよ!」
ジャンはたちまち側にいた人々から抱え上げられ、手から手へと受け渡されて舞台の方へ運ばれた。
ライブ会場のクラウドサーフ状態だ。
あいつが行ったんならそれでいい。
この場の栄誉は切り込み隊長殿に任せるとしよう。
その夜、俺たち『不死鳥の団』はネピアの街でほんの少しだけ名を売った。

 入賞したターキーは聖女が聖別を施して、孤児や路上生活者などの恵まれない人々に配られるそうだ。
なかなか粋なことをするもんだ。
俺たちもターキーの売り上げが60万にもなったから、祝いの宴でもしようかと思ったのだが、冬祭の日は家族で祝うのが当たり前ということでメグとクロに辞退されてしまった。
仕方がないので金を分けてその日は解散することにしたが、馬車や食料の経費を差っ引いて、均等割りにしたらクロにびっくりされてしまった。
それはそうかもしれない、ポーターで8万リムもらえることはまずないだろう
クロだけでなく他のメンバーにも説明しておく
「今回のレースの間中、クロの仕事ぶりを見てきたが非常に素晴らしい。俺としては是非『不死鳥の団』に入ってもらい専属契約を結びたいくらいだ」
「それはボクとしてもありがたいです。皆さんは優しいですし、ボクを種族で差別しませんでした…」
「だったらその金は手付だと思って受け取っておけばいい。異議のあるものがいれば言ってくれ」
メンバーに異議を唱えるものはいなかった。
「うし、これでお前も『不死鳥の団』だな。しっかりやれよ!」
「よろしくね、クロ君」
「励めよ…」
「うが」
最後はクロが泣き出してしんみりしてしまったが、俺たちは笑顔でブラッディ―・ターキー・レースを終えた。
感想 4

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!

さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。 冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。 底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。 そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。  部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。 ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。 『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!

魔道具は歌う~パーティ追放後に最高ランクになった俺を幼馴染は信じない。後で気づいてももう遅い、今まで支えてくれた人達がいるから~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界転生者シナグルのスキルは傾聴。 音が良く聞こえるだけの取り柄のないものだった、 幼馴染と加入したパーティを追放され、魔道具に出会うまでは。 魔道具の秘密を解き明かしたシナグルは、魔道具職人と冒険者でSSSランクに登り詰めるのだった。 そして再び出会う幼馴染。 彼女は俺がSSSランクだとは信じなかった。 もういい。 密かにやってた支援も打ち切る。 俺以外にも魔道具職人はいるさ。 落ちぶれて行く追放したパーティ。 俺は客とほのぼのとした良い関係を築きながら、成長していくのだった。

田舎おじさんのダンジョン民宿へようこそ!〜元社畜の俺は、民宿と配信で全国初のダンジョン観光地化を目指します!〜

咲月ねむと
ファンタジー
東京での社畜生活に心身ともに疲れ果てた主人公・田中雄介(38歳)が、故郷の北海道、留咲萌町に帰郷。両親が遺したダンジョン付きの古民家を改装し、「ダンジョン民宿」として開業。偶然訪れた人気配信者との出会いをきっかけに、最初の客を迎え、民宿経営の第一歩を踏み出す。 笑えて、心温かくなるダンジョン物語。 ※この小説はフィクションです。 実在の人物、団体などとは関係ありません。 日本を舞台に繰り広げますが、架空の地名、建造物が物語には登場します。

異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。

Mです。
ファンタジー
異世界学園バトル。 現世で惨めなサラリーマンをしていた…… そんな会社からの帰り道、「転生屋」という見慣れない怪しげな店を見つける。 その転生屋で新たな世界で生きる為の能力を受け取る。 それを自由イメージして良いと言われた為、せめて、新しい世界では苦しまないようにと防御に突出した能力をイメージする。 目を覚ますと見知らぬ世界に居て……学生くらいの年齢に若返っていて…… 現実か夢かわからなくて……そんな世界で出会うヒロイン達に…… 特殊な能力が当然のように存在するその世界で…… 自分の存在も、手に入れた能力も……異世界に来たって俺の人生はそんなもん。 俺は俺の出来ること…… 彼女たちを守り……そして俺はその能力を駆使して彼女たちを英雄にする。 だけど、そんな彼女たちにとっては俺が英雄のようだ……。 ※※多少意識はしていますが、主人公最強で無双はなく、普通に苦戦します……流行ではないのは承知ですが、登場人物の個性を持たせるためそのキャラの物語(エピソード)や回想のような場面が多いです……後一応理由はありますが、主人公の年上に対する態度がなってません……、後、私(さくしゃ)の変な癖で「……」が凄く多いです。その変ご了承の上で楽しんで頂けると……Mです。の本望です(どうでもいいですよね…)※※ ※※楽しかった……続きが気になると思って頂けた場合、お気に入り登録……このエピソード好みだなとか思ったらコメントを貰えたりすると軽い絶頂を覚えるくらいには喜びます……メンタル弱めなので、誹謗中傷てきなものには怯えていますが、気軽に頂けると嬉しいです。※※

規格外の魔法少女は『遊び』と称して魔獣討伐行ってます! 〜王子の機転が国家を救う!?〜

婚后 清羅
ファンタジー
子供たちはただ遊んでいるだけなのに?王子の機転が国家を救う!?痛快ファンタジー!  平和な田舎町コレットに住む少女キスティーは、全属性の魔法を極めた規格外の魔力を持っていた。しかし彼女にとって魔法は「家事があっという間に終わってしまい、毎日の楽しみを奪うもの」でしかなく、その力を使うのはもっぱら幼馴染のアリシア(精密な無詠唱魔法の使い手)、ギルバート(規格外の強靭な肉体の持ち主)との「遊び」の中だけだった。  そんな彼女たちの前に、視察団として身分を隠した第三王子レイエスが現れる。王子は、三人が国家級の脅威である魔獣たちを、ただの「遊び」の延長で、一撃のもとに仕留める光景を目の当たりにし、驚愕する。この国の常識を遥かに超えた彼女たちの力は、本人たちにとってはあくまで「日常の遊び」に過ぎなかったのだ。  王子に同行している騎士団長は、自らの部隊が命懸けで挑む難敵を、遊び感覚で仕留める彼女たちの振る舞いに、常に顔を青ざめさせ、胃を痛め、絶叫に近いツッコミを入れ続ける。  レイエスは確信する。各地で活発化する魔獣の脅威を退け、王国の平和を守る鍵は彼女たちの力にあると。しかし、義務や名誉に興味がない自由奔放な彼女たちを、騎士団などの堅苦しい枠に閉じ込めることは不可能だ。そこでレイエスは、一石二鳥の妙案を思いつく。それは、彼女たちを「働かせる」のではなく、討伐対象がいる危険地帯へ「遊び」という名目で誘い出すことだった。  レイエスは親たちへの根回しを完璧に済ませ、再び三人の前に現れる。「褒美に海へ遊びに行こう」という誘いに、三人は、王子様が自分たちを騙して捕まえようとしてるのではないかと疑うが、結局未知なる冒険という名のピクニックへと旅立つことになる。  こうして、規格外の力を持つ三人と、彼女たちを「遊び」で導き、その力を正しく制御しようとする王子の奇妙な旅が始まる。彼女たちが無邪気に遊ぶたび、王国を脅かす難敵は露知らずのうちに駆逐されていく。自覚なき救世主たちのドタバタな日常が、世界の運命を静かに、そして豪快に変えていくのである。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 【2025カドカワBOOKS10周年記念長編コンテスト中間選考通過作品】 ・規格外の魔法少女は『遊び』と称して魔獣討伐行ってます!?