働きすぎた社畜、死んだらダンジョン核に転生して魔王に!? 〜自由に生きてたら、気づけば勇者と結婚してました〜

烏羽 楓

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第五章 自由と欲望の戦い

第45話「決別の刃、善悪を問う者」

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 紫紺の光が爆ぜ、床に走った魔法陣が淡く輝きを収めると――そこに、二つの影が立っていた。
 艶やかな白銀の髪を揺らすリルベアと、鋭い眼光を宿した巨狼ゼトス。

 誰もが言葉を失い、ただその光景を見つめる。

「……ッ!」

 クゼスの表情が初めて歪んだ。
 驚愕しながら声を漏らす。

「……ああ、ようやく会えましたね。しかし、封印されているはずが、なぜ……」

 低い声が、震えていた。
 クゼスは一歩前に出ると、瞳に怒りの炎を宿す。

「そうか……そういうことか。すぐ目を覚まさせてあげます、リルベア。あなたは我のものだ」

 剣の柄を握るクゼスの手に力がこもる。
 禍々しい魔力がフロア全体に広がり、石壁がバチバチと音を立てる。

 闘志を燃やすクゼスとは裏腹に俺たちは正直、安堵していた。
 ここにきて戦力が増えるのは、願ってもいないこと。
 
「ゼトス、リア……来てくれたんだな!」

 思わず声が出た。
 美月も息をつき、僅かに笑みを見せる。

「助かります!」

 巨体の狼は静かに鼻を鳴らし、俺と美月の前に立つ。
 そして、その傍らに立つ、本気モードのリルベア。
 
 その背に、心強さを感じた。

「ふん、予想外すぎる増援ですね」

 アキラが剣を肩に担ぎ、クゼスに視線を送る。

「クゼスさん、さすがにこのままじゃこっちが不利です。分担しましょう」

「……いいでしょう」

 クゼスがゆっくりと剣を構え、口元に冷たい笑みを浮かべた。

「雑魚など束になろうが関係ない。弱い方は貴様が持て。強い方は、私が面倒を見ます」

 クゼスが言い終えるや否や、アキラの剣から凄まじい斬撃が飛んだ。
 視界を裂く白刃の閃光。

「ッ!」

 咄嗟に俺と美月は左右に跳ぶ。
 刃が床を抉り、爆風が砂塵を巻き上げる。
 その直後、斬撃が通った軌跡に沿って光の壁が立ち上がった。

 結界――!

 俺とリルベア、アキラがいる側と、クゼス、美月、ゼトスがいる側が完全に分断される。

「……チッ!」

 思わず舌打ちするが、もう遅い。
 クゼスがゆっくりと剣を持ち直す姿が、結界の向こうで揺れて見えた。

「ヴァルトさん」

 美月が短く声をかける。

「すぐ行きます。そちらも気を付けて」

「……ああ」

 互いに視線を交わし、頷き合う。
 その直後、アキラが剣を構え直した。

「お前は絶対に殺す。お前がいることは――悪だ!」

 叫びと同時に、斬撃が走る。
 その一撃をリルベアが軽く弾くように霧散させる。

 耳鳴りがするほどの轟音。
 結界の光が揺らぎ、俺は思わず奥歯を噛み締めた。

 深く息を吸い、吐く。
 胸の奥で渦巻く怒りと殺意を、静かに燃やすように押し込める。

 感覚が研ぎ澄まされていく――。
 目の前のアキラの一挙手一投足が、手に取るように見える。

「お前のいう善悪ってなんだ?」

 低く、抑えた声で問いかける。
 それは、怒号ではなく冷たい刃のような声だった。

「言ってみろよ、クソガキ」

 殺気が迸り、空気が凍る。
 アキラが僅かに顔を歪めるが、次の瞬間には狂気じみた笑みを浮かべた。

「決まってるだろう。先輩を汚すものは、全て悪だ!」

 剣が再び輝き、殺意の奔流が俺を貫く。
 ――こいつは敵だ。言葉を交わさなくても、はっきりわかる。

 俺は剣を構え直し、地を蹴った。
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