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第95話 迷宮新時代
第五階層5区の噴水広場はこの階層唯一の水場だ。
400メートルトラックが丸々入りそうなほど広い部屋の真ん中に大きな噴水がある。
噴水からは常に水が吹き出し冒険者たちに利用されている。
この噴水広場には冒険者たちが多く集まる。
水を汲み、情報を交換し合い、物資の交換や販売も行われるのがこの噴水広場だった。
今この場所で噂されているのはもっぱら巨大サイクロプスの話だ。
「おい聞いたか、あのジャイアントが倒されたらしいぞ」
「なんだと! いつの話だ?」
「今朝、3区へ探索に行った『闇の糸』の連中が奴の死体を見つけたそうだ」
「やったのは?」
「それがわからないんだ、死体の様子から見て昨日の内に倒されたようだ。しかも驚くことに、一撃だったらしい」
「一撃ってどういうことだよ? 極大魔法を使ったってことか?」
「わからん。フレイム系や電撃系ではなかったようだ。アレを使うと周りが黒焦げになるからすぐわかるだろ。とにかく傷は急所の眼の部分だけ。他に目立った傷はなかったんだと」
「まじかよ……ロットさんのところの『アバランチ』あたりがやったのか?」
「いや、ロットさんは今7層だぜ」
「他にこんなこと出来そうなパーティーと言えば『ホーリーシールド』か『蒼の雷光』、『鉄鎖の群』、『五剣舞』、『エンジェル・ウィング』くらいか?」
「そうだな。『アバランチ』は頭一つ以上出ているけど、続く5強も強いからなぁ」
広場のそこここで巨大サイクロプス討伐の噂話がなされる。
だが、誰が巨大サイクロプスを倒したのか、真実を知る者は誰もいなかった。
リビングにある大テーブルを囲み『不死鳥の団』は朝食をとった。
給仕はゴブがしてくれる。
ゴブは優雅な所作で俺のカップにコーヒーのお代わりを注ぐと、スッと後ろに控えた。
「みんな食べ終わったかな? それじゃあ引き続き会議を始めるよ」
俺は昨晩のうちに皆に宿題を出してある。
それはEランク魔石をどうするかだ。
1.ギルドに売却する。
2.攻撃力強化に使う。
3.防御力強化に使う。
4.輸送能力の強化に使う。
1番のギルドに売るという選択をしたメンバーは誰もいなかった。
ここのところ魔石や素材がでても、対物ライフルの銃弾や装備、テーラーのエネルギー源などに使われ利益があまり上がっていない。
一人頭の月の取り分は20数万リムくらいだ。
メグやクロは家族の生活が懸かっているので、収入が減るのは痛いだろう。
「先行投資です。後で大きくなって返ってくると思えば全然気になりません! それにお父さんの工房も大口の仕事が入ったので今は安定しているんです」
メグは5人も弟妹がいる。
お父さんが勤める工房は、この春から城の城壁補修を請け負ったそうだ。
長期の仕事なのでしばらくは安心ということだった。
「僕は現状でも以前よりずっと稼げています。弟や妹たちも元気になりました」
痩せていたクロの兄妹も最近ではご飯をたくさん食べて、年相応の体つきになった。
俺にも良く懐いてくれている。
こんどクロの兄妹にケーキでも焼いてあげようかな。
それとクロの弟は絶対にセシリーさんには見せちゃダメだな。
また迷宮に潜れなくなるから。
だってクロをそのまま小さくした感じでとても可愛いのだ。
弟のシロも妹のシルクもまだ7歳と10歳だ。
もし、セシリーさんがシロに何かしたらさすがに通報する。
その場で排除も辞さないぞ!
それはさておき、2番目の攻撃力強化に賛成したのはジャンとマリアだ。
俺が作りたかったのもこれだ。
俺の出した案はタッ君の荷台に機銃を据え付けるというものだ。
機銃は1発1発がクロのアンチマテリアルライフルと同じ破壊力を持ち、100発の連射が可能だ。
これがあったらあの巨大なサイクロプスも余裕で倒せただろう。
最初は俺が使ってヒーローになる予定だったが、後衛の俺が後ろからこんなものをぶっ放すわけにもいかないと気付いた。
「マリア、言いたくなかったら言わなくてもいいが、今魔力量はどれくらいある?」
機銃は掃射するのに大量のMPを消費するので運用はタッ君に乗るマリアになる予定だ。
「そんな遠慮なさらずに何でも聞いて下さい。昨日レベルアップして786になりました」
MP量786なら申し分ない。
これならブローウィング・ドエム2重機関銃を任せられる。
マリアがドエムか……。
イカン、けしからん想像をしてしまった!
3番目の防御力強化はマモル君の改良のことだ。
現在俺はマモル君を4個装備している。
だからふいに襲われたとしても防御力180のシールドを自動で4枚張ることができるのだ。
だが、Eランクの魔石で作るマモル君(改)はなんと一つで防御力1800のシールドを作り出せるのだ!
「今ので充分だろ。おっさんビビりすぎだぞ」
「必要……ない」
はい……。
クロだけが「イッペイさんはパーティーの要だから」と賛成してくれた。
もうよせよ、抱きしめたくなるから……。
4番目の運送力強化はボニーさんとメグが賛成した。
メグは素材運搬の点から、ボニーさんは兵員と兵器の輸送の観点からの賛成だ。
ただしこれ以上、俺にはゴーレムは操れない。
俺は一度に魔石20個分しかゴーレムを運用できないのは以前話した通りだ。
現在、ゴブ(10)・タッ君(5)・マモル君×4つ(4)スパイ君(1)のトータル20でいっぱいいっぱいだ。
作るとしたらテーラーのような普通の運搬車を作るしかない。
俺がマモル君を装備しなければその分4つの枠ができるが、そんなの怖すぎる。
その後も話し合いは続き、結局Eランク魔石の使い道は機銃で決定した。
それ以外にもテイラーをもう一台作ることにもなった。
これにより『不死鳥の団』は、
前衛:タッ君に搭乗したジャン(アサルトライフル)、メグ(軽機関銃)、マリア(重機関銃)
中衛:ボニー(指揮・情報総括 アサルトライフル)、クロ(運転手)
後衛:ゴブ(運転手)イッペイ(運転手、後方警戒、荷台後方の軽機関銃)
という車両移動フォーメーションになった。
自走する3台の車両は小型とは言えかなり目立つ。
「おいあれ見ろよ」
とか、
「いいなあれ。うちも取り入れようぜ」
といった声がちらほら聴かれた。
たまにどこで買ったのかを聞かれて困ることもあった。
技術情報を自動車メーカーあたりに故意に流して、似たようなものを販売してもらえば目立たないかもしれないな。
王都に架空の会社をでっちあげてそこで作ってもらったことにしてその場はやり過ごした。
「そういえば、『エンジェル・ウィング』も似た様な車両に乗ってたぞ」
「これからの迷宮探索は運搬車かもな……」
迷宮の新時代が幕を開けようとしているのかもしれない。
後日、ネピアの自動車メーカーに匿名の手紙が届く。
ウォード社技術開発主任のスコット・ウォードは同封された新型駆動機構の設計図に目を見開いた。
そこにはこれまででは考えつかなかったような低燃費かつ高出力を実現した魔導モーターとテーラーの姿があった。
ウォード社は1か月後には設計図から最初の試作機をおこすことに成功。
この頃から冒険者を中心に何故か宣伝前のテーラーの問い合わせが入りはじめた。
ウォード社が最初の受注受付を開始するのはその2か月後だった。
鑑定
【名称】ブローウィング ドエム2重機関銃
【種別】重機関銃
【攻撃力】使用弾丸によって異なる(3240~)
【装弾数】110発
【備考】重量38キロ 有効射程2000メートル 1発撃つのにMP5が必要。
400メートルトラックが丸々入りそうなほど広い部屋の真ん中に大きな噴水がある。
噴水からは常に水が吹き出し冒険者たちに利用されている。
この噴水広場には冒険者たちが多く集まる。
水を汲み、情報を交換し合い、物資の交換や販売も行われるのがこの噴水広場だった。
今この場所で噂されているのはもっぱら巨大サイクロプスの話だ。
「おい聞いたか、あのジャイアントが倒されたらしいぞ」
「なんだと! いつの話だ?」
「今朝、3区へ探索に行った『闇の糸』の連中が奴の死体を見つけたそうだ」
「やったのは?」
「それがわからないんだ、死体の様子から見て昨日の内に倒されたようだ。しかも驚くことに、一撃だったらしい」
「一撃ってどういうことだよ? 極大魔法を使ったってことか?」
「わからん。フレイム系や電撃系ではなかったようだ。アレを使うと周りが黒焦げになるからすぐわかるだろ。とにかく傷は急所の眼の部分だけ。他に目立った傷はなかったんだと」
「まじかよ……ロットさんのところの『アバランチ』あたりがやったのか?」
「いや、ロットさんは今7層だぜ」
「他にこんなこと出来そうなパーティーと言えば『ホーリーシールド』か『蒼の雷光』、『鉄鎖の群』、『五剣舞』、『エンジェル・ウィング』くらいか?」
「そうだな。『アバランチ』は頭一つ以上出ているけど、続く5強も強いからなぁ」
広場のそこここで巨大サイクロプス討伐の噂話がなされる。
だが、誰が巨大サイクロプスを倒したのか、真実を知る者は誰もいなかった。
リビングにある大テーブルを囲み『不死鳥の団』は朝食をとった。
給仕はゴブがしてくれる。
ゴブは優雅な所作で俺のカップにコーヒーのお代わりを注ぐと、スッと後ろに控えた。
「みんな食べ終わったかな? それじゃあ引き続き会議を始めるよ」
俺は昨晩のうちに皆に宿題を出してある。
それはEランク魔石をどうするかだ。
1.ギルドに売却する。
2.攻撃力強化に使う。
3.防御力強化に使う。
4.輸送能力の強化に使う。
1番のギルドに売るという選択をしたメンバーは誰もいなかった。
ここのところ魔石や素材がでても、対物ライフルの銃弾や装備、テーラーのエネルギー源などに使われ利益があまり上がっていない。
一人頭の月の取り分は20数万リムくらいだ。
メグやクロは家族の生活が懸かっているので、収入が減るのは痛いだろう。
「先行投資です。後で大きくなって返ってくると思えば全然気になりません! それにお父さんの工房も大口の仕事が入ったので今は安定しているんです」
メグは5人も弟妹がいる。
お父さんが勤める工房は、この春から城の城壁補修を請け負ったそうだ。
長期の仕事なのでしばらくは安心ということだった。
「僕は現状でも以前よりずっと稼げています。弟や妹たちも元気になりました」
痩せていたクロの兄妹も最近ではご飯をたくさん食べて、年相応の体つきになった。
俺にも良く懐いてくれている。
こんどクロの兄妹にケーキでも焼いてあげようかな。
それとクロの弟は絶対にセシリーさんには見せちゃダメだな。
また迷宮に潜れなくなるから。
だってクロをそのまま小さくした感じでとても可愛いのだ。
弟のシロも妹のシルクもまだ7歳と10歳だ。
もし、セシリーさんがシロに何かしたらさすがに通報する。
その場で排除も辞さないぞ!
それはさておき、2番目の攻撃力強化に賛成したのはジャンとマリアだ。
俺が作りたかったのもこれだ。
俺の出した案はタッ君の荷台に機銃を据え付けるというものだ。
機銃は1発1発がクロのアンチマテリアルライフルと同じ破壊力を持ち、100発の連射が可能だ。
これがあったらあの巨大なサイクロプスも余裕で倒せただろう。
最初は俺が使ってヒーローになる予定だったが、後衛の俺が後ろからこんなものをぶっ放すわけにもいかないと気付いた。
「マリア、言いたくなかったら言わなくてもいいが、今魔力量はどれくらいある?」
機銃は掃射するのに大量のMPを消費するので運用はタッ君に乗るマリアになる予定だ。
「そんな遠慮なさらずに何でも聞いて下さい。昨日レベルアップして786になりました」
MP量786なら申し分ない。
これならブローウィング・ドエム2重機関銃を任せられる。
マリアがドエムか……。
イカン、けしからん想像をしてしまった!
3番目の防御力強化はマモル君の改良のことだ。
現在俺はマモル君を4個装備している。
だからふいに襲われたとしても防御力180のシールドを自動で4枚張ることができるのだ。
だが、Eランクの魔石で作るマモル君(改)はなんと一つで防御力1800のシールドを作り出せるのだ!
「今ので充分だろ。おっさんビビりすぎだぞ」
「必要……ない」
はい……。
クロだけが「イッペイさんはパーティーの要だから」と賛成してくれた。
もうよせよ、抱きしめたくなるから……。
4番目の運送力強化はボニーさんとメグが賛成した。
メグは素材運搬の点から、ボニーさんは兵員と兵器の輸送の観点からの賛成だ。
ただしこれ以上、俺にはゴーレムは操れない。
俺は一度に魔石20個分しかゴーレムを運用できないのは以前話した通りだ。
現在、ゴブ(10)・タッ君(5)・マモル君×4つ(4)スパイ君(1)のトータル20でいっぱいいっぱいだ。
作るとしたらテーラーのような普通の運搬車を作るしかない。
俺がマモル君を装備しなければその分4つの枠ができるが、そんなの怖すぎる。
その後も話し合いは続き、結局Eランク魔石の使い道は機銃で決定した。
それ以外にもテイラーをもう一台作ることにもなった。
これにより『不死鳥の団』は、
前衛:タッ君に搭乗したジャン(アサルトライフル)、メグ(軽機関銃)、マリア(重機関銃)
中衛:ボニー(指揮・情報総括 アサルトライフル)、クロ(運転手)
後衛:ゴブ(運転手)イッペイ(運転手、後方警戒、荷台後方の軽機関銃)
という車両移動フォーメーションになった。
自走する3台の車両は小型とは言えかなり目立つ。
「おいあれ見ろよ」
とか、
「いいなあれ。うちも取り入れようぜ」
といった声がちらほら聴かれた。
たまにどこで買ったのかを聞かれて困ることもあった。
技術情報を自動車メーカーあたりに故意に流して、似たようなものを販売してもらえば目立たないかもしれないな。
王都に架空の会社をでっちあげてそこで作ってもらったことにしてその場はやり過ごした。
「そういえば、『エンジェル・ウィング』も似た様な車両に乗ってたぞ」
「これからの迷宮探索は運搬車かもな……」
迷宮の新時代が幕を開けようとしているのかもしれない。
後日、ネピアの自動車メーカーに匿名の手紙が届く。
ウォード社技術開発主任のスコット・ウォードは同封された新型駆動機構の設計図に目を見開いた。
そこにはこれまででは考えつかなかったような低燃費かつ高出力を実現した魔導モーターとテーラーの姿があった。
ウォード社は1か月後には設計図から最初の試作機をおこすことに成功。
この頃から冒険者を中心に何故か宣伝前のテーラーの問い合わせが入りはじめた。
ウォード社が最初の受注受付を開始するのはその2か月後だった。
鑑定
【名称】ブローウィング ドエム2重機関銃
【種別】重機関銃
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こうして、規格外の力を持つ三人と、彼女たちを「遊び」で導き、その力を正しく制御しようとする王子の奇妙な旅が始まる。彼女たちが無邪気に遊ぶたび、王国を脅かす難敵は露知らずのうちに駆逐されていく。自覚なき救世主たちのドタバタな日常が、世界の運命を静かに、そして豪快に変えていくのである。
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