時の記憶に触れる者

時々

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勇者と魔王

開始

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「ねぇねぇ、○○は冒険者って知ってる?」


「いや、知らないよ。何をする人なの?」


「えー!知らないの?冒険者だよ、ぼ・う・け・ん・しゃ!」


「もったいぶらないで教えてよ。僕は世間に疎いんだ。」


「もう!仕方ないなぁ。よし、分かった!何も知らない○○にこの瀬奈お姉さんが教えてあげよう!」


 小ぶりな胸を精一杯張って、お姉さんっぽく振舞おうとする瀬奈。まぁ実際彼女のほうがお姉さんだったが。


「冒険者はねぇ、ずばり世界を見て回る人のことだよ!」


「それって何か意味あるの?」


「世界は○○が思っているほど狭くないんだよ?ものすっごく広いんだから!私も君も知らないことがたーくさんあるの。美味しいもの、美しい景色、未発見の遺跡……そのほかにもまだまだ世界には秘密がいっぱい広がってるんだよ。それらを探求していくのが冒険者。私の夢は冒険者になることだったの。でも君と旅してるからある意味冒険者になったようなものなのか。やだっ、私ったら今驚愕の事実に気づいちゃった。もう夢叶ってるね!」


 そう言いながら僕の隣で少し頬を赤く染めながら照れ隠し気味に僕に微笑む瀬奈。
 そして――――



♦♦♦



「マスター、朝だよ、起きてー!」


 アイの元気な声で僕の意識が完全に覚醒する。今日は、とても良い夢を見た気がする。思い出してみようとしたが無理だった。まぁ夢ってものは思い出せないものだから仕方ないと思いつつ身だしなみを整えてからみんなのもとへ向かう。


「「「「ごちそうさま(です)!」」」」」


 料理は基本、ユヅキが作る。家事全般はコハク。実はこの双子、家事スキルが半端ではない。コハクが家事を得意にしているのはわかる。僕たちの中で一番しっかりとしているのが彼女だし、雰囲気からして想像できる。
 だが、ユヅキが料理得意なのは意外だった。ちなみに家事が完璧なコハクだが料理だけはできない。
 僕も料理は一応できるがユヅキには遠く及ばない。どうせならおいしいものを毎日食べたいという気持ちから、我がギルドの食卓はユヅキ任せになっているのだ。


「よし、今日は合同依頼のために冒険者ギルドへ行く。支度はできているか?」


「マスター、私たちは大丈夫です。いつでも出発できるように昨日準備を済ませてあります」


 コハクが代表になって答えるとアイ、ノア、ユヅキも首を縦に振る。僕も昨日済ませたから、これで全員の準備が整ったことを確認したことになる。


 扉に手をかけそのまま開く。きれいに澄んだ風が耳をくすぐる。
 5年ぶりの冒険者活動。
 感覚は鈍っていない。
 体調は万全。


「転移」


 “静謐の森”から一瞬で王都周辺まで移動する。約束まで30分ほど、まぁ間に合うだろう。





♦♦♦







 冒険者ギルドの扉を開いた瞬間に突き刺さる視線。どこからか僕たちの合同依頼のことを聞いたのか野次馬も沸いているようだ。

 その中で周囲とまとっている雰囲気が異なる冒険者が6人。その横に立っているのは見知った顔だったので、静かに近寄っていく。


「よう、ノワール。お相手さんたちはこの通りもう来ているぜ」


「ガラクか。朝早くからご苦労さん」


 こちらに気づいたガラクとあいさつをしているとほかの六人もこっちに気づいたようで観察するように見てくる。そして一応顔見知りのセルリアが代表として自己紹介を始める。
 要するにこの六人は六代魔法家の次期当主らしい。男3人、女3人。パーティーリーダーはセルリア・トパーズ。

 火の一族、カガミ・フレア。水の一族、セルリア・トパーズ。風の一族、ネネリー・フーカ。この3人は女性。
 土の一族、トム・ノーム。雷の一族、レイ・ミカド。天の一族、ソラ・クーマ。
 この3人は男性だ。
 全員同期で学院に通っているらしい。


「へー、君がノワール君か。失礼なこと言うようだけど、こんな依頼受けるなんて危険だと思わなかったの?」


 ネネリーが少し怒った風に僕に問いかけてくる。


「それに後ろの女の子たち君より小さいよね?危険にさらしてよくこんな平気な顔してられるわね。今回は私たちがいたからよかったものの―」


「ネネリー、それくらいにしておきなさい。依頼についてくるのだからそこで身の程を知るといいですわ」


「セルリアの言う通りだ。説教は依頼が終わった後でだ」


 セルリア、ネネリー、トムには完全に嫌われたらしい。そのほかの3人も僕にはとても友好的な目はしていない。アイたちの存在も無関係ではないだろう。おおかた僕が勝手に連れまわしているように見えているのかもしれない。

だが、僕としてはそんなこと一切どうでもいい。確認したいことは一つだけ。

僕たちがほかの冒険者と一緒に行動するときに必ず確認することが一つある。


「“六魔の覇者”のメンバーのみなさん初めまして。孤立ギルド“幻想”のマスターであるノワールだ。ガラクから聞いているだろうからアイたちの自己紹介は省略させてもらう。君たちがどう思おうが勝手だが、僕からは一つだけ確認させてもらう」


 一泊おいてから再び口を開く。


「僕たちが何をしても“何も聞かないでくれ”。君たちの質問には一言も応える気はない」


「その条件でかまいませんわ。どうせ私たちが戦うのです。ではさっそく行きましょう。移動手段は確保してありますので」


 有無を言わさぬ声音で冒険者ギルドの外へ向かおうとするセルリアのパーティー。外に置いてあった大きな馬車2台で目的地まで行くつもりらしい。
 んー。向こうが勝手にやるなら僕も勝手にやっていいよね的な視線をガラクに送ると、やれやれと首を左右に振っている姿が目に入る。周囲の反応もおおむね予想通りといった感じだ。5年前までは僕たちが頻繁に使っていたから知っている人がほとんどだろうが。

 僕は少しのいら立ちから、脳裏に目的地の森を思い浮かべる。彼女たちに何も告げずに魔力をを練り上げ、ノワールは静かにつぶやいた。


「転移」


「………は?」


 一体誰の口から漏れ出たのか分からないが、少なくとも内心は驚愕で埋まっていることだろう。転移魔法など単独で行使できる存在などいない。それも詠唱もしないで。

 一瞬で変わる景色。目の前に広がるのは目的地の森。僕たちの前で固まっている6人の冒険者。


「馬車なんて必要ない。こっちのほうが早いから」


 ノワールの言葉でようやく我に返ったのかセルリアが問いかけてくる。


「なにを、したのですか?」


 それが全員の言葉を代弁したものだというのにはにづいているが、ノワールは説明する気はない。


「確認したはずです。僕は質問には一切答えない。それにもう森につきました。ぼさっとしてないで先行きますよ」


 そういってノワールが進むと慌てて追いかけてくる。その様子に溜飲を少し下げているアイたちにほっとするノワールだった。



♦♦♦



 順調だった。さすがはSランクギルドのメンバー。多彩な魔法を操り次々と現れる魔物を難なく撃破していく。ノワールたちの出番は全くない。転移については触れない、というより見なかったことにしたらしい。

 しばらく進むとノアたちの目が細くなる。どうやらデミットマターの気配をとらえたらしい。もちろんノワールも補足している。


「あれは、見つけましたわ」


 セルリアが声を上げると全員が今回の盗伐対象を認識する。デミットマターが2体。複数対いたのでノワールが前に出ようとすると、ネネリーとセルリアがノワールの前に立つ。


「足手まといはいりませんわ」


「危ないから後ろにいて!」


「……わかった」


 ノワールは素直にうなずいた。事実デミットマター相手ならセルリアたちで問題ないだろう。だが、


「マスター、よろしいのですか?彼女たちではアレには絶対に勝てませんよ?」


 コハクがそう言ってくる。実際その通りだ。アレはデミットマターではない。正確にいうと亜種みたいなもので突然変異だ。討伐ランクは測定不能。とてもじゃないが個人ランクがSに届かないものが挑んで良い相手ではない。


「にぃに、あのこたちがどこまでやれるか……みるつもり?」


「正解。気になるからね。六代魔法家の次期当主の実力が」





 セルリアのはなった水の魔弾を合図にあらゆる意味で結果が分かっている戦いが始まった。
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