異世界転移令嬢、姉の代わりに契約結婚の筈が侯爵様の愛が重すぎて困ってます

琥珀

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55.アーヴィンの過去(1)

「アーヴィン様、ソクラテスの事は私を元気付けようとしただけなんです。」
「まぁ、セシリアにはそう見えたんだろうが…俺には…」
「お願いです…仲直りして下さい!」

ウルウルとした瞳でアーヴィンを見つめるセシリア。

「そんな顔されたら頷くしかなくなる…。まあ、俺も感情を抑えきれずに殴ってしまったのは良くなかった。ソクラテスの事は一部分は許せないが、話し合うよ。しっかりとね。」

「一部分…?」
「いや、分からないなら気にしなくていい。」
(はぁ…セシリアが鈍感で良かったよ…)

ホッとしているアーヴィンを不思議そうにみているセシリア。

「でも仲直りして下さるんですよね?安心しました!」
「何でそんなに仲直りさせようとしているんだ?」

少しムッとしているアーヴィンに微笑むセシリア。

「だってアーヴィン様はソクラテスの事信頼してるし大好きですよね!ソクラテスと喧嘩してるアーヴィンは少し複雑そうな表情でしたから。仲直りして元気になってくれると私も嬉しいんです。」

セシリアの言葉を聞いて優しく微笑むアーヴィン。

「そういう所だ。」
「え?」
「俺はセシリアの人を思いやる事が出来る所が好きなんだ。」
「え…あ、ありがとうございます…」

セシリアは照れて顔が赤くなる。
そんなセシリアに癒されるアーヴィンはセシリアの頭を撫でた。

「アーヴィン様、不安はなくなりましたか?」
「ああ。そうだな………」

アーヴィンの表情が曇った。

「どうかしましたか?」
「いや、結局俺も両親と変わらないなと思ってな。」
「ご両親ですか?」
「ああ。俺の父親は厳格な人間だったが…母に一目惚れして無理矢理結婚をさせたんだ。母親はそんな父親の事を窮屈に感じたのか出て行ってしまったよ。結婚する前に付き合っていた恋人とね。母親は父親に似ている俺の事を毛嫌いしていて一度も俺に微笑んでくれなかった。父親も俺には興味がなかったよ。母をどうしたら自分の思い通りに出来るのかといつも母の事ばかり考えていた。俺は常に1人で…家族らしい会話なんてひとつもない家だった。」
「そう…だったんですね…。」
「父は母を心から愛していた。愛していたからこそ母には厳しく、いろんな制限をかけて母から自由を奪った。母は父の愛が窮屈で父から離れる為に試行錯誤していたが家を出た時も結局は連れ戻され軟禁されて…人生に絶望して自殺を図り亡くなったんだ。父は自分自身を憎んでいたよ。俺が元気付けようとしても何の反応もしてくれなかったがな。」
「アーヴィン様…」

「俺は母が父を裏切ったと思い、それからは女性が苦手だった。人の愛し方も分からなかった。だけど俺も父親と同じ事をしてしまっていたんだな…。それに不安ばかり募ってしまう。うまく感情のコントロールが出来ないんだ。父のようになりたくないのに…」

セシリアは辛そうに喋るアーヴィンの頭を撫でた。
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