ふとんがふっとんだ

らろぱ

文字の大きさ
2 / 6

2

しおりを挟む
翌朝、普段通り学校に行った。
しかし、昨日の一件もあってか、妙にやる気が起きず、ただただ何も考えずにぼーっと授業を受け、チャイムが鳴り、飯田が「飯食おうぜ」と隣の席に座って来たので「もう昼休み?」と問いかけると飯田は困惑しながら「そうだけど」と答えた。

俺が深いため息をつくと、飯田は「さては…」とクスクス笑っていた。その事にいつもなら腹が立つが、今は感情の高ぶりは感じられなかった。

「お前と俺って小学生の頃からの付き合いだよな?」

「あぁ、そうだけど」
飯田の紙パックを啜る音が聞こえた。
いつも飯田は昼休みになると紙パックのオレンジジュースのを飲んでいる。
毎日飽きないのだろうか。

「小学校の時にアキって子いなかった?」

飯田は紙パックを啜りながら考えていた。
最後まで飲みきり「いない」と答えられた。

「昨日なんかあったの?」と飯田に問われたので事情を話すと、「それ夢だろ」と笑われた。

「夢じゃないから、落ち込んでるんだろうが…」

飯田は何かを閃いた。
「前にお前の家でアルバム見てたとき幼稚園の時にお前がずっと遊んでた子と撮った写真あったよな…ワンチャンそれがアキって子なのかもな」

「まぁ一応調べとくわ」

そして学校が終わり、急いで家に帰った。
飯田と話していたときは平常心を保っていたが、あの時本当は滅茶苦茶気になっていた。

家に付くと、制服も脱がずに、部屋の奥からアルバムを取り出そうとしたが、埃と昔の物が溜まっており、出すのも一苦労だった。

「あった!」
アルバムを手に取り、幼稚園の頃のページをめくったが、あまり思い出せず、アルバムをすぐにしまった。

「うまくいかないよなぁ」
寝転がり、漫画を読んでいると母の「ただいまー」という声が聞こえた。

その瞬間、母なら何か昔のことを知っていると思い急いでリビングに向かった。

「あのさ、俺が幼稚園の時によく遊んでたアキちゃんって子覚えてる?」

「アキちゃん…あ!」
母はリビングにあるアルバムを持ってきた。

「ここにもアルバムあったんだ」

「お父さんが写真好きだったからね」
母がアルバムのページをめくると、俺の部屋にはなかった写真が入っていた。

「確かこのページ…あれ?」
そのページの写真が抜き取られていた。

「ここにアキちゃんとあんたの写真があったはずなんだけど…」
母は困惑していた。

「そのアキちゃんと俺って仲良かったの?」
そう尋ねると母は答えた。

「幼稚園の頃毎日のようにアキちゃんと公園で遊んでたでしょ?それでアキちゃんが引っ越しするってなって、それ以来会ってないはず…」

アキのこと以外の記憶はうっすらだが覚えているのに対しアキとの記憶は思い出せなかった。

それが何故かわからないまま、部屋に戻った。

「アキという人は本当に存在したのだろうか?」
その疑問の答えは考えても思い付くことはなかった。
だご、アキという女性が本当に存在するのならば先ほどの発言は本当に失礼である。

床に置きっぱだった漫画を棚に片付けているとスマホが鳴った。

「堂円寺さんからか…」
恐る恐るメール開いてみると、いますぐ公園に来いと書かれてたので、急いでジャンパーを羽織り、下に降りた。
玄関のドアを開けると冷たい風が全身を覆った。走っていると、冷たい風が喉を突き刺し、心臓が痛くなり、すぐに息があがってしまう。

なんとか、公園に着いたときはもう、疲れきっていた。息を整えて公園の中を見渡した。

するとベンチにガラの悪いおじさんが座っているのが見えた。堂円寺さんだ。

「どうしたんですか?」
「まずは座れ座れ」と手招きされた。
そして「彼女とはどうよ?」とニヤニヤしながら聞かれたので、逆に堂円寺さんを問いただした。

「彼女が堂円寺さんの姪っ子さんって言うのは嘘だったんですね」

「ま…そういうのは気にしなくて良いんだよ、それで会えたか?」

その態度に少し腹が立ち、口調が荒くなった。

「会えるわけ無いじゃないですか、あんたの嘘でこっちはまともに会話すら出来なかったのに…」

すると堂円寺さんは「そうか、そうか」とケラケラ笑っていた。
堂円寺さんは笑い疲れたように、「ふぅー」と息を吸い込むと空を見上げた。

「彼女も気の毒だな、というよりか臆病なせいで、なーんにも出来ないんだな」

「もう少し勇気でも出して、行動しないと、一生そのまま、誰にも存在を認められずに…
すまん!泣かないでくれよ!俺ももう少し協力できたら良かったな」

「堂円寺さん…誰に言ってるんですか?」
先程から俺と堂円寺さんしかこの公園にいないのに、俺から視線を外して話しかけたり、俺が泣いてもいないのに、立ち上がって慰めたり、何をしているんだろうか?

「ごめんな、これだけ言わせてもらう」
堂円寺さんは俺の方に視線を向けた。

「お前が昔この公園で一緒に遊んでいて、俺が昨日電話をかけさせたアキという子は、見えないかもしれないけど、ずっとお前の後ろにいるんだよ」

状況がつかめなかった。
俺には見えずに堂円寺さんは、アキという女の子が見えている。
となれば…
「アキは、死んでしまい、守護霊みたいな感じで、俺に憑いているということですか?」

「いや違う、というかそれアキちゃんに失礼だろ」

堂円寺さんの即答に困惑していた。
俺に見えないのだから、アキは幽霊で堂円寺さんは霊能者という俺の勘は外れていたので、ますますややこしくなった。

「アキちゃんは生きてる、だけれど俺を除く他の人には見えないんだよ
それがなぜだかわかるか?」

なぜなのかわかったらここまで困惑しないんだが…とは思ったが口に出すのは申し訳なく思った。

「わからないです」
そう答えると、「そうか」と口に出して、胸ポケットからだした煙草を吸おうとした。

煙草を1本取り出そうとしていたが、何者かが、そっと箱の中に戻した。

「そうか、禁煙中だったもんな…」
堂円寺さんは渋々胸ポケットに煙草をしまった。

「今のって…」

「これがアキちゃんがここにいる証拠だよ」

非現実的な事が目の前に起こってしまった。
起こり得ないことが起こると人間は思考が停止し、頭が真っ白になる。そして、行動が出来なくなる。

「驚くのも無理はないだろうな…
でも、物事の本質が何かを信じないと見抜くことが出来ないもんなんだよ、
非現実的だが、幽霊を信じないやつは、幽霊が見えないし、
日常的なことで言えば、夢が叶うと信じているやつはいつかは叶う
アキちゃんだって同じさ、お前がアキちゃんのことを信じてやれば、見えるはずだ」

目を凝らして後ろの方を見たがアキの姿は見えなかった。

「今は俺の後ろに立ってるよ
まぁ時間をかければ、声くらいは聞こえるようになるんじゃないか?」

堂円寺さんが立ち去ろうとした。
「アキが堂円寺さん以外の人に見えないのはなぜなんですか?」

すると、堂円寺さんは俺の方を向き、答えた。
「アキちゃんはこの世界の人間から必要とされないから、存在を消されてしまったんだよ
本当はもう少し詳しいことを話したいんだが、俺にもここにいる期限がある。アキちゃんはそれが無いが見えないし俺にはあるからもうここから立ち去らないといけないだからまた会える時になったら、連絡するからな」

「堂円寺さんは何者なんですか?」
やっぱり堂円寺さんにしかアキが見えないのは堂円寺さんは普通の人間じゃないからなのかもしれない。

「俺は…テツやアキちゃんとは別の世界にいる…お前らの世界で言う天使?いや、死神?
まぁどっちでも良いんだけど、俺は人じゃないから、それだけは覚えてろよー」

そして堂円寺さんは公園から出ると姿が見えなくなった。
死神と天使じゃ極端に違うよな…

「一体…何が起きているんだ…?」
風は未だに寒かった。
その寒さが冷静さを保もさせてくれたのかもしれない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

壊れていく音を聞きながら

夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。 妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪 何気ない日常のひと幕が、 思いもよらない“ひび”を生んでいく。 母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。 誰も気づきがないまま、 家族のかたちが静かに崩れていく――。 壊れていく音を聞きながら、 それでも誰かを思うことはできるのか。

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

貴方の側にずっと

麻実
恋愛
夫の不倫をきっかけに、妻は自分の気持ちと向き合うことになる。 本当に好きな人に逢えた時・・・

愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました

蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。 そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。 どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。 離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない! 夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー ※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。 ※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。

処理中です...