究極のポーター 最弱の男は冒険に憧れる

長野文三郎

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第91話 春だ、銀嶺草をとりに行こう

 切実な問題がせまっている。
俺の身体強化ポーションの在庫が底をつきかけているのだ。
これがなければ俺は【HP】10/10で迷宮第五階層に臨まなくてはならなくなってしまう。
はっきり言って自殺行為だ。
いくら装備を良くしたって、マモル君を装備していたって、HP10はないよね。
せめて身体強化ポーション(10倍)でHPを100にしないと。
 というわけでパティーと一泊二日の旅行に出ることになりました! 
嬉し恥ずかしのお泊り旅行ですよ! 

と思ってたんですけどね。
なんでしょうこの大人数は。
総勢9人+ゴブですよ。
内訳は『不死鳥の団』の6人とパティー、ジェニーさん、セシリーさんだ。
「しょうがないでしょ、さすがに二人っきりで旅行するわけにはいかないもん」
苦笑しながらパティーが俺を慰める。
「前に二人で旅をしただろ?」
「あれは街の外で出合ったからいいの。二人だけで街を出たら何を言われるかわかんないじゃない」
そんなものなのか? 
だったら俺が一足先に歩いて街を出たのに。
噂が立つのを恐れて団体旅行に切り替えたのね。
まあその方が無難といえば無難だけど。
でもさ、少しは期待してたんだぜ。
イチャイチャする予定がイジイジすることになってしまった。
「イッペイさん」
うるさいな、今の俺はイジイジ宮田だ。
「随分とご落胆のご様子ですこと。二人っきりで出かけられなくてご愁傷さまですわね」
ジェニーさんがお上品に微笑みかけてくる。
「とんでもない。ユージェニーさんのような素敵な方とご一緒出来て光栄ですよ」
ジェニーさんは正統派お嬢様って感じなんだよね。
「ふふ……でも、ごめんなさい。今回無理やりついてきたのは私の画策なの」
「それもパティーのためなんでしょう?」
「わかって頂けて良かったですわ」
ジェニーさんも親友のために憎まれ役をを引き受けたんだ。
なかなかできることではない。
ラブラブできないのは残念だけど、皆でのんびり旅をするのだって楽しいものだ。
俺は気を取り直してこの旅を楽しむことにした。

 俺たちは馬車二台で銀嶺草の生えるエステラ湖畔を目指している。
こちらの馬車は俺が手綱をとり、隣にはパティー、荷台にはゴブとジェニーさんとメグが乗っている。
向こうの馬車はクロが手綱をとり、その隣には当然のようにセシリーさんが座っている。
クロとの距離をグイグイ詰めようとするから、クロが端っこに追いやられて今にも馬車から落ちそうだ。
そんなにがっつくんじゃありません! 
荷台にはジャンとマリアとボニーさんが乗っている。
ネピアからエステラ湖までは片道約三十キロ。
時間にして3時間弱の道のりだ。
「イッペイ、お昼前にはエステラ湖だよね」
「ああ。向こうについたらまずご飯だよな。今日のメインはウサギ肉のコンフィだよ」
コンフィは低温の油でゆっくりと加熱調理したものだ。
長期の保存に耐え、美味しいので探索の際もよく持っていく。
火は既に十分通っているのでフライパンで再加熱し焼き色を付けるだけなので探索中の調理でも楽だ。
「イッペイの料理は久しぶりね。楽しみ」
身体を預けてくるパティーの重みを心地よく感じながら、エステラ湖までの旅を楽しんだ。
目立たないように太腿と太腿をくっつけ合ってイチャイチャしたぞ。
 春の草原はタンポポの黄色で息も詰まりそうだ。
どこもかしこもタンポポの絨毯だ。
魔物もでず、長閑な街道をのんびりと馬車を走らせた。

 予定通りにエステラ湖に到着し、まずはお昼ご飯だ。
「ゴブ君、準備はいいかね?」
「ウィ、シェフ!」

本日のメニュー
春キャベツで巻く魚介のテリーヌ
ラパンのコンフィ、ソラマメ、タンポポ、ルッコラのサラダを添えて
マンゴープリン
コーヒー

今日は春らしいメニューにしてみた。
ほとんど家で用意してきたので現地でするのは盛り付けくらいだ。
春はソラマメが美味い。
サラダだけではなくて直火でさやごと焼いたのも食べた。
マンゴーは第四階層の密林でとってきたものだ。
メグとジェニーさんが特に気に入ったようだ。
ジェニーさんは次の探索では絶対に密林に寄ると言っていた。
あそこは幹線道路から外れているから行くのは少し面倒なんだよな。
ギルドの買取リストにもマンゴーはあるが、生鮮物は痛みやすいせいか持ち込む冒険者は少ないそうだ。

 昼食が終わり皆に手伝ってもらって銀嶺草を探す。
このために豪勢な料理を用意したんだからみんなしっかり探してくれよ。
なんせ俺の命がかかっている。
 一口に薬草採取といっても性格が出る。
パティーは大雑把な性格をしているが銀嶺草の採取は二度目なのでそこそこ頑張れる。
根気もある方だ。
ジェニーさんはのんびりと草摘みを楽しむ感じだ。
たまにスミレの花などがかごに混じっていて、なんとなく優雅だ。
イカリソウなんかも摘んである。
ジェニーさんは知っているのかな?
イカリソウは精力剤の素材になるんだよ。
薬草採取に全く向いていないのはジャンとボニーさんだ。
銀嶺草とは似ても似つかない葉っぱをちょこっととった後は、野兎を追いかけてどこかへ消えた。
セシリーさんとマリアは一生懸命な割に成果が上がらない。
努力が空回りするタイプだ。
それでも真面目なので一定量を集めてくれる。
いっぱい動いて少し汗ばんだお姉さん方は匂い立つような色気がある。
一番優秀なのがクロとメグだ。
生活のために小さい頃から山を巡って山菜などを集めてきたので鍛え方が違う。
そのうえ二人とも真面目な性格なのでたくさんの銀嶺草を集めてくれた。
「山菜取りとかキノコ採りとか、昔からすごい熱くなるんです!」
メグならそうだろうね。
「いっぱい取れましたよ。お役に立てましたか?」
クロがかご一杯の銀嶺草を誇らしげに見せてくれる。
大きな瞳を見開き、薄く汗をかきながらの笑顔がとても素敵だ。
可愛いぞクロ! 
俺は思わずクロを抱きしめた。
睨むなセシリーさん。
あ、なんかいい匂いする。 
クロの匂い? 
新しい世界が俺を呼んでる……。
はっ!!
危ない危ない、異界の扉が開きかけたぜ。
もちろん冗談ですよ
冗談だってば!
「よし、頑張ったクロとメグにはご褒美だ! こいつにのせてやろう」
俺は荷台に積み込まれた品にかけたシーツを取り去る。
現れたのは小型のオフロードバイクだ。

鑑定
【名称】BKB 1号
【種類】小型二輪車 (オフロードタイプ)
全長―全幅―全高 1982×771×1090
【最高時速】80キロくらい
【エネルギー供給方式】魔力インジェクション、エネルギーポットに魔石をセット。
【カラー】ライムグリーン
【備考】魔力スターターを採用し始動がボタン一つで楽々。今日もアクセル全開で頑張ります。悪路を走破するためにトルク重視で最高速度は重視していない。

「これって自転車ですか?」
クロが目を輝かせる。
自転車はネピアでも浸透してきていて庶民の憧れの乗り物だ。
だが原動機のついた二輪車はまだない。
「乗ってみるか? 転んでも壊れないような頑丈な作りをしているから大丈夫だぞ。怪我の方も俺が治してやるよ」
クロとメグがキャーキャー言いながらバイクを楽しんでいる。
ちょっと教えただけですぐに乗れるようになった。
運動神経がいいからかな? 
ギアチェンジなんか俺より上手だぞ。
「ねえイッペイ、私にもこれ作って!」
パティーも気に入ってしまったようだ。
「イッペイさんはこういったものでご商売はされないのですか?」
ジェニーさんが聞いてくる。
「それは仕事が増えるから嫌です」
俺の道具は俺が楽しむためであり、冒険のための道具でしかない。
せっかく自由になれたのに忙しい仕事人に戻るのはごめんだ。

 忘れずに持ってきたカメラでパティーを撮った。
ツーショットの写真も撮って二人で分ける。
恋人の写真を持ち歩くなんて普通なら甘い行為なのかもしれないが、死が身近なこの世界ではやけに切なさが籠っている気がする。
クロとセシリーさんの写真も撮ってあげたよ。
無言の圧迫が凄かったから。
はいはい、セシリーさん、泣かなくていいんだよ。
俺たちはたくさん遊んで、たくさん休んで、休日を満喫した。
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