姉様の身代わりになります。砂の国へ嫁ぐ日、私は復讐を決意した…なのに溺愛されてます。

紫陽花

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カルロスの回想

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メイファから密偵としての任務を授かったカルロスは思案していた。

ギムレットの悪行を調べて欲しいとメイファから依頼されたからだ。

パナギア王国からメイファの従者としてやってきたカルロスには、デューク王国とのコネクションもなく、調べろと言われても執務内容を知る術がないのだ。

そもそも…

そもそも…

ギムレット殿下の悪行など…

ありえないのだ。


・-・-・-・-・-・-・-・-・-

私はパナギア王国の馬番として12歳の時から働いていた。

パナギア王国には、エーゲ海の宝石と称される美しい姉妹がいた。

馬番として姉妹の外出などに同伴する事が多かった。
3つ年下のケイトは、病弱なこともあり、歳の割に大人びていて、その妹のメイファは自由闊達なお転婆娘で私は手を焼いていた。

歳が近かったこともあり、供として2人と過ごすことが多かった。(主にメイファのお守りだが…)

姉妹は、幼女の可愛らしさから、成長とともに少女としての美しさへと変化し、見るものを魅了してやまなかった。

私は筆頭執事のジョゼフからも信頼され 、2人の傍にいつも帯同出来ることが誇りであり、羨まれる立場であった。

その関係が大きく崩れ去る日までは…。


あの日はいつにも増して海と空が、真っ青だった。

筆頭執事のジョゼフがケイト様の婚姻が決定したと伝え、慌ただしく準備が始まったのだ。

私は正直、ホッとしていた。

私が想いを寄せるメイファ様ではなかったからだ。

ところが、メイファ様は病弱なケイト様を心配し自分が身代わりになると言い出した。

なんてことだ。

私は、輿入れに同行することを希望し、デューク王国へ行くことにした。

自分とは結ばれる運命にないと知りながらも、遠い砂の国に身代わりとして嫁ぐメイファ様と離れ離れになることは耐えられなかったのだ。

愛し合う相手との婚姻ではない以上、苦労されることも多いだろう。
私がお守りしなくては…この秘めた想い
は胸にしまい、ただお支えしていこうと決意していた。

デューク王国へは、海路と陸路を数日かけて行かねばならなかった。

「アンリ、カルロス…皆…私の為にこんな所までついてきてくれてありがとうね。」

辛い旅になったが、メイファ様の明るい人柄に一行は救われた。


私は、この可愛らしいメイファ様の伴侶となるギムレット殿下に激しい嫉妬心を抱くようになった。

石油だか貿易だか知らないが、姑息な手段を使って儲けた金で、エーゲ海の宝石を手に入れようとしているに違いない。

メイファ様には、祖国パナギア王国は、デューク王国の陰謀により多額の借金を抱え存亡の危機に陥れられていたと伝えた。
立ち寄る街々で噂になってると…。

これで、メイファ様はギムレット殿下に心を開くことはなくなるだろうと思ったのだ。

婚姻関係が破綻してしまえば、いずれ離縁されるかもしれないと思ったのだ。




……さぁ、困ったぞ。

私の嫉妬心が、メイファ様をトンチンカンな行動に突き進ませてしまっている。

カルロスは、やはり美しく夕焼けに染まった砂漠を眺め、思案に暮れるのであった。
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