双子の姉が王子に見初められましたがそれは身代わりで女装した弟の俺です

葉月くらら

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11話 エミリオたちの反撃

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「き、貴様ら! こんなことをしてただで済むと思うなよ! よくも私に恥をかかせたな!?」

 赤くなったり青くなったりして忙しいジェラルドが怒鳴り散らす。
 その彼の前に一人の男が人混みのなかから突き出され床に膝をついた。

「うわあ!?」
「バルド? どういうことだ」
「兄上、彼には色々と話を聞きました」

 現れたのはジェラルドの取り巻きの一人であるバルドだった。その後ろから冷ややかな眼差しのアルフィオが出てきた。

「実は先日、学園で彼がリリアーナのロッカーにあった万年筆をクロエの机に入れようとしているところを見てしまったのです。その前にもこんな嫌がらせのメモが鞄の中に入っていました。私は彼と委員会が同じなので見たことがあったんですが、これはデルネーリ先輩の筆跡ですよね」

 澄ましたアルフィオの話し方に吹き出しそうになっているリリアーナを肘で小突いて、エミリオは口を開いた。

「……さらに彼の指先を見てください。怪我をしているでしょう。リリアーナは度々の嫌がらせから身を守るために鞄にしかけをしていました。それはその時の傷だと思います」

 さすがにトラバサミを鞄の中に仕掛けていたとは言わないけれど。……そんなことをする貴族令嬢はいないからだ。
 エミリオはにこやかにジェラルドを見つめた。

「そしてこの件はジェラルド殿下の指示だと聞きました」
「嘘だ! そいつが勝手にやったことだ!!」
「そんな! ジェラルド様!?」

 可哀そうにあっさり切り捨てられたバルドは蒼白になっている。
 彼が怪しいと踏んでから学園で監視していたのだが、犯行現場はあっさりと見つかった。あまりにも短絡的だったがエミリオ達には好都合だった。
 最初は後輩ということで不遜な態度を取っていたバルドだったが所詮は伯爵家の次男坊だ。侯爵家であるエミリオと王子であるアルフィオに笑顔で実家に報告するね! と言われたら泣いてすべてを白状したのだ。

「すべてジェラルド様に命令されたことです。リリアーナ嬢を手に入れるためには婚約者のクロエ嬢の存在が邪魔だからと。彼女を陥れるためにでっちあげました」

 そうすればいずれ王となるジェラルドの側近として仕えさせてもらえるはずだったのだ。
 バルドはジェラルドに見捨てられたとわかると床に手をついて背を丸め、震えながらすべてを白状した。

「嘘だ! そんなのはすべて嘘だ!」

 地団駄を踏んで喚くジェラルドへの周囲の視線は冷ややかだった。

「くそ! 貴様らたかが貴族の子供の分際でよくも私をはめようとしたな!? 絶対に許さないぞ!」
「誰が何を許さないというのだ?」

 真っ赤になって取り乱すジェラルドがエミリオ達を睨む。
 たしかにエミリオ達も王子相手にここまでやってただで済むとは思っていない。しかし黙っていればリリアーナは強引に婚約者にされてしまうし、クロエは汚名を着せられてしまう。それをエミリオは許せなかったのだ。
 会場に低く通る声が響き貴族のざわめきがすっと消える。取り乱していたジェラルドもはっと顔を上げて涙目ですがったのは国王だった。

「父上! あいつらを罰する許可をください! 私はただリリアーナと婚約をしたくて……!」
「ジェラルド、以前からお前の悪い噂は聞き及んでいたがここまでとはな。……少し甘やかして育てすぎたようだ」
「は……」
「婚約者である我が娘に汚名を着せようとは許しがたい」
「リリアーナへの婚約の申し込みはお断りの連絡をしておきました。まだ聞いてなかったですかね?」

 怒りのオーラを纏わせたアルファーノ辺境伯とやたら呑気でにこやかな笑顔のオクタヴィア侯爵……つまりはクロエと双子の父が登場した。今まで黙って事の成り行きを見守っていたようだが、事態を収拾するために出てきたのだろう。
 父である国王の態度に加え、二人の国の重鎮が出てきたことでジェラルドは委縮し、それからクロエへと矛先を向けた。

「く、クロエ! 貴様だな!? 貴様が私をはめるために仲間たちと共謀したんだな!?」
「ジェラルド王子殿下」

 ずっと黙って俯いていたクロエが顔を上げた。エミリオが一瞬庇おうとしたが大丈夫と彼女は頷いた。

「わたしはあなたの婚約者となってから今日まで将来の王妃にふさわしい人間になろうと努めてまいりました。王子殿下にどのような態度を取られようとも。王子殿下はどうでしょうか? この国の王になるにふさわしいとご自身の行動を省みてお思いになりますか」
「貴様……クロエ……!!」
「このようなことを言えば家に迷惑がかかるかもしれませんが、わたしは王子殿下と婚約を解消できそうでほっとしています」
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